見出し画像

真冬の札幌で往復20キロのチャリ通勤を毎日続けてみた話(ファットバイク!)

<ある冬の日の会話>
同僚:「furuさんは今日どうやって来たの?」
僕:「えっ?僕ですか?チャリですけど。」
同僚:「えっ?チャリ!?この雪の中を!?」

そんな会話を何度くりかえしてきたことだろうか…
みんな驚くのは無理もない。
ここは札幌である。
積雪は毎年僕の背の高さを超える。

画像1

電話ボックスをも超えるこの雪の量…

画像3

ちなみにこれが普段の電話ボックス。
さすが札幌だ…あらためて写真を見ると、恐ろしさがハンパない…
そんな極寒の地札幌で僕は毎日チャリを漕ぎ続けている。
勤務先までの道のりは片道10キロ。
すなわち往復20キロである(笑)
真冬の札幌で毎日チャリで往復20キロを走る。
僕のこのチャレンジをまとめていこうと思う。

1、チャリ通のはじまり

画像2

そもそも、僕がなぜチャリ通を始めたのか…
それは自然をこよなく愛しているから…
…というのはウソだ。

コロナ禍において、バス通勤を避けるためだ。
片道10キロといえば、夏には車で20分ほどで着く道のり。
しかし、冬道となるとバス通りは大混雑だ。
勤務地に到着するまで軽く1時間を超えるのだ。
長時間、満員のバスの中で揺られて通勤する。
それが僕にはとても苦痛だったのだ。

「バスに乗らずに仕事に行ける、何かいい方法はないかなぁ…?」
そこで考え出した秘策。
それがこの「チャリ通勤」である。

しかし…ここで問題が起きる。
「そもそも、冬道を走れるチャリなんてあるのか?」
問題である。

ググってみると、なんかかっこいい写真が…
そう!これが僕と「ファットバイク」との出会いである。

「ファットバイク」
ふとーいタイヤ。地圧が低く、空気圧の調整によってオフロード(雪、砂、沼、泥)などの柔らかく不安定な地形に乗れるように設計されている。

調べていくうちにこのファットバイクの魅力にとりつかれた。
だって…かっこいいんだもん!
しかも雪道を走れるなんてすごすぎる!!
…ということで僕は近場の自転車屋さんにファットバイクを探しに行くことにした。

2、そういう人よくいるんですよねぇ・・・

ファットバイクを探して入った自転車専門店。
中にはかっこいい自転車がズラリ。
一通り店内をぐるっと見回すが、僕のお目当の「ファットバイク」らしきものは見当たらない。普通のマウンテンバイクより少しタイヤが太めのものがあるぐらい。
そこで、僕はお店の人に聞いてみた。

僕:「あのー。すみません。この店にはファットバイクは置いていますか?」
店主:
「いらっしゃい。あー。うちはファットバイクは置いていないですねぇ。セミファットと言って少しタイヤが太いのは置いていますけど…。お客さんファットバイク探してるの?」

僕:
「あっ、はい。コロナでバス通勤がいやなので、冬も自転車通勤をしてみようかなぁと思って。」

店主:
「ああー。そういう人よくいるんですよねぇ。でも、自転車で通勤するのはかなりつらいですよ。最近の自転車ブームにのってやってみようって人、たくさん見てきてきたけど、そういう人ってほとんどみんな挫折してるんですよねぇ。

どうやら僕は、自転車ブームにのって軽い気持ちで店にやってきた一見さんと思われているようだ。うーむ。少々くやしいが、その通りだからしかたがない。
僕にはなんの実績もないのだ…
しかし、タイムスリップできるのなら、僕はこの店主さんに胸をはって言いたい!

「冬道通勤!この俺ならできます!」と。

しかし、その頃の僕はそんなことを言えるはずもなく…
そそくさとお店を退散。
でも、お店を出ようとした時、店主がナイスな情報を!

「ああー。そういえば、ファットバイクを専門にしているお店が〇〇区にありますよ。」

おお!なんてナイスな情報を!
少々鼻につく店主だったが、この言葉はありがたい!
話を聞いてみると、紹介されたお店の店主はファットバイクの魅力にとりつかれて、自分の車すら売り払った人だそうだ。
これは期待がもてそうだ!
…ということで、情報提供に感謝しつつ、僕は次の店へと出発した。

3、おお!これがファットバイクか!

