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ショートショート「本当の花火大会」

この町では昔から花火大会が盛り上がる。複数の花火師たちが、1年間かけて作り上げた花火を咲かせ、観客に順位を決めてもらうという本当の花火大会が行われるからだ。

しかし、今では後継者不足などで〇〇組と△△屋の2組しか残っていない。
だからといってこの花火大会が盛り上がっていないということはなく、遠く離れた町からも観客が来るほど毎年大盛況である。

毎年どちらも素晴らしい花火を咲かせるが、ここ2年は△△屋の2連勝。今年も勝利して前人未到の3連勝を目指す△△屋に聞き捨てならない噂が流れてきた。

「〇〇組が見たこともないくらい大きい花火を用意してるみたい。」

今1番大きい花火玉が40号。花火が開くとそれは約750mにもなる。しかし、見たこともない大きいとなるとそれの倍。いや、3倍になるかもしれないと思った△△屋の頭領は花火職人をすぐに集めた。

「今年は3連勝のかかった大事な年だ。絶対に〇〇組には負けられない。〇〇組より大きい花火玉を作るんだ。だが他所の者には内緒だぞ。〇〇組にバレてしまっちゃ更に大きいのを作られちまう。」


ピンポンパンポン♪「まもなく、花火大会が始まります。まもなく、花火大会が始まります。」

ヒュ〜〜〜〜パーーーーン
 ヒュ〜〜〜〜〜パーーーーーン パラパラパラ
ヒュ〜〜〜ン    バーン

「綺麗!」 「顔みたいになってる!」 
  「惑星かな?」 「君の方が綺麗だよ」
 「すごいね」 「あいつどこ行った?」

まずはシンプルな花火やキャラクター、惑星といった花火を両組が交互に飛ばす。次第に花火はどんどん高く、大きくなっていく。

すると観客は次第に静かになってメインの花火が発射されるのを待つ。


午後20:30。初めに〇〇組の花火が大きな空に高く発射された。


ヒュ〜〜〜〜〜〜〜〜〜

ドーーーーーーーーーーン!!!!!

観客は大拍手!すごく綺麗な花火が咲いた。


「あれ?」
といったのは△△屋の頭領。というのも〇〇組が咲かせた花火玉は40号の大きさだったのだ。
△△屋が用意したのは4倍の160号。今まで誰も見たことのないとんでもない大きさの花火玉だ。

3連勝にふさわしい花火になると確信した△△屋の花火師たちは、その超大玉に火をつけた。


ヒュ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 ドーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!

かつて誰も見たことのなかったその花火は、3連勝にふさわしい花火だった。誰も動くことができなくなった。世界で一番美しい巨大な花が咲いた。



「逃げろ!火事だ!!」

その美しい花火の花びらは消えることなく地上に降ってきてしまい、幸い怪我人は出なかったが港近くの家が燃えてしまった。

その結果、翌年からこの町の花火大会は〇〇組だけで行うことになった。

「今年もこうして花火大会を開けることが私たち花火師の何よりの幸せです。今年からは△△屋との対決ができなくなってしまい残念ですが、皆様に満足していただけるよう大きな花火を用意しておりますので、皆様ぜひお楽しみください!」
と噂好きで有名なの〇〇組の頭領が花火大会前にスピーチ演説した。

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