中華人民共和国の歴史

歴史

中華人民共和国は、1949年10月1日に北京で開国大典を行って成立した社会主義国家です。その前は、中国共産党と中国国民党が中国の政権をめぐって第二次国共内戦を展開していました。中国共産党は、人民解放軍を率いて国民党の指揮する中華民国国軍を打ち破り、中国大陸のほとんどを支配下に置きました。一方、国民党は台湾に逃れて中華民国政府を維持しました。このため、中華人民共和国と中華民国は互いに自分たちが正統な中国の代表であると主張し、対立するようになりました。これが「二つの中国」と呼ばれる問題の起源です。

中華人民共和国の歴史は、1978年12月の中国共産党第十一期三中全会を転換点として、毛沢東時代(1949年~1976年)、鄧小平時代(1978年~1997年)、後鄧小平時代(1997年~現在)の三つの時期に分けられます。

毛沢東時代(1949-1976)

毛沢東時代は、社会主義建設と階級闘争を主題とした時期です。この時期には、土地改革運動、三反五反運動、反右派運動、大躍進運動、文化大革命などの政治運動が展開されました。これらの運動は、社会的不平等や経済的困難を解決しようとする試みでしたが、同時に多くの人々の生命や財産を奪い、社会的混乱や経済的後退を招きました。

  • 土地改革運動は、1949年から1953年にかけて行われた農村における土地制度の改革です。この運動では、地主や富農から土地や財産を没収し、貧農や雇農に分配することで、農民の生活を改善しようとしました。しかし、この過程で多くの地主や富農が暴力的に処刑されたり、迫害されたりしました。

  • 三反五反運動は、1951年から1952年にかけて行われた都市における反腐敗・反資本主義の運動です。この運動では、「三反」(反貪污・反浪費・反官僚主義)と「五反」(反行賄・反偷税漏税・反盗鉄公有財産・反偽造資本・反盗窃国家機密)というスローガンのもとに、共産党員や公務員、民間企業家などを対象に自白や批判を強要しました。この運動で多くの人々が自殺したり、投獄されたりしました。

  • 反右派運動は、1957年から1958年にかけて行われた知識分子や民主人士などを対象とした政治弾圧の運動です。この運動では、「百花斉放・百家争鳴」(芸術文化の自由な発展と思想の多様な競争)という方針を掲げて批判や意見を募った後、「右派分子」として非難し、労働改造や迫害を行いました。この運動で約55万人が「右派分子」と認定されました。

  • 大躍進運動は、1958年から1961年にかけて行われた社会主義建設の加速化を目指した経済政策です。この運動では、「人民公社」(農業・工業・商業・教育・軍事などを一体化した集団経営体制)を全国的に推進し、「大炼钢铁」(農民が自家製の炉で鉄鋼生産を行うこと)などの非現実的な計画を実施しました。しかし、この政策は農業生産の低下や資源の無駄使いなどを招き、「三年大飢荒」(1959年から1961年まで続いた大規模な飢饉)を引き起こしました。この飢饉で約1500万人から4500万人の人々が死亡しました。

  • 文化大革命は、1966年から1976年にかけて行われた社会主義文化の革命化と毛沢東思想の普及を目指した政治運動です。この運動では、「紅衛兵」(学生や若者などの革命的な群衆組織)を先鋒として、「四旧」(旧思想・旧文化・旧風俗・旧習慣)を打倒し、「四人組」(江青・毛沢東夫人や張春橋などの急進派の政治家)を支持することを求めました。この運動で多くの文化財や歴史遺産が破壊され、知識人や政治家などが暴力や迫害にさらされました。

毛沢東時代は、1976年9月に毛沢東が死去し、文化大革命が終結したことで幕を閉じました。この時期には、中国は国際社会から孤立し、経済的にも停滞しました。しかし、同時に中国共産党の指導性や毛沢東思想の権威性も確立され、中国の社会主義体制や国家アイデンティティも形成されました。

鄧小平時代(1978-1997)

鄧小平時代は、現代化建設と改革開放を主題とした時期です。この時期には、計画経済から市場経済への移行や外資の導入などの経済改革が行われました。これらの改革は、中国の経済発展や社会進歩に大きく寄与しましたが、同時に社会的不安定や環境問題などの新たな課題も生み出しました。

