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「海のはじまり」第三話感想

夏くんと弥生さんと海ちゃんが家族になっていくのかな、朱音さんと津野くんの気持ちはどうなっていくのだろう、と次回予告が気になってならなかった第三話。あっという間でした…。

海「どこ行くの?」
水李「ママの図書館。ごめんね。今日遅番だからさ…。いなくならないよ。いなくならない。」
抱きしめ合う二人。
海ちゃんが水李の背中をぎゅっとする手にフォーカスしたタイトルバック。
そして映し出される水李の遺影。

「海のはじまり」第三話

不安そうな表情をする海ちゃんに、いなくならないと繰り返す水李。この時はもう、自分がもうすぐ側にいられなくなることが分かっていたのでしょうか…切ない。そして、いなくならないといった水李の遺影を出してくるあたりが、現実を容赦なく浴びせてくる生方さんです。

海「ランドセル!」
夏「うん。」
海「海の。」
夏「水李がこれにしたの?」
海「海に選ばしてくれた。」

「海のはじまり」第三話

ランドセルを海ちゃんに選ばせる水李。第二話で朱音が言っていた「海に選ばせてあげてって。正解を教えるより自分の意思で選ぶことを大事にさせてあげてって。」ってセリフが響きますね。何でも海ちゃんの選択を大切にしてきたんだろうなって。

弥生「早くに2人出産してこのキャリアって凄いです。」
志織「それでも色々諦めたけど。自分の仕事のこと。産んでなきゃなって思うときある。」
弥生「後悔してるってことですか?」
志織「いや後悔とは違う。そう思っちゃう時もあるってだけ。」
弥生「へぇ…。」
志織「だって自分の子どもって超カワイイからね。産んでごらん。」
彩子「産みたいです。」
志織「早く結婚しなよ。」
彩子「セクハラです。モラハラです。」

「海のはじまり」第三話

職場の先輩と同僚と飲みの席で話す弥生さん。中絶した経験がある弥生さんに「産んでごらん」という言葉は、しんどすぎますって…。悪気がなくても、相手のことを無意識に傷つけてしまうってことって、結構ある。自分の価値観は、正義は、人とは違う。

台所に立つ朱音と夏。
朱音「月岡さんご両親は?ご健在?」
夏「はい。」
朱音「ご家族は仲がいいの?」
夏「はい。わりと。」
朱音「仲がいいことに理由なんてないでしょ。なくていいのよ。」

(中略)

朱音「今年70歳。水李産んだのが42歳のとき。不妊治療してやっとできた子なの。なのに水李は真逆の状況になって…。妊娠したら子どもは堕ろす。やっぱり産む。一人で育てる。何の相談もしてくれなかった。そこ開けて。」
夏「はい。」
朱音「お鍋あるでしょ。出して。」
夏「あっ幾つか…。」
朱音「手前の右の深いやつ。」
夏「はい。あっすみません。」
朱音「見て。5歳の水李にやられた。」
(お鍋に描かれた赤いお魚の絵が映る)
夏「どうして産むことにしたんですか?」
朱音「さあ。やっぱり産むからってそれだけ。」
夏「そっか…。」
朱音「父親に知らせないのは選べないからって。その人私が産むって決めたらじゃあ父親になるって絶対に言うから。他の選択肢を奪いたくないって。だから頼りなかったとか他に誰かいたとかそういうのではないんですよ。」

「海のはじまり」第三話

生方さんは、食べるところ、お料理するところ。そんな日常を丁寧に切り取ってくれますよね。朱音の仲がいいことに理由なんてないでしょ、という台詞、響きます。好きなことや嫌いなことに理由なんてなくていい、という話はよく聞きますけど(そして確かにと思う)、仲の良さにもこれが言えるのかと思いました。同じように仲が悪いことにも理由がなくていいんですよね。境遇や価値観が似ているからこそ、仲がいいことも、そうじゃなくても(逆にそうじゃないからこそ)仲がいいことも、ある。そんなことに気付かせてくれました。42歳で不妊治療してやっと授かった水李を20代で失ってしまった朱音。その悲しさは計り知れないですよね…。水李が幼少期に落書きしたお鍋を大切にとっておいて、今も使っていることからも、朱音の水李への愛情が感じられます。そして、他の選択肢を奪いたくないから夏くんに知らせず一人で海ちゃんを産んだ水李。水李らしくて…やっぱり夏くんへの水李なりの配慮だったんですよね。

