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『有吉クイズ〜奇人・有吉弘行の素顔に一番近づける番組〜』 テレビかじりつきVol.18

あぶねー、油断してると忘れちゃうよね。
有吉弘行という芸人がおかしな人だってこと。
(以降も敬称略)

#有吉クイズ (テレビ朝日)
毎週月曜 深夜0時15分〜

深夜で単発的に放送を重ね、一部で熱狂的な支持を集めていたクイズ番組が念願のレギュラー化。

見どころは何と言っても有吉弘行その人。

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この番組で有吉はMCではない。クイズの回答者でもあり出題者だ。

他の多くの冠番組ではMCであるがゆえ基本的には受けの立場。ゲストのトークやネタ、VTRの内容を受け止めて広げたり弄ったり。かつて千原ジュニアは有吉をカウンター芸の極みと称した。他の芸人がトークのネタやエピソードを切り売りして消耗していくのと違い、有吉は自分の残高を使わないでカウンターだけでやれる達人だと。

そんな有吉がここでは主体的な"動"の姿を見せてくれる。「他では見れない貴重な姿」なんて常套句を安易に使うならまさにそれ。番組の目玉となってるお決まりのプライベート密着ロケでは毎回予想を超えた衝撃シーンをお届けしてくる。

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記念すべきレギュラー化初回放送では新宿歌舞伎町のディープな繁華街の奥へと進んだ。スタッフとの待ち合わせに現れた有吉は珍しくサングラス姿。レイバンのサングラスは木村拓哉からのプレゼントらしい。ネタっぽくかけているのかマジなのか分からなくて笑ったが、ふつうに似合っていた。

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番組冒頭では「夕方6時台を狙ってる」と冗談めかして語っていた有吉。その発言を自ら蜃気楼にするようにファッションヘルスの看板に目をやって「価格破壊してますね…」と物憂げに呟く。

令和の日本、さらに都心部とは思えない狭くて怪しげな雰囲気の繁華街を進むと、行き着いた先は上海料理の定食屋。ふらっと入るには勇気のいる店構え。メニューも珍味揃いで相当ディープ。

有吉が注文したのは豚の脳みそ。クモの素揚げ。運ばれてくるなり躊躇もリアクションも一切なく大口開けて食べだした。バクバク食べるなんて表現があるが、まさにバクバク食べていた。

パネラーのみちょぱ、小峠、秋山(ハナコ)らからは「何を見せられてるんだ」「ノールックで食うもんじゃないんですよ」と総ツッコミを入れられていた。バキバキに見開いた眼球を動かしながら「覚醒しますね、豚の脳みそを食うと」「月に1回は食べたい」とおよそフジテレビのおさんぽ番組では決して見せない表情で満足そうに平らげていた。その目はイッていた。

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やっぱりこの人は相当おかしな人だと思った。

常識も教養もめちゃくちゃあるのは分かっているけど、本来まちがいなく変人だ。いまやすっかりバラエティ界の覇者的存在になり、数多の芸能人が「有吉さん有吉さん」「有吉さんに会いたかった」と口を揃えて言う。実際に当人も柔軟な振る舞いや大人な仕事をいくらでも出来る。週に一度ラジオを聴く時だけは「そうだ、頭おかしかったんだこの人」と思い出すが、テレビを見ているだけの人は段々とまっとうな印象だけを持ち始めてるのではないか。

子供に人気のお笑い番組をやり、NHKの知的教養バラエティもやり、美しく気品のある妻を貰い、国民的アイドルと司会もやり…だから忘れそうになるし、錯覚しそうにもなるけど、そもそも有吉弘行という人はイカれたところがある人間なのだ。芸風というよりも、人間自体に底知れない魅力を持っていて面白い。

真顔で何やらそれっぽく喋ってるだけで笑える。公園のベンチで弁当食ってる姿だけで画が持つ。ついツッコミを入れたくなるような含みを待たせた語りもするし、唐突に際どい姿も晒す。

再ブレイクを果たした直後、かれこれ10年以上も前に『我々は有吉を訴える』シリーズという有吉の鬼畜性を暴いたロードムービーがあったが、ああいったコント性の強いドキュメンタリーな笑いをやらせたらこの人のスキルはえげつない。有吉クイズではその片鱗を覗かせる。

あのタモさんだってもともとはアングラなところから出てきて奇抜な芸風だった(リアルタイムでは見てないが)。それが気付けばお昼の顔となり国民から広く愛される存在にまでなった。ただタモさんのまるで妖怪のような底の見えない深い本質は消えていない。もしかしたらタモさんは案外近しいロールモデルなのではと思うことがある。

タモさんは圧倒的な教養と独自の視点であらゆる対象を面白がることができる。攻め受けで言うならやはり受け手で、合気道の達人といった芸風。トークの守備範囲の広さは言わずもがな、知的でいてニュートラルな印象も持つタモさんがその変態性と偏屈っぷりを放出する『タモリ倶楽部』のように、有吉クイズは有吉にとってのタモリ倶楽部になるのだろうか。

いずれにせよ、有吉の本質、人間としてのおかしみ、素顔に迫ることができるこの番組は見応えたっぷりだ。本人にとってもラジオとは別にテレビでバランスを取る場所として重宝する環境になるのかもしれない。

出題されるクイズそのものもクオリティが高く、切り口も意外性がある。何よりこの番組を有吉自身がとても楽しそうにやっているのが伝わってくる。共演者のことを信頼しているのも伝わるし、VTRでもスタジオでもよくボケてよくツッコまれている。ツッコミを入れられるのが嬉しくて仕方ないといった様子も印象的だ。

最後にもう一度テンプレっぽい表現を使わせてもらう。

有吉弘行の"他では見られない姿を見ることができる"有吉クイズ。今後もますます見逃せない。


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