  • 計画経済から市場経済への移行は、1978年から1990年代にかけて段階的に実施された政策です。この政策では、「价格双轨制」(計画価格と市場価格の並存)や「物价闯关」(物価の自由化)などの手法を用いて、国家の統制を緩和し、市場のメカニズムを導入しました。また、「家庭联产承包责任制」(農業生産の個人化)や「国有企业改革」(国有企業の民営化や契約化)などの措置も取られました。これらの改革により、中国は高度な経済成長を達成し、貧困層を大幅に減少させました。

  • 外資の導入は、1979年から始まった政策です。この政策では、「经济特区」(特別な税制や規制緩和を享受する地域)や「自由贸易试验区」(自由貿易や金融改革を試験的に行う地域)などの形態で、外国企業や資本を中国に誘致しました。また、「一国两制」(中国本土と香港・マカオ・台湾との間で異なる社会制度を認める方針)や「和平与发展」(平和的な外交方針と発展主義的な国際協力)などの理念も提唱しました。これらの政策により、中国は世界第二位の貿易大国になり、国際社会での地位を向上させました。

鄧小平時代は、1997年2月に鄧小平が死去し、江沢民が最高指導者となったことで終わりました。この時期には、中国は社会主義市場経済体制という独自のモデルを確立しましたが、同時に政治体制改革は停滞し、「六四天安门事件」(1989年に民主化運動を武力鎮圧した事件)や「三年大飢荒」(1959年から1961年まで続いた大規模な飢饉)などの歴史的問題も残しました。

後鄧小平時代(1997-現在)

後鄧小平時代は、中国特色社会主義と中国夢を掲げた時期です。この時期には、光沢民・胡錦濤・習近平という三人の最高指導者が相次いで登場しました。彼らはそれぞれ、「三個代表」重要思想、「科学発展観」、「習近平新時代中国特色社会主義思想」という理論を提唱し、中国の政治・経済・社会・文化・外交などの各分野において改革と発展を推進しました。この時期には、中国は世界第二位の経済大国になり、国際社会での影響力を高めましたが、同時に人権や民主化などの内政問題や、台湾や香港などの領土問題や、アメリカや日本などの周辺国家との関係問題などに直面しました。

  • 「三個代表」重要思想は、江沢民が2000年に提出した理論で、「中国共産党は最も先進的な生産力の発展要求を代表する」「中国共産党は最も先進的な文化の前進方向を代表する」「中国共産党は中華民族の根本利益を代表する」という三つの基本原則を掲げました。この理論は、中国共産党の指導性と先進性を強調し、経済建設と社会主義市場経済体制の発展を促進しました。

  • 科学発展観は、胡錦濤が2003年に提出した理論で、「以人為本」「全面協調」「綜合平衡」「可持続」という四つの基本原則を掲げました。この理論は、経済成長だけでなく、社会公正や環境保護なども重視し、人間中心の発展モデルを提唱しました。

  • 習近平新時代中国特色社会主義思想は、習近平が2017年に提出した理論で、十四項の基本原則を掲げました。この理論は、中国共産党の指導性と自信を強調し、中華民族の偉大な復興と世界的な影響力の拡大を目指しました。

以上が、中華人民共和国の歴史の概要です。

政治の仕組み

中華人民共和国の政治の仕組みは、中国共産党が指導する社会主義制度という特徴を持ちます。中国共産党は、国家の最高指導者や政策決定者を選出し、国家機構や社会団体に影響力を及ぼします。中国共産党の最高機関は、全国代表大会と中央委員会です。全国代表大会は、約5年に一度開催され、中央委員会や中央顧問委員会などの機関を選出します。中央委員会は、約1年に一度開催される全体会議で重要な政策を決定し、常務委員会や政治局などの機関を選出します。常務委員会は、7人のメンバーで構成され、最高指導者である総書記や副総書記などを含みます。政治局は、25人のメンバーで構成され、常務委員会と協力して党の日常的な運営を行います。

中華人民共和国の国家機構は、人民代表大会制度という特徴を持ちます。人民代表大会制度とは、各レベルの人民代表大会が最高権力機関であり、各レベルの人民政府が行政機関であるという仕組みです。人民代表大会は、国家レベルでは全国人民代表大会(NPC)、地方レベルでは省・市・県・郷・村などの人民代表大会に分かれます。全国人民代表大会は、約5年に一度開催され、約3000人の代表が参加します。全国人民代表大会は、国家主席や副主席などの国家指導者や、最高人民法院や最高人民検察院などの司法機関を選出します。また、全国人民代表大会の常任委員会を設置し、立法や監督などの職務を行わせます。

