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小説(過去作品)

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大学生の時に書いた小説をリメイクしてます
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2024年3月の記事一覧

沈める(小説)

沈める(小説)

 ごうごうと音が鳴る。生あたたかい世界に抱かれたわたしは冬眠する動物のように安堵する。時間がゆっくりと流れる。旋回し、留まり、浮き沈みを始める。ずっとここにいられたらいいのに。ここにいて、誰も、わたしのこと、好きにも嫌いにもならないでくれたなら、いいのに。
 水面に顔を出すと、世界の秒針が一気に進み出したような気がした。現実に戻される引力が不快だった。二十二歳。大人。浴槽に潜る、だなんて、どうかし

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流れる (小説)

流れる (小説)

 思いがけない者からの思いがけない誘いに、あんずは胸を弾ませた。大学進学を機に上京していたみちが、地元へ帰ってくるのだった。あんずは下着姿のまま、畳に腰を下ろしている。久しぶりの化粧だ。エステティシャンの姉から譲り受けたファンデーションは、十二月の刺すような冷気のせいで、出しにくくなっていた。ポンプを外し、硝子の容器を上下に振る。たいへんな量が出て、化粧品特有のむっとした香りが立ち上る。出しすぎた

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推し(小説)

推し(小説)

細野くんが今日もかわいい。線の細いからだ、尖った白い顎、さらさらと風になびく髪……。細野くんが今日もかわいい。
 細野くんは同じ学科の男の子である。大学一年生のときから推していて、四年生になった今でも推している。細野くんとは、話なんて合わない。いつも彼の好きなゲームやアニメの話をただ聞いているだけだ。でも細野くんは顔がいい。細野くんはとてもかわいい。だからあたしは細野くんの話を聞いている。
 あ

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