台所で二人洗い物と片付けをしながら。
弥生「ご両親再婚されたときってさ。」
夏「うん。」
弥生「すぐに受け入れられた?」
夏「うーん…大和もお父さんもああだから抵抗あったの最初だけで時間経って自然と。俺は何もしてなくて、あの2人があの2人だったからよかったってだけ。」
弥生「向こうもそう思ってると思うけどね。月岡くんとあのお母さんだったからって。」
夏「うーん…。」
弥生「思ってるよ。」
夏「電話の…母親にってあれ。」
弥生「うん。すてきな家族だなってホントに思うんだよ月岡くんち。だから産んだとか関係なく…私にもって思うのはおこがましいけどさ。」

「海のはじまり」第三話

自分が母親になれたらって思っている弥生さん。そう思えるのは、夏くんの家族を見ていたっていうのもあったんですね。血の繋がっていない家族のことを、あの2人だったからという夏くん。私も4人家族で、血の繋がりがあるけれど、仲がいいのは血が繋がっているからだけじゃないって思っている。同じ家で暮らして、価値観が似ていて、似ていないところもあって、一緒にいると楽しい。3人とも、家族じゃなく出会っていても、尊敬できる存在だなって思える。そして、夫は血が繋がっていないけれど、大切な大切な存在。大好きな瀬尾まいこさんの「そして、バトンは渡された」も血の繋がりのない家族だけれど、仲が良くて温かい家族。家族の形は色々だけれど、それぞれに良さがある。逆に血の繋がりがあっても、仲が悪い家族もいるしね。そして、それが一概に悪いという訳でもない。その家族、それぞれ。

バスから降りて海ちゃんを真ん中にして夏くん、弥生さんと3人で手を繋いで歩く。
弥生「どうしよう、これ写真撮ってほしいやつだ。」
夏「あっ撮ろっか?」
弥生「違う違う。その…外野から?」
夏「外野?」
弥生「3人のこの感じ、絶対憧れのやつになってる。」

「海のはじまり」第三話

弥生さんの嬉しそうな表情。一見明るいシーン。でもすぐに、この「外野」というワードが響いてくるとは…生方さんいつも切ないことする…(めっちゃ褒めている)。

洗濯物を干しながら。
朱音「あの子私お母さんやれますって顔してた。」
翔平「ハッ…そうかな?」
朱音「30年くらい前ねベビーカー見るとイライラしてたの。」
翔平「ああ30年前はね。」
朱音「欲しくてたまらなかった分他人のそれにイライラしてなんで私じゃないのって。」
翔平「ハハ…いいんだよ。その結果水李が来てくれたんだから。」
朱音「またどっか行っちゃったけどね。」

「海のはじまり」第三話

お料理と洗い物の次は洗濯のシーン!生方さんの日常を切り取ってくれるところ、大好(長くなるので以下略)。朱音の抱えていた気持ち、不妊治療あるあるって聞きます。自分のことに精一杯だと、他人のこと思いやれなくなったり、何で私ばっかりこんな目に遭っているんだろうって思うこと、ありますよね。いいんだよって言ってくれる翔平さん、優しいな〜前から思っていたけど穏やかで海ちゃんにいつも笑顔で接していて、お人柄の良さがうかがえますよね。

津野「すぐ謝んないでください。意地悪してる気になって気分が悪いので。」
夏「すみません…。わざとじゃないです。ごめんなさい。」
津野「もういいです。ずっと謝っててください。謝んないんかい。」
夏「津野さんに会いたかったみたいです。」
津野「海ちゃんが僕に会いたがったことなんてないです。」
夏「いやでも懐いてるし。」
津野「僕はあれです。南雲さんが…水李さんが海ちゃんといれない時に預かったりシフトの調整したり…。それくらいです。付き合ってないです。そういう関係じゃないです。」
夏「すみません。」
津野「すみません。すみません感じ悪くて。」
夏「いえ…。」
津野「そちらもそうだと思いますけどまだ感情がぐちゃぐちゃで。別に怒ってないんですけどイライラした感じになっちゃって。」
夏「はい。」
津野「海ちゃんが望むことなら何でもいいんです。誰が親やっても誰と暮らしても。」
夏「水李がそう言ってたんですか?」
津野「知りません。」