中華人民共和国の社会団体は、中国共産党や国家機構と密接な関係にあります。社会団体には、中国共産党以外の政党や統一戦線組織(中国国民党革命委員会や中国民主同盟など)、労働組合や青年団組織(中華全国総工会や共産主義青年団など)、学術団体や文化団体(中国科学院や中国作家協会など)などがあります。これらの社会団体は、中国共産党の指導下にあり、政治的にも経済的にも依存しています。しかし、同時に社会的な役割も果たしており、各分野の専門知識や意見を提供したり、社会的なサービスや活動を行ったりしています。

経済の仕組み

中華人民共和国の経済の仕組みは、社会主義市場経済という特徴を持ちます。社会主義市場経済とは、中国共産党が指導する社会主義制度と市場のメカニズムを組み合わせた経済体制です。この体制は、1978年から始まった改革開放政策によって確立されました。改革開放政策とは、計画経済から市場経済への移行や外資の導入などの経済改革を行った政策です。

中華人民共和国の経済の仕組みは、以下のような特徴を持ちます。

  • 国有企業と民間企業が並存する。国有企業は、国家が所有し、戦略的な分野や公共サービスなどに従事する企業です。民間企業は、個人や集団が所有し、競争的な分野やサービスなどに従事する企業です。国有企業と民間企業は、市場のメカニズムに基づいて自主的に経営を行いますが、同時に国家の指導や規制を受けます。

  • 国内市場と国際市場が連携する。国内市場は、中国本土で行われる商品やサービスの取引です。国際市場は、中国と他国との間で行われる商品やサービスの取引です。国内市場と国際市場は、関税や為替レートなどの手段を用いて調整されます。中国は、世界貿易機関(WTO)や自由貿易協定(FTA)などに参加し、国際市場での地位を高めています。

  • 政府と市場が調和する。政府は、国家計画や予算などの手段を用いて、経済の発展方向や目標を決定し、実施します。市場は、供給と需要などの要素に基づいて、価格や資源の配分を決定します。政府と市場は、相互に影響し合いながら、経済の安定や効率を保ちます。

代表的な企業

中華人民共和国の代表的な企業は、様々な分野や規模のものがありますが、ここでは、世界的に有名で影響力の高い企業をいくつか紹介します。

  • アリババグループ(Alibaba Group)は、1999年に創業した電子商取引やインターネットサービスなどを提供する企業です。アリババグループは、「淘宝网」(オンラインショッピングサイト)や「支付宝」(オンライン決済サービス)などの人気のプラットフォームを運営しており、中国だけでなく、世界中の消費者や事業者とつながっています。アリババグループは、2014年にニューヨーク証券取引所に上場し、史上最大の株式公開を行いました。

  • テンセント(Tencent)は、1998年に創業したインターネットサービスやソーシャルメディアなどを提供する企業です。テンセントは、「QQ」(インスタントメッセージングサービス)や「微信」(WeChat, ソーシャルネットワーキングサービス)などの人気のアプリケーションを開発しており、中国だけでなく、世界中のユーザーとコミュニケーションを促進しています。テンセントは、2004年に香港証券取引所に上場し、アジア最大の市場価値を持つ企業になりました。

  • バイドゥ(Baidu)は、2000年に創業した検索エンジンや人工知能などを提供する企業です。バイドゥは、「百度」(中国最大の検索エンジン)や「百度地图」(オンライン地図サービス)などの便利なツールを開発しており、中国だけでなく、世界中の情報や知識にアクセスできるようにしています。バイドゥは、2005年にナスダックに上場し、中国初のグローバルブランドになりました。

教育の仕組み

中華人民共和国の教育の仕組みは、国家教育法という法律に基づいています。国家教育法は、1986年に制定され、1995年と2009年に改正されました。国家教育法は、教育の目的や原則や制度や責任などを規定しています。国家教育法の主な内容は、以下のようなものです。

