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メキシコで携帯をスられてみた①

海外旅行で起こる定番トラブルの一つ、スリ。

卒業旅行シーズンの2、3月、特に平和ボケした日本人は格好の標的だ。

席取りのつもりで荷物を椅子に置いたり、食事中に椅子の下に荷物を置いたり…挙げればキリが無いが日本が馬鹿みたいに治安が良いだけであって、課外では盗んでくださいと言っているようなものである。

私に関して言えば、ある程度の旅はしてきたつもりで、悪名高き南イタリアとインドで無事何も盗られず生還している。

完全に慢心しきっていた…


舞台はメキシコ。

御多分に漏れず卒業旅行(と言っても一人)で北アメリカ大陸を三週間の旅程で旅行中であった。

事件は五日目。メキシコシティの地下鉄。
東京の満員電車を彷彿とさせる混み具合。ピラミッドを見て屋台でタコスを梯子した帰り道であった。


メキシコ版ピラミッド「テオティカワン」

南米限定のポケモン目当てに電車が来るまでポケモンGOに勤しんでいた。
電車が来る。満員電車の中でスマホをいじれる訳もなくスマホをしまう。

ジーンズのポケットに。

ここはメキシコ。麻薬カルテルが蔓延る世界で有数の治安を誇る街。

次の駅。降車客が多く、スマホが弄れるくらいの空間が出来る。
ジーンズのポケットにあったはずの感触がない。

落としたかもしれないと周りを見渡すもない。
近くにいたメキシコ人に拙い英語で聞いても当然知らない。

自分の置かれている状態を把握、いや受け入れるのに10分程掛かっただろうか。吐き気がして降りる予定のない駅でひとまず降りた。

ホームに座り込む。
まだ五日目、これからメキシコ国内の移動もあるし、トロント、NYへも行かねばならない。一瞬にして超ハードモードな旅行へと様変わりした。

そこからあまり記憶がないが、ひとまず夜通しホステルの共有PCを独占して家族にメール、携帯の停止、これから泊まる宿の地図をプリントアウトしたかったがプリンターが使えず、一眼で撮った。

共有PCの設定がスペイン語でどう頑張っても日本語入力出来なかったので、家族友人各所には全文ローマ字の怪文書じみたメールが届いた筈だ。

血眼でPCと格闘中、ド派手なドラァグクイーンとマリアッチ(アコーディオンを持った演奏隊)がホステルに凸。深夜3時ごろだろうか。
メキシコらしいのか知らないが、気にかける気力もなかった。

それからいつ寝たのかも分からない。
翌朝、屋上で焼きたてのタコスと馬鹿みたいに美味いコーヒーを飲みながら、これから先の旅を案じた。


続く


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