「ここかぁ…」
1軒目店主に紹介されたお店に到着した。
さすが、自転車の魅力にとりつかれて車まで手放した店主のいるお店だ。
入り口から「一見さんおことわり」のにおいがプンプンしている。
しかし、ここまできて引き返すわけにはいかない。
僕は必ずファットバイクを手に入れるのだ!
勇気を出して入り口から中に入った。

「いらっしゃーい」
店主の眼光がするどく光る。

僕:「あっ…あのー。○○というお店(1軒目のお店)の人から紹介されてきたんですが。ファットバイクおいてますか?」
店主:「○○?(1軒目のお店)どういうことですか?」
僕:「あっ。あのー。ファットバイクがほしくて○○にいったんですが、置いていないといわれましてー。」

店主のするどい眼光にたじたじになる僕。

僕:「ファットバイクを買うならこちらのお店がいいよ。とおすすめされてきたんですけど…」

ここで店主の顔つきが和らぐ。

店主:「○○さんからの紹介?遠くまでよく来てくれました。ファットバイクですか?ちょうど1台おいてますよ!」

1軒目で軽くあしらわれて少し傷ついた僕だったが、その経験は無駄ではなかったようだ。とりあえずよかったよかった。
会話をしていると、店主は「自転車のプロ」だということがひしひしと伝わってきた。自転車に対する愛が半端ない。この人が勧めるファットバイクなら間違いないだろう。そう判断した僕は、たった1台だけおいてあったファットバイクを即決。
こうして僕は念願のファットバイクを手に入れたのだ!

画像4

4、雪がふったよ!いよいよ雪上走行へ!

明日は積もるかもね〜。
家族とそんな話をしたのが夜8時。
その後もしんしんと降り続いた雪。朝起きると一面の雪!

画像5



「いよいよファットバイクの出番ですな!」

昨日の夜、ファットバイクの動画を見まくって、雪上走行のイメージはバッチリ!イメージトレーニングの成果を見せつける時がきた!
ふかふか雪の上を走行するときは、タイヤの空気を抜いて、雪にタイヤがフィットするようにするといいらしいよ!
そんな情報もしっかりと手に入れた僕は、昨日の夜、しっかりとタイヤの空気を抜いて、なじませておいたのだ。

「ファットバイクよ!その力を見せてくれっっっっっ!!」

意気込んでファットバイクで出動!!!
ペダルに足をかけて、ぐいっと力を入れる。

「おおーー!!すごい!雪の上でもスイスイ進む!
 これは動画で見たとおりだ!さすがファットバイク!!」

…といいたかったのだが、そのイメージはわずか2メートルで崩れ去る。

「す…進まねえ!!」

こいでもこいでも進まない。
ペダルに足をかけると、たちまちバランスを崩して足をつく。
しかも、足元はふかふかの新雪。ふんばることができない足。
ドデーン!と派手に雪の中にダイブ。
これを2、3回繰り返してようやく気づく。

「ファットバイクで新雪を走るのはめちゃくちゃ難しい!」

この感覚。伝わらないと思うので、補足しよう。
新雪をファットバイクで走るのは、例えるなら…
浅瀬を自転車で走る感じだ。
ペダルがめちゃくちゃ重い。そして足元がぬかるむ。
伝わるだろうか?

4回転んで全身雪まみれになった僕。
ようやくファットバイクの難しさに気づき、ファットバイクを押して車道へととぼとぼと歩き始めた。

5、苦難の先に…

敗北感から始まったファットデビュー。
それでも僕はあきらめなかった。
というか、あきらめられなかったのだ。
「本当に大丈夫なのー?」と心配そうに見つめる妻に、僕は言い切った!

「冬の間はこれにのって通勤するから!!」

ファットバイク…決して安い買い物ではない。
ここであきらめてしまったら、ただでさえ上がらない頭がますますあがらなくなってしまうのだ!(笑)
2、3度こけたぐらいで、僕はあきらめるわけにはいかないぃぃぃ!!!

どんなに時間がかかってもいいように、僕は早起きをしひたすらペダルを漕ぎ続けた。すると、毎日乗っているうちに、いろんなことがわかってきた。
「ファットバイクに乗って冬道を通勤してみたい!」という人(そんな人いるのか?)に向けてつらつらとまとめていこうと思う。

画像6

(朝日と共にファットバイクで出勤。うーん。すばらしい!)

(1)つらいのは実は夜道

「朝はつるつるに凍っていて危なそう…
 夕方の方が道の雪がとけていて走りやすそうじゃない?

多くの人はこう思うのではないだろうか?
僕もそう思っていた。
しかし、これはまったくの間違いだ。札幌はだんぜん朝の道の方が走りやすい
なぜなら…朝は除雪が入っているからだ

札幌は「深夜」除雪作業が行われる。つまり、朝は車道も歩道もばっちり除雪されていて道ができているのだ。
しかし、除雪は1日に1回。どんなに雪が降り続いても深夜になるまで除雪作業はない。つまり、雪が降り続いた日の夕方は道が道でなくなっているのだ。

画像7

朝除雪された道にこんもりと雪が積もっている写真。
あんまり積もっているように見えないけれど、すねまで積もってます…はい。
僕のうちは郊外なので雪が降ってから1人も歩いていないってことがわかりますね…。途方に暮れて撮った一枚。

画像8

大雪の午後。道にあるのは轍(わだち)2本。
この轍(わだち)にそって走るのはサーカスの綱渡りぐらい難しいぜ!