  • 教育の目的は、社会主義建設に有用な人材を育成することである。

  • 教育は、道徳・知識・体力・美的感覚の四つの側面を総合的に発展させることを基本原則とする。

  • 教育は、国家が指導し、社会が協力し、個人が参加することを基本制度とする。

  • 教育は、公平と質の向上を目指すことを基本責任とする。

中華人民共和国の教育の仕組みは、以下のような特徴を持ちます。

  • 学制は、9年間の義務教育(小学校6年間+中学校3年間)と高等教育(高校3年間+大学4年間など)に分かれる。義務教育は、全ての国民に無料で提供される。高等教育は、入学試験によって選抜される。

  • 学校は、公立学校と私立学校が並存する。公立学校は、国家や地方政府が設立し、運営する学校である。私立学校は、社会団体や個人が設立し、運営する学校である。公立学校と私立学校は、同じカリキュラムや評価基準に従う。

  • 教師は、国家が管理し、保護する。教師は、専門的な資格や能力を持ち、定期的に研修や評価を受ける。教師は、給与や福利厚生や社会的地位を保障される。

  • 学生は、自主的に学習し、参加する。学生は、自分の興味や能力に応じて科目やコースを選択できる。学生は、課外活動や社会奉仕などにも積極的に参加できる。

代表的な大学

中華人民共和国の代表的な大学は、様々な分野やレベルの教育や研究を行っている多数の高等教育機関です。中華人民共和国の大学は、国家や地方政府が設立し、管理する公立大学と、社会団体や個人が設立し、運営する私立大学に分かれます。中華人民共和国の大学は、入学試験や学費や奨学金などの制度があります。中華人民共和国の大学は、世界的にも高い評価を受けており、多くの優秀な人材や成果を生み出しています。

中華人民共和国の代表的な大学として、以下のようなものがあります。

  • 北京大学(Peking University)は、1898年に創立された中国最古の国立総合大学です。北京大学は、「北大」(Beida)という愛称で親しまれており、「中国最高の学府」という名声を持っています。北京大学は、文学・法学・経済学・医学・工学・教育学などの多様な分野で優れた教育と研究を行っており、中国の政治・文化・社会に多大な影響を与えています。北京大学は、世界ランキングでも常に上位にランクされており、多くの国内外の学生や教員と交流しています。

  • 清華大学(Tsinghua University)は、1911年に創立された中国最古の国立工科大学です。清華大学は、「清華」(Qinghua)という愛称で親しまれており、「中国最高の工科大学」という名声を持っています。清華大学は、工学・理学・経済管理・人文社会科学・芸術などの多様な分野で優れた教育と研究を行っており、中国の科技・産業・社会に多大な貢献をしています。清華大学は、世界ランキングでも常に上位にランクされており、多くの国内外のパートナーと協力しています。

  • 復旦大学(Fudan University)は、1905年に創立された中国最古の国立総合大学です。復旦大学は、「復旦」(Fudan)という愛称で親しまれており、「中国最高の総合大学」という名声を持っています。復旦大学は、文理医工商法などの十七個の分野で優れた教育と研究を行っており、中国の知識分子やリーダーを育成しています。復旦大学は、世界ランキングでも常に上位にランクされており、多くの国際的なプログラムや活動を実施しています。

諸外国との関係

中華人民共和国の諸外国との関係は、以下のような特徴を持ちます。

  • 「和平与发展」(平和的な外交方針と発展主義的な国際協力)という理念を掲げて、多極化や多様化や相互依存の世界秩序の構築に貢献しています。

  • 「一带一路」(シルクロード経済ベルトと21世紀海上シルクロード)という構想を提唱して、アジア・ヨーロッパ・アフリカなどの国々との間で、インフラや貿易や投資などの分野で協力を深めています。

  • 「一国两制」(中国本土と香港・マカオ・台湾との間で異なる社会制度を認める方針)という原則を堅持して、香港・マカオ・台湾との関係を発展させています。しかし、台湾の独立運動や香港の民主化運動などには強く反対しています。

  • アメリカや日本やインドなどの周辺国家とは、経済的には協力しながら、政治的や安全保障的には対立することが多いです。特に、南シナ海や東シナ海などの領土問題や人権問題や貿易問題などで、緊張や摩擦が起こっています。

  • ロシアや北朝鮮やイランなどの友好国家とは、政治的や軍事的には協力しながら、経済的には競争することが多いです。特に、エネルギーや資源や技術などの分野で、利益を追求しています。

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