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京都に行ってきました

3月に京都へ行ってきました。

冬頃に発売する新刊の著者に会い、ついでに一人で桜も見てきました。

京都の桜はやはり風情がありました!

桜の名所の混み具合が東京よりも緩やかで、“桜を見に来たのかヒトを見に来たのか……”という感じにはなりませんでした。

一保堂茶舗本店

あこがれの一保堂茶舗京都本店からスタート。

一保堂01

静かな店内で濃茶とお菓子を体験。じっくりゆっくり、抹茶&桜に見立てた外郎の味、香り、色、形を楽しむマインドフルな時間を過ごしました。

一保堂02

一保堂04

お土産には京都本店でしか買えない煎茶と、京都でしか買えない抹茶を購入。

一保堂05

一保堂06

二條若狭屋

次に、せっかくなので同じ通り沿いにある二條若狭屋にも入りました。

二條若狭屋

このお店の菓子はパッケージもかわいいのでいろんな書籍でも紹介されていたりします。

甲斐みのりさんが紹介していた葛湯「不老泉」を購入。

二條若狭屋02

二條若狭屋03

かわいい。

湯波半

ここで失敗したのが、近くに川端康成『古都』昭和37年(1962)に登場する湯波半があるのに、立ち寄り忘れたことです。

 この店は、ふだんから、註文だけしかつくらない。京には、菓子屋などにも、こういう店がある。
「祇園さんどすな。長年、おおきに。」と、湯波半の女は、千恵子の籠に、もりあがるほど入れてくれた。
「やわた巻き」というのは、ちょうど、うなぎのやわた巻きのように、湯葉のなかに、ごぼうを入れて巻いてある。「牡丹湯葉」というのは、ひろうすに似ているが、湯葉のなかに、ぎんなんなどが包みこんである。(川端康成『古都』より)

京都は行きたいところいっぱいありまくりで時間が足りません。

高瀬川沿いの桜

四条の方に歩いていると桜が見えました。それは高瀬川沿いのみごとな桜並木でした!

高瀬川01

高瀬川02

満開の桜、趣のある川が素晴らしかったです。東京の目黒川のようなコンクリートのそっけない川ではなく、歴史のある石造りで近くて浅くて清らかでした。

祇園の万喜軒

せっかくなので谷崎潤一郎が初めて京都を訪れた際、新聞社の人に連れていかれたと『朱雀日記』大正9年(1920)に書いてあった祇園の万喜軒に行ってみたら、コロナのため休業中でした。

案内されたのは、麩屋町の仏国料理万喜軒と云う洋食屋である。近来京都の洋食は一時に発達して、カッフェ・パウリスタの支店までが出来たそうな。此処の家もつい此の頃、医者の住居を其れらしく直して開業したのだが、中々評判がいいと云う。矢張り日本造りの、畳の上へ敷物を布いて、テーブルや椅子が置いてある。(谷崎潤一郎『朱雀日記』より)

同様に『朱雀日記』に登場する鳥料理の菊水も今は無いようなので(洋食のレストラン菊水は別物と思われる)谷崎にゆかりのある店で昼ごはんを食べるのはあきらめました。

万喜軒の近くにライカ京都店がありました。築100年以上の町家を改造して使っているそうです。素敵。こんなところに!と驚きました。

ライカ京都店

東華菜館で昼ごはん

昼ごはんは四条大橋脇の東華菜館で食べました。この店はウィリアム・メレル・ヴォーリズが設計し、大正15年(1926)に建てられたそうです。エレベーターは日本最古のものだそうです。