(2)ルート選びで天国か地獄かが決まる

前の記事でも書いたからわかると思うけど、ファットバイクで新雪を走るのはとても難しい。
あれをスイスイ走れる人は、めちゃくちゃ体力があって、筋力があってバランス感覚が飛び抜けている人だろうなぁ。
当然そんな能力のない僕は基本的に除雪された歩道を走ることになる。

「うんうん。そんなこと当たり前だよね」

そう思ったあなた!札幌の歩道事情はそんなに単純ではないのですよ。
その歩道が普通の歩道ではなくなってしまうのですよ!

札幌は雪が降ると除雪をする。
その雪を道路脇に寄せて、寄せきれなくなると上に積み重ねていく。
だから道路に大きな雪山ができるのだ。
うーん。多分口でいっても伝わらないので写真をのせよう。
これが車道と歩道を隔てる雪山だぁー!(じゃーん!)

画像9

ちなみに雪山の向こうにトラックの屋根が見えるでしょ?
この雪山、そのぐらいの高さなのです。
この雪の壁からの飛び出されると、車は急に止まれない。
雪山からの飛び出し。ダメ!!ぜったい!!!

このレベルの雪山がどの道にもずらりですよ。(僕の地区は)
この雪山に隔てられた歩道。
大雪が降った時には歩くことすらままならなくなるのです。
除雪されていない歩道に迷い込んだら最後。
戻って違う道を行くかファットバイクを押して歩くかの二択。まさに究極の選択…

…余談ですがファットバイクを押して、ふかふか雪を歩くの…めちゃくちゃしんどいです。ひざ下まで浸かった水の中を自転車を押しながら進むイメージ…(-。-;

…ということで、おわかりいただけただろうか?
どのルートを通るかによって天国にも地獄にもなる。
それがファットバイク!(ビシッッッ!!)

歩道がしっかりと除雪されている所がどこなのか?
それを見極めてルートを決める。
それが超重要事項なのです。

でも、わかっちゃいるけどそれが難しい。
「あー!この道、昨日は除雪してあったのに、今日は全然だめだったー!」
とか
「うわー!こっちの道、かなりきれいに雪が除雪してあったー!
                 もっと早く気付けばよかったー!」

なんていうことばかり。
毎日路面状況が変わるので、初心者の僕にはまったく道路状況がよめなかったのです。

しかし!
何度も何度もいろいろな道を試しているうちに、とうとう見つけましたよ!
いつでも除雪してある道を見つける必勝法!!(パチパチパチッ!!)
今回はそれを特別に教えちゃいます!

それは…


「バスが通る道を選ぶこと!!」


です。

札幌の冬。
市民の足といえばバス。
このバスは乗客を下ろせばそれでオッケーというわけではありません。
降りた後に歩道の除雪がされていなかったら、バスから降りた人はみんな車道を歩くことになっちゃいますよね。そうすると、交通事故に遭う危険性が!!

…ということで、乗客の安全性を確保するためにバス通りの歩道ってすごくきれいに除雪されているんですよね。

「そんなことあたりまえじゃーん!」
と思った方…でもね。僕はこの事実に気づくのに数ヶ月かかったのですよ。
夏ってガンガン裏道を使って近道をするじゃないですか?
そんな感じで、僕は冬も職場まで一番距離が短いルートを選んでいたんですよ。
それで、道無き道に迷い込む…ああ、あれつらかったなぁ…

少々遠回りになっても、バス通りを選ぶ。
これ、すごく大切なポイントです。覚えておいてね!

画像10

バス通りはたくさんの人が歩くから、ある程度道が固まっている。
しかも暖かい日が続くとこんな風に路面が出てくる場合もある。
これがすっごくうれしいのよね!

(3)こんな路面はいやだ!