「海のはじまり」第三話

謝るのが癖になってしまっている人って、いますよね。私もそうだったんですけど。悪気はないんです。でも、友人にごめんが口癖って良くないよって言われたことがあります。謝るって、そう簡単に何度も何度もしていいことじゃないのかもしれない。逆に謝ることで、相手を不快にさせることもある。
津野くんは、水李のことを大切に想っていたんだろうな。だからこそ、失ってしまって、急に今までいなかった父親が出てきて、パニックになっているんでしょうね。嫌な感じになっているというのも、自分で自覚している。津野くんは、津野くんなりに辛い。そして、海ちゃんが望むことならと言い切れるあたり、自分はあくまで陰でいいという優しさを感じます。

母子手帳を読む夏くん。
海「ママの字。」
夏「あっうん。」
海「日記?手紙?」
夏「子供の成長の記録っていうか。うん。」
海「すくすく?」
夏「うん?何それ?」
海「すくすくって言うでしょ。」
夏「いつもここで待ってたの?」
海「うん。」
夏「だから今日来たかったの?」
海「んー…うん。」
夏「大丈夫?水李がいないここ来たの初めてでしょ。いないってホントにもう水李がいないってこと…」
海「読んで。」
夏「これ?」
海「うん。」
夏「いや…読むのはちょっと。」
海「読んで。」
夏「うん。」

「海のはじまり」第三話

母子手帳がミッフィーちゃん(すみません、ただのミッフィーちゃんファンです)!
第二話の最後で夏くんに「聞いて」「聞いて!」と繰り返す海ちゃんを観た時も思ったんですけど、鳩サブレーを夏くんに「選んで」「選んで!」と繰り返した水李とそっくりなんですよね。主張する時はしっかり主張するところ、海ちゃんと水李は似ていますね。

くっつく夏くんと海ちゃんを遠くから見ている弥生さん。
津野「疎外感すごいですよね。」
弥生「えっ…。」
津野「自分は外野なんだって自覚しますよね。」
弥生「確かに。外野ですよね。」
弥生さんが手に持っている子育て本が映る。

「海のはじまり」第三話

ここで先ほど弥生さんが言った「外野」というワードが出てきます、、、辛い、、、笑いながら言っているけど心はきっと泣いている弥生さん。そして母親になろうと子育て本を手に持っている。辛すぎますって、、、

朱音「大丈夫でした?」
弥生「はい、楽しかったです。」
朱音「『楽しかった』?そう。」
弥生「はい。」
朱音「子ども産んだことないでしょ?」
弥生「ありません。」
朱音「大変なの。産むのも育てるのも。大変だろうなって覚悟して挑むんだけどその何倍も。」
弥生「はい。尊敬します。」
朱音「別に尊敬しろなんて思ってないけど。産みたくて産んだんだし当然のことなんだけど。水李もそう。産みたくて産んだし。もっと育てたかったの。悔しいの。水李がいたはずなのに…。血のつながりが絶対なんて思わないけど、でもこっちはつながろうと必死になって、やっとつながれたの。だから悔しい。」
弥生「でも…。ホントに楽しかったです。ありがとうございました。私まで一緒に。」
朱音「いえこちらこそ。」

夏「楽しかったね。楽しかったね。」
弥生「うん。」

「海のはじまり」第三話

朱音の本音が炸裂。産みの苦労も育ての苦労も分かっていない他人に、一日だけ一緒にいて楽しかったと言われることがやるせなかったんでしょうね。隣にいるはずだったのは水李なのに、と悔しかったんでしょうね。感情がぐちゃぐちゃになって、どこにぶつけたらいいのか分からなくなってたんでしょうね。でも、ぶつけられた弥生さんは、どうすればいいの…何も悪くないんですよ…。そんな感情をぶつけられても、でも楽しかったと返せる弥生さん。強いです。でも強がりにも見えます。夏くん、慣れないことで精一杯なのは分かるけど、弥生さんのことをフォローしてあげてほしいです…このままじゃしんどすぎるよ…!

