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黒木一家のファストミステリ

カブトムシの死骸

 「ミカちゃんお願いがあるんだ。今日カブトムシに餌をあげる当番なんだけど、放課後僕と一緒に理科室に来てくれないかな。虫がどうしても苦手で」神田マサタカは黒木ミカに懇願した。
 「相変わらずマサタカ君は怖がりなんだね。虫なんて全然怖くないし、むしろ可愛いぐらいなのに。わかった、一緒に行こう」黒木ミカは推理小説を読みながら視線を変えることなく返答した。
 放課後二人は理科室に行き、カブトムシを飼育している虫篭が設置された棚に向かった。
 「わっ。なんだよ、これ」神田マサタカは震えながら黒木ミカにしがみついた。
 「どうしたのよ?」そう言って黒木ミカが虫篭を覗くとそこには手足がバラバラにされているカブトムシが四匹横たわっていた。
 「だれがこんなことを。とりあえず澤部先生を呼んでこよう」黒木ミカが理科室を出ようとしたとき、理科室の扉が開き澤部タカコ先生が中に入ってきた。
 「そんなに慌ててどうかしたの?」澤部タカコ先生は驚いた様子で尋ねた。「カブトムシに餌をやりにきたら虫篭の中のカブトムシがバラバラにされていたの」
 澤部タカコ先生は急いで虫篭の中を確認した。「なんてことを。誰がやったかは後で調べるとして、まずはカブトムシを供養しましょう。校舎裏の花壇があるところに埋めるから二人も手伝ってくれるかな」悲しそうな表情を浮かべ澤部タカコは二人に言った。
 二人は頷き三人で校舎裏の花壇に向かった。花壇に着き、カブトムシを埋めていると、同級生の堺ミユキが近くを通りかかり尋ねてきた。
 「こんなところで何をしているの?」「理科室で飼育していた死んだカブトムシを埋葬しているの」黒木ミカは答えた。
 「えっ、カブトムシ死んじゃったんだ。皆で育てたのにね。私も手伝うよ」そう言うと堺ミユキも穴を掘るのを手伝った。
 埋葬を終えるころには、あたりは暗くなっていて、管理人が見回りにきていた。「どうかされたんですか?」「死んだカブトムシを埋葬していたんです。もう終わりましたから帰りますね」管理人の質問に澤部タカコは答えた。
 「そんなひどいことをする人がいるんですね。でも、カブトムシも埋葬されて喜んでいるでしょう。もうあたりも暗いですから気をつけてお帰りください」管理人はそう言うと手に持っていたライトの明かりを点け、運動場の方へと歩いて行った。
 「さぁ、私たちも帰りましょう。遅くまでありがとうね。全く誰がこんなことをしたのかしら」澤部タカコが三人に言って理科室に戻ろうとしたとき、黒木ミカが澤部タカコを制止した。「先生、私誰がこんなことをしたのかわかったかもしれません」黒木ミカは澤部タカコに伝えた。

【問い】
黒木ミカは誰が犯人だと考えているのでしょうか。





【解答編】
 黒木ミカは運動場のほうに歩いて行った管理人を呼び止めた。「あなたはなぜ、ひどいことをする人がいるんですねと言ったのですか? 私たちは死んだカブトムシを埋葬しているとしか言っていないはずです。昆虫だから普通は自然死すると考えるのが普通ではないでしょうか。あなたが、カブトムシをバラバラにした張本人だとしたら話はべつですが」
 管理人はごまかそうとしたが、上手く説明が出来ず罪を認めた。





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