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私は容姿がアレだから、心は割と…なんつっ亭。

「桂ちゃんは、容姿がどうのっていうわけではないけど、魅せ方としては…」

その先の答えは誰よりも知り得ているつもりだった。

私が音楽活動の今後について、先輩へ尋ねた際の一幕。その日の録音仕事終わり、限界ミュージシャン達の憩いの場、王将で。

にんにく増し増しの餃子にレバニラ、気休めのビタミンはトマトスライスと、もやしの炒め物(最早もやしにビタミンは無い)、青椒肉絲で、ある程度机を満たして。そしてお決まりのビールだ。

何を隠そう、このメニューを何の滞りもなく受け入れてしまえる私。中肉中背、カジュアルな顔つきに、ちょん、ちょんと申し訳程度のスイカの種のような目…というとセルフディスに富み過ぎている気がするので、言い換えるならば骨格ナチュラル、顔タイプはフレッシュ寄りのソフトエレガント(化粧をしなければ、中性的な青年調の顔)といったところだろうか。簡単に略せば骨ナチュ、ソフエレ、というらしい。

こと細かであることだけが明瞭というわけでもない。当たり障りなく便利になったようで、とても不便な世の中になったなぁと思ったりする。

ただそんな事よりもこんな風にアドバイスを求めたときに真摯に向き合い、面と向かってあれこれと言ってくれる先輩がいることのありがたさ。
コンプラ重視のこんな世の中だからこそ染み渡る良さもある。

「写真はこう、身体がブレてる感じの方がいい」

といって急な白目で小刻みに揺れているその様。いわゆる最近の「ブレ盛り」を風刺し過ぎていてぐわは、と私はギアが外れたような音で笑う。
酒の席の勢いで、私も同じように真似てみる。
それは「ブレ萎え」とでも言えようか。

「あ!俺のアーティスト写真もブレてるわ」
すかさず、隣にいた別の先輩が続けてオチる。
世間的には二枚目といわれるであろう風貌ながら、(私は自分の見かけはどうあれ、美的センスは割とある方だと自負する。彼は精悍な顔立ちなのだ)そういう時にうまく立ち回ってみんなの手を取り合ってくれるような人だ。自分も、誰をも蔑むことなく上手く引き立てる絶妙なバランス。容姿が整った人と話すことには、なにか別の民族と話しているような感覚になるので昔から得意ではないのだが、珍しく彼とは心地がいい。

和やかな談笑と、場の穏やかな空気。

ごくごく些細なやり取りではあるが、私は充分に幸せだった。無理矢理にもスタミナのつきそうなコックリとした中華料理にビールの喉越しが程よく、軽快に冗談混じりで将来の話をする。

きっとこんなシーンが生まれたのも私のこの無難な顔・体つきがあるからで、話の矛先をある程度わかっていてもなお、面白可笑しく思えた心もきっと。

私はあるべくして在り、こんな僅かな瞬間の思いこそを広く魅せられるようにしたいのだった。


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