東華菜館01

ビールを1杯。

東華菜館02

水餃子。

東華菜館04

八宝菜。

東華菜館03


八坂神社

朝から食べすぎ。
とにかく歩こう、と八坂神社へ。川端康成『古都』では八坂神社のシーンがとても印象的で、来てみたかったのでした。

八坂神社01

祇園祭の夜、『古都』の主人公・千恵子は、八坂神社御旅所で七度まいりをしていた生き別れの妹・苗子と再会します。

八坂神社03

蝋燭が灯された祭の夜の八坂神社もいつか訪れてみたいです。

円山公園

八坂神社からさらに歩いて桜の美しい円山公園へ。『古都』の千恵子はここの夜桜の下に捨られていた赤ん坊という設定です。

円山公園

ぽかぽか陽気。のどかで桜が美しかったです。
谷崎も円山公園でゆったりしています。

万亭の暖簾の前を素通りに、八坂神社の石段を上り、円山公園の日あたりの好い芝生をうろつき廻る。今日は天気のせいかところどころの茶店もベンチも、可なりの人で雑沓して居る。(谷崎潤一郎『朱雀日記』より)

知恩院

さらに円山公園の奥へと歩き進み、知恩院へ。
国宝の御影堂でお参りして、御朱印をもらいました。

知恩院


知恩院は応仁の乱で燃えてるんですね。
呉座勇一先生の『応仁の乱』(中公新書)は楽しく読みました。寺や僧が大きな権力を持ち、争いを複雑に拡大させている様子が興味深かったです。応仁の乱で知恩院は燃えているけど、ストーリーに登場するのは隣の青蓮院でした。知恩院が大きくなっていくのは江戸時代、徳川家や皇族が関わるようになってからって感じなのですかね。

「勅諡慶讃会」の正札を立てた知恩院境内の賑かさ。けばけばしい朱塗の舞楽殿や火炎太鼓が本堂前の広庭に列んで、幔幕を結い廻らし、テントを張り、鰐口を鳴らす者、説教を聴く者、参々伍々に連れ立って居る光景は、如何にものどかな春日悠々の趣がある。(谷崎潤一郎『朱雀日記』より)

芋棒の平野屋

せっかく円山公園に行ったのに、芋棒の平野屋に行き忘れました。

川端康成『古都』の主人公・千恵子は、赤ちゃんのときに夜桜の祇園・円山公園で拾った、と母親が告白する場面に平野屋が出てきます。

ほおずりして、お父さんの顔を見ると、しげ、この子を盗んで逃げよか。へえっ? しげ、逃げよ、早よ逃げよ。あとはもう夢中やった。芋棒の平野屋さんの前あたりからな、車に飛び乗ってしもたと思うのやけど……。(川端康成『古都』より)

東寺

もうそろそろ京都旅行もおしまいです。最後は東寺にしました。
ここも谷崎が訪れています。

五重塔の周りに美しく桜が咲いていて、人もいなくて、ふわーっと風が吹き出して、あまりに気持ちよかったので束の間マスクを取りました。なんかやっぱりパワースポットなのだと思いました。

東寺01

東寺03

金堂はちょうどお坊さんがお経をあげていて、薬師如来や日光菩薩、月光菩薩、十二神将をゆっくり見ながらお経を聞きました。私の母の実家は寺で祖父が僧なので、しんとしたお堂、お経の声は懐かしく親しみを感じます。

東寺05

講堂の大日如来はでかくて美しくて力強くてすごい迫力でした。立体曼荼羅も力強く美しくじっくり見入りました。

谷崎は京都に逗留しているうちに、「だんだんせせこましい京都の風俗が鼻に着いて来た。何だか広々とした海洋のまん中から、古臭い沼のほとりへ引張り込まれたような気がする」といい、平安京はどれほど堂々として、どれほど活気に充ち充ちて、新鮮な感銘を庶民に与えたであろう、と平安京の旧跡を歩きます。

即ち古の京師に朝する者は、先ず第一に東寺のほとりの羅城門をくぐり、其の時分の一等道路――今の畑中の千本通りを北へ進んで、第二の朱雀門から第三の応天門にかかり、遂に大極殿の階はしに達するまで、一里余の行程を歩まなければならない。(谷崎潤一郎『朱雀日記』より)

まだまだ京都廻りしたいです。

次は『古都』に登場する森嘉の湯豆腐、湯波半、たる源の道具、平野屋の芋棒、瓢正の笹巻きずし、龍村美術織物のネクタイ、龍村美術織物の菊もみの紙入れ、大市のすっぽん、円山公園の左阿彌、なども体験したいです。





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