檸檬

ビジネスデザイナーって何?

 ビジネスデザインは「クリエイティブ」でも「プロデュース」でも「プランナー」でもありません。そして「コンサルティング」とも違います。文字通り「ビジネスをデザインする」、すなわち【ビジネスがうまくいくようにデザインする】という表現が一番わかりやすいのかも知れません。

 ただ、意外ときちんとした定義はなく、ブランディング会社がビジネスデザインと名乗ったり、VIやCIを定義することをビジネスデザインというケースもあったりと玉石混交状態です。

 よって今回は「ビジネスデザイナーってつまるところ何をする人なのか」を小生の考え方をご説明したいと思います。

疑問①コンサルティングと何が違うの?

 コンサルティングは企業の問題点を探し出し解決の方向性を示し、論理的に合意を得られやすい形で企業の成長を促進するための「道しるべ」をつくってくれる存在だと思います。外部要因・内部要因から事業の成長性を客観的に測定し、複数のシナリオを作成し、そのための必要な資金、人的リソース、資源などを算出して既存事業を見直したり、新規事業に参入したりというような事業計画を作成するといったイメージです。どちらかというとMBAではこういったケーススタディをするのかなと勝手に思っています。

 ビジネスデザインの現場でも、こういったことは当たり前にやります。ただこういったシナリオはそれなりの訓練を積めばできてしまう。つまり予想できる未来を提示する会社はいくらでも存在すると言えます。ビジネスデザイナーである小生はそこではないゴールを探します。A~Zプランに当てはまらない、でもクライアントが望む形であり実現する蓋然性も高い施策を考えること。それがビジネスデザイナーに求められるスキルではないかと思います。

 特に大きい要素は「クライアントがまだ見ぬ未来を見せること」かなと。優秀な経営者は大抵カンピューターで描ける未来は描いています。その先、または全く別ベクトルの未来を提示できるかがビジネスデザイナーの腕の見せ所で、それが妄想ではなく構想であること。つまり、実現する手段やプロセス、ディテールまで描けること。そこがコンサルティング会社と決定的な違いだと思います。

疑問②クリエイティブディレクターと何が違うの?

 一番近い存在であることは間違いありませんが、決定的な違いは「クライアントの利益につながるコミュニケーション領域外の設計までできること」と思います。

 えてしてクリエイティブという言葉の印象として表現物やプロダクトを作る人という認識が強いのは事実です。しかし海外では企業全体のグランドデザインを描いたりブランドイメージを構想しそのための施策を考案するのはクリエイティブディレクターです。日本ではどうしてもその印象が薄く、広告表現やビジュアルアイデンティティやコーポレートスローガンといったアウトプットをディレクションする立場の意味が強く出てしまいます。

 ビジネスデザインでは、コミュニケーション領域以外、例えばサプライチェーンの見直し、組織構造、人事評価制度、人材教育方針まで含めてデザインします。いわばバックオフィス領域まで含めて考えることで、ビジネス全体がうまくいくようにデザインすることにつながるのです。

オーストラリア夕景

疑問③なぜ自分で事業をやらないの?

 ごもっともなご指摘です。一応ビジネスデザイン会社として起業しましたが、「こんなビジネスやったら面白そう!」とか「この商品ここをもっとこうすれば流行るのに」とかいろいろと思うところもあり、時々自分でクライアントの商品を仕入れて販売した方が早いのではないか?とか思うこともあります。

 しかしビジネスデザイナーという職能で起業を選んだのは「特定の何かの業種ひとつに絞れなかったから」です。

 例えば、世界で一番おいしいイチゴがつくりたいとか、世界中の水で悩んでいる人たちにおいしい水がいつでも飲める水道施設をつくりたいとか、具体的かつ熱い情熱を注げる「何か」が、自分にとっては「ビジネスデザインで世界中の熱い人を応援すること」だったわけです。

 数年前から起業したいという想いを抱えていましたが、ずっと何で起業しようか迷っていました。AI関連や農業や水産業の課題解決、地方が抱える課題を世界中のアジェンダにしていち早く解決策のシステムを整え高齢化社会のロールモデルをつくるとか、とにかくいろんなアイデアが出てきました。そしてこの問いの答えを導き出せたのは、ほかでもなく自分自身との対話を続け、まだ誰もやっていない領域でトライすること、起業してから本当に情熱を注げる分野が見つかればそれをやればいいと思えるようになったことが大きいです。

 よく「起業を目的化すると失敗する」という啓発本を目にしますが、そんなことはありません。起業してから見える景色があり、雇われる側にいると絶対にわからない感情やプレッシャー、そして楽しさがあります。これらすべてを「楽しい」と思える人は今すぐ起業していいと思います。

アデレード噴水

つまり、

・ビジネスデザイナーは「ビジネスがうまくいくことをデザインする」

・ビジネスデザイナーは「コンサルだけでもクリエイティブだけでも成り立たない」

・ビジネスデザイナーは「まだ未知の領域のビジネスモデル」

ということです。

もっと突っ込んだ話が聞きたいとかご興味がある方はぜひお話させてください。


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