「ガッチャーーン」

派手な音を響かせてすっ転ぶ。
ファットバイクに乗ると必ずそんな経験が。
僕も今まで10回ぐらいはすっ転んでいる。

冬道をファットバイクで走る。
とても楽しいのだが、1つ間違うと命を危険にさらすことになっちゃいます。
みなさんの命を守るためにもこの章では、
「こんな道はいやだ!」と題して、要注意な路面を紹介していきます。

①つるつるオンふわふわ

「つるつるオンふわふわ」
これは「つるつるの道路の上のふわふわの雪」という意味だ。
車に乗っている人なら、この恐ろしさが身にしみて分かっていると思う。
この路面状況になるのは「夕方から夜にかけて」が多い気がする。
きれいに除雪した道。そこにしんしんと雪が降り積もる。
それで「つるつるオンふわふわ」路面の完成だ。

この路面の恐ろしさは、ペダルを漕いだ時にわかるものだ。
力をこめてペダルを踏んだ瞬間。

「ズルっ!!」

っとタイヤが滑り、ペダルが空転するのだ。
この瞬間ハンドルが横倒しに。

「!!!!!!!!!!!!!!!!」

気づいたら僕は道路に横たわっている。(車が来てたら死んでますわ…)

こういう路面。
時限爆弾のようにあらゆるところにしかけられているので、まじで怖い。
この前なんか、スピードを出そうとして立ち漕ぎした瞬間に「つるつるオンふわふわ」に遭遇…

はい…ふっとびましたよ。
雪かきしているファミリーの目の前で派手にすっ転びましたよ。
地面に膝を殴打…。

めちゃくちゃ痛いし、恥ずかしいし。
うーん。思い出すだけで凹むな…。
みんな!「つるつるオンふわふわ」には気をつけて!

↓転んだ直後にとった写真(い…いたい)

画像11

②つるつるの轍(わだち)

つるつるの轍…
これに入り込むと本当にやばいです。
これは写真を見てもらった方が早いだろう。

画像12

ぼやけている写真ですがわかりますよね?
この「つるつる」感っ!!
車の轍は他の場所よりも早く雪が解けるのです。
でもね…わかりますか?
こんな風にね。轍にも、とける場所にムラがあるのですよ…

画像13

何にも考えずにここに突っ込むとどうなるのでしょうか?
タイヤが横滑りするのですよ…。
轍は山の斜面のように斜めになっているでしょ。
まっすぐ走っているつもりでも、少しずつズリ落ちていく
それのねじれを解消しようとしてハンドルをきると、とたんに氷の海にダイブ…。
しかも、足をついてもつるつるでふんばれない!
転んだ自分の上にファットバイクが覆いかぶさってくるなんてことも。
あなおそろしや…

気温があがるとこういう道が出現します。
気をつけてー。

③しゃりしゃりシャーベット

春が近づいて路面が出てくると、ファットバイク乗りは感動してしまう。

「な!!なんて走りやすいんだ!」

春サイコーーーーっ!!

しかし、春が近づいて暖かくなってくると現れてくる恐ろしい路面がいる。
そう!それが「しゃりしゃりシャーベット」だ!

画像14

今まで寒くて固まっていた雪。
それが暖かさで緩んでしゃりしゃりのシャーベットのようになるのだ!
雪がゆるんだ時に車が無理やりその道を走ると、完成!
ゆるんだ雪がタイヤの摩擦でシャーベットに…
こういう雪にはまってる車。よくいますよねぇ。

このしゃりしゃり雪。走りにくいったらありゃしない。
ペダルが空転するのはもちろん。道もガタガタでハンドルもとられてしまう。
こういう所に遭遇したらファットバイクから降りて、手で引いて歩くのがグッド。

新米の頃は、意気揚々としゃりしゃりシャーベットに突っ込んで撃沈していたけれど。今は勝負はしない!挑む場所と挑まない場所。それを見極めるのが経験者というものだぜ!


6、終わりに…

さあ、ここまでファットバイクのことをつらつらと書き連ねて来たわけだが…
みなさんにファットバイクの魅力が伝わっただろうか?

雪の上を自転車で走る。
こんな非日常な日常を送りたい人がいたら、ぜひ交流したいものだ。

健康増進。体力向上。ダイエット効果。コロナ対策…などなど
ファットバイクにはたくさんの魅力がある。
しかし、その中でも僕が1番の魅力としてあげたいのは

「冬の美しさを感じられること」

だろう。

画像15

この写真は通勤途中に通る橋の上で撮影したもの。
この日はすごく寒くて、川から温泉のように煙が立ち上っていた。
川霧というのだろうか?

なかなか見られない光景に5分ほど立ち止まって堪能してしまった。
車で通勤しているときは気づかなかったこんな景色が自分の身の回りにたくさん存在している。それに気づくことができるのがファットバイクの魅力だろうなぁ。と。

朝日と一緒に走ったり、エゾリスが目の前を通り過ぎたり、街頭で雪がダイアモンドのように光っていたり…
ファットバイクで冬道を走るとたくさんの発見がある。
これが僕にはたまらないのだ。

雪道走行。体はめちゃくちゃ疲れるけれど、
この冬も僕はファットバイクで往復20キロを通勤する。

読んでくれてありがとーーーーー!!

最後に…
↓僕が雪道を必死に漕いでいる映像(地味です)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?