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チームMILAI 世界一周ヨットレースの旅路を追う LEG2 カーボベルデ〜モーリシャス

ダブルハンド世界一周ヨットレース「GLOBE40」に挑戦しているチームMILAI、スキッパー(船長) 鈴木 晶友すずき まさとも氏によるレースログを公開しています。
険しい嵐の日もあれば無風の日、そして海鳥、魚、満点の星空など、レースの間に洋上でしか体験できないシーンやエピソード。
各レグごとの寄港地での新たな出会いや発見など・・・
普段の生活では味わうことができない日常がそこにはあります。
チームMILAIと共に世界一周をお楽しみください。

Globe 40全8レグのうち最長となる第2レグは、カーボベルデからモーリシャスまで走る7725マイルのロングコースです。
喜望峰を超える8月は、南半球はまだ冬の海。更にモーリシャスに向かう途中、南アフリカの南の速い潮流で海が非常に荒れる可能性があり、ここを無事に越すことがGlobe 40を完走するために重要なポイントとなります。

赤道を通過し、喜望峰を目指し南下

何もない水平線で臨む夕日、美しい景色に目を奪われます

7月28日、カーボベルデをスタートしてから12日目。
MILAI号は7月24日に赤道を通過し、いまも喜望峰を目指し南下を続けています。
赤道を通過するまでは夜も暑くて眠れない日がありましたが、南緯15度まで南下した今は、夜は寝袋に包まって寝るほど気温が下がってきています。

赤道からここに来るまでは昼夜問わずスコールが押し寄せてきました。スコールが来ると風速が急激に上がったり、風向も変わるため注意しなくてはなりません。夜はレーダーを使いスコールを確認しながら、気が抜けないセーリングが続いていました。

いまはようやくスコール地帯をぬけて、安定した天気のもとセーリングできています。
疲れが溜まった身体のコンディションを整えつつ、次は冬の南氷洋でのセーリングに備えていこうと思います。

とは言っても私もアンドレアも元気です!
フィニッシュのモーリシャスまであと5,000マイル。
順調に行けば8月22日前後にフィニッシュできると考えています。
引き続き船と身体を大切にしながら、セーリングを続けていきます!

初の嵐に遭遇、ケープタウンに寄港して修理という苦渋の決断

カーボベルデを出港し、世界一周の第一関門の喜望峰回航へ。

8月6日、喜望峰まで700マイルの地点で、スタート後始めての嵐に見舞われました。最大風速は40ノットほどですが、波が悪く船が激しく叩かれます。
夜20時ごろ、船の復元力の源であるキールからの異音が出始めました。波に叩かれるたびにキールが、ギコギコとキール本体が動いているような音です。
MILAI号は昨冬にメンテナンスのため、キールを外しました。この際のキール取り付けになんらかの不備があったと直感しました。

構造上キールが抜け落ちて転覆してしまうことは無いと感じましたが、これから喜望峰を越えてフィニッシュのモーリシャスまで、まだ3,000マイルあり、安全が確証できないと判断して、一番近い港であるケープタウンに入港することを決めました。

スタートからここまでの約3週間、2位を走るアメリカ艇のAMHASと接戦を続けて来たこともあり、レースから一旦離脱することは苦渋の決断でした。
しかし安全に目的地に辿り着かなくては、私たちが目指す世界一周を達成できません。
クルーのアンドレアや陸上チームメンバーとも協議を重ね、ケープタウンで船を上架して補修作業をすることとなりました。
艇速を落とし、船を労わりながら3日間かけ、8月9日に無事ケープタウンに到着しました。

ケープタウンは南アフリカ最大の港町で、大昔から造船業で栄えた町です。
大型漁船から小型のプレジャーボートまで、多種多様な船がここで作られています。
私たちはウォーターフロント・マリーナ内にある、カタマランを造るドックを借りてメンテナンスさせてもらうことになりました。
陸上メンバーのサポートのおかげで、到着した時にはすでに船台やクレーンの準備が整っていました。
船内で仮眠をとり、翌朝にすぐに船を上架することができました。

キールの状態は想定していた最悪の状況ほどではなく一安心しましたが、キールの周りの積層が剥離しており、補修が必要な状況でした。
段取りを決めて3日間で出港できるまでの作業をすることとなりました。

