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店長の書評 病気にならない食と暮らし

2018年は明治維新から数えて150年にあたる年となります。 それは、一貫して近代化を推進してきた年月でもあったと思います。 近代化は科学技術によって文明の利器を生み出して、便利で快適な生活を実現して来ました。 ところが、公害をはじめ、地球温暖化等の環境問題、原子力発電の問題等々にも直面しています。

自然に学び、自然に沿って暮らす

人間は病気になりやすく、生き苦しくなっている様相です。 この節目に、今日の近代化を批判的に見て行く必要がありそうです。 そんな視点で明日への提言をしてくれるのが、医師の本間真二郎さんです。

「病気にならない食と暮らし」(本間真二郎著 セブン&アイ出版)

自給自足の生活

まずは、その著書のタイトル「病気にならない食と暮らし」を ご自身とご家族で実践されていることに説得力を感じました。 もともとは、大都市の大学病院で勤務していたのですが、8年前に栃木県の那須烏山市に移住して、 診療所を開いて生計を立て、畑で野菜を育てながら自給自足の生活を始められた。 「実際にからだを動かして自然と向きあっていると、どんなに医学や研究を駆使しても、 この世界はわからないことだらけだということが、より深くわかってきたのです。」 そこで、「私はなによりも実践を重視します。」

麹菌と身土不二

そして、ウィルス学を研究されていた知識をもとに、その土地の麹菌で、 味噌や醤油などの調味料をご自身で作っています。 ポイントは、「その土地の麹菌」であり、その土地の微生物で作ることです。 その土地の稲穂を干した稲だまりから麹菌をつくるのですが、 その作り方が丁寧に解説されています。 それが本間さんの食の原則とされている身土不二(しんどふじ)につながります。 「私たちのからだと住んでいる土地は同じもの、切り離せないということ。 その土地でとれた旬のものが、私たちの健康を支えてくれているわけです。」

自分でつくること

本間さんは、麹菌をはじめとした「微生物」の重要性を語ります。 「医の前に食があり、食の前に農がある。そして、農の前に微生物がある。」 体内の微生物が、消化、吸収、解毒、免疫などの重要な生命活動を行っている。 この活動が行われる腸内に微生物を数多く取り込むことで健康になれる。 そのためには、「できるだけ手をかけて、自分でつくることです。私は、それが愛情だと思っています。 家で食材や調味料を選んで料理して食べれば、健康的になれます。 まずは、本物の調味料をそろえましょう。さらに、鮮度がよく、ていねいに栽培された米と野菜が必要です。」

玄米の解毒作用

また、「腸内細菌の栄養となるには、米、麦、いもなどの精製されていない穀物を少量でもしっかり とる必要があるのです。」 ここで、精製されていない米である玄米を推奨されていますが、 その成分である糖質は、腸内細菌の栄養となるだけではなく「玄米は体内のミネラルを一緒に排泄してしまうとの見方もあり、避けておられる人もいますが、 私は逆に、からだにとっての有害物質を排泄してくれる強力な解毒作用だと思っています。 玄米を土に植えれば、芽が出ます。玄米をいただくことは命を丸ごといただいているということです。」

子育てを農作業

本間さんは、自然から直接学んでいました。 すると、物の見方や考え方は、必然と広く大きくなるのだと思いました。 それは、自分よがりでなくなるとも言えます。 そして、本間さんには3歳と0歳のお子さんがおられますが、 子育てを農作業と同列に置かれて、地域の皆さんに教えて育ててもらうことだと。 「子育てはひとりでするものではなく、家族や地域のコミュニティのなかで」 それが自然に沿った子育てとも言えるでしょう。 その時、人と人とのつながりを回復していくこと、それが人間として自然なことであり、 ポスト近代化の道標だと思いました。