クレーンで上架されるMILAI号

苦渋の決断となった寄港ではありますが、25日ぶりの陸上は美味しい食事や湿度が低い環境で、リフレッシュになったことは事実です。
また8月12日は私の37歳の誕生日で、ボートヤードの方々がお祝いしてくれました。まさかケープタウンで誕生日を迎えるとは全く想定していなかったので、これも一生の思い出になりました。

無事にキールの修復作業を終え船を下架。
8月13日には出港の準備が整いましたが、天候が悪く14日に出港することに。
アンドレアと共にモーリシャスを目指す旅の再出発です。
天候に恵まれた中、人生初の喜望峰回航を果たし、インド洋に入ることができました。

いまこのレポートを書いている8月16日の時点では、フィニッシュまであと2,000マイル。残り10日間のセーリングになる見込みです。
残念ながら首位から最下位となってしまいましたが、ひとつ前を走るアメリカ艇のグリフォン・ソロとは200マイル差です。10日間あればきっと追いつくことができるでしょう!

無事に第二レッグフィニッシュ、モーリシャスに到着!

希望峰を越えインド洋に入り、ヘディングを北に向けます。
6月にスタートしてから2ヶ月間以上南下を続けてきたので、とても新鮮な気持ちです。ただ波長が短く海況は正直良くありません。
ケープタウンでキールを補修しましたが仮状態で、船が波に叩かれるたびにキールからまだ異音がします。とは言え問題点はわかっているので、モーリシャスまでは安全に辿り着くことができるのは確かです!
途中で最大風速50ノット(25m/s)の低気圧の通過がありましたが、MILAIはモーリシャスを目指して力強く走り続けました。

8月26日早朝、ケープタウンを再出港してから12日、スタート地のカーボベルデを出港してからは実に39日で、第2レグのフィニッシュ地、モーリシャスに到着しました!
一言でとにかく長い旅でした。全8レグあるGlobe40の中で最も長いレグなので当然ですが、アフリカ大陸の大きさを肌で感じる航海になりました。

無事に第二レグゴール(左:鈴木 晶友 右:アンドレア・ファンティーニ)

モーリシャスはマダガスカルの東側に浮かぶ、東京都とほぼ同じ大きさの島です。
大航海時代以降にはヨーロッパからインドへの寄港地なっていたこともあり、いまでもインド文化を中心に、アフリカやヨーロッパそして中国文化が入り混じっていて、中心地のポートルイスは活気があり、不思議で魅力ある街です。

美しい山と海の景色が見え、解放感があります

郊外に行くと大自然もあります。モーリシャスをゆっくり楽しみたいですが、次のスタート9月11日までに船をしっかり整備しなくてはなりません。モーリシャスでの滞在期間2週間強で船を上架し、キールを外し完璧に直すことにしました。

10日間かけてしっかりキールやエンジン、その他電気関係を確認・補修します。始めると新たな問題を発見し、想像以上に大作業となり、朝から晩までとにかくメンテナンスに明け暮れました。
久しぶりの陸を楽しみたいですが、次レグのオークランドまでも長旅になるので、ここでしっかりメンテナンスすることが、世界一周を達成するために大切です。

モーリシャスに上陸しても休む間もなくキールのメンテナンス作業

チームメイトのアンドレア、第3レグを共に走るルカ、そしてシップヤードの多くの人たちの力を借りて、MILAIのメンテナンス作業を進めました。
9月5日、スタートまで6日に差し掛かったところで全ての作業が終わり、MILAIは水に戻りました。スタートまで作業や準備はまだまだありますが、山場は越えました。

第3レグのオークランドまではおよそ7,000マイル。33日前後の航海になる予定です。
モーリシャスに到着してからここまで全力でメンテナンスをしてきたので、少し身体を休め9月11日のスタートに備えたいと思います!

レース : 7月17日~8月20日 日数 34
7725海里

執筆・写真 鈴木晶友
編集 高津みなと

本記事は古野電気website特設ページ「チームMILAI x FURUNO 世界一周への挑戦 Trip Log」をまとめたものを再編集し掲載しています。
最新情報はこちらからご確認いただけます。https://www.furuno.com/special/jp/milai/

MILAI × FURUNO - Special Movie 

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