夏「学校楽しい?」
海「うん。」
夏「おばあちゃんちは?」
海「楽しい。」
夏「ホントに?」
海「うん。」
夏「何で元気なフリするの?」
弥生「やめなよ。」
夏「水李死んで悲しいでしょ。何してても思い出してきついと思うし。何で?泣いたりすればいいのに。」
弥生「ねえ。」
夏「水李だって元気でいてほしいって思ってると思うけど。でも…。元気ぶっても意味ないし。」
弥生「そんなことないよね。みんなが優しくしてくれるから海ちゃんも元気でいられるんだもんね。」
夏「水李の代わりはいないだろうし。」
弥生「大丈夫だよ。皆ママの代わりに海ちゃんのこと助けてくれるから。」
夏「水李がいないってことから気そらしたってしょうがないし。悲しいもんは悲しいって吐き出さないと。」
弥生「月岡くん!」
立ち上がる夏くん。
弥生「海ちゃんごめんね。」
泣き出す海ちゃん。
弥生「頑張って元気にしてたんだよね。偉いよ。」
海ちゃんにハンカチを差し出す弥生さん。受け取らない海ちゃん。
夏くんのところに駆け寄って、抱き締める。そして、泣く。
抱き締め返し、一緒に泣く夏くん。

「海のはじまり」第三話

ずっと、ずっと、元気にしていた海ちゃんの悲しいっていう気持ちをちゃんと悲しいって気持ちに昇華させてくれたのは、夏くんでした。海ちゃんが、やっと泣けてよかった。今まで周りを心配させないように、頑張ってきたんだよね。でも本当は、辛かったし、泣きたかったんだよね。いつもは、頼りない話し方をする夏くんが珍しく強い語気で話していて、それがまた海ちゃんの心に届いたのかもなんて思いました。私も、10歳の時祖父が亡くなった時、病室でもお通夜でもお葬式でも泣けなくて、でも祖父母の家の和室で夜一人になった時不意に涙が溢れてきたことを思い出しました。境遇は全然違うし、海ちゃんの辛さは想像しか出来ないけれど、泣いていいんだよって言ってくれる父親の存在は海ちゃんにとって、どれだけありがたかったことか、と思います。
そして、優しいフォローをしていた弥生さん。差し出したハンカチを受け取ってもらえなかった弥生さん。後ろで抱き締め合う二人の側で、疎外感を覚えているであろう弥生さん。幸せになってほしいです、、、泣。

絵を描く海ちゃん。
乃木先生「あっ鳥さんだ。上手だね。」
海「サブレ…。」
乃木先生「サブレ?今日は元気ないね。」
海「うん。でも大丈夫。」
乃木先生「大丈夫って?」
海「今ママのこと考える時間。元気ないけど大丈夫。」
乃木先生「そう。」

「海のはじまり」第三話

鳩サブレーの絵を描く海ちゃん、可愛い尊い、、、元気なくてもいいんだって思えたのは、夏くんのおかげですよね。海ちゃんが、元気がない自分を認めてあげられるようになって、良かったです。

海に来た夏くんと海ちゃん。
夏「ねえ。『パパいつ始まるの?』って聞いてくれたけど始めてほしいってこと?パパになってほしいってこと?」
海「ううん。」
夏「『ううん』?」
海「夏くんパパやらなくていいよ。」
夏「えっ?」
海「でも…。いなくならないで。ママとパパ一人ずつしかいないから。だからいなくならないで。」
夏「パパだからいなくならないでほしいけど、パパやらなくていいってこと?」
海「うん。」
夏「ごめん。パパやるって何?」
海「分かんない。」
夏「俺も分かんないんだよね。認知するとか育てるとかってそういうの簡単に決めるのも無責任な気がするし。」
海「無責任って?」
夏「分かんない。よく分かってないってことかも。」
海「『いなくならないで』は分かる?」
夏「それは分かる。分かるし…そうしたい。水李の代わりにはなれないけど一緒にはいれる。」
海「じゃあいて。」
夏「分かった。」
海「撮る?」
夏「ああ…撮る。」
海ちゃんを撮ろうとする夏くん。
夏(笑いながら)「近いな。ちょっとここいて。」
海「うん。」
歩く夏くんについてくる海ちゃん。
振り返る夏くん。
夏「何でよ。ここいて。ここね。」
海「うん。」
また夏くんについていく海ちゃん。
夏(笑いながら)「ねえ。ここいて、ここ。」
足で砂浜に線を引く夏くん。とどまる海ちゃん。
夏「そこいてね。」
海「うん!」
シャッターを切る夏くん。

「海のはじまり」第三話

ここ!最高のシーンでした。夏くんの心から笑っている姿が、ようやく観られましたね。海ちゃんも、心から楽しそうだった。海ちゃんは、水李がいなくなって、でも夏くんという存在が現れて、ただ、いてほしいんですよね。父親をやるとかやらないとか分からないけれど、ただ、いてほしい。それが強く伝わってくる場面でした。第一話の冒頭の水李の「いるよ。いるから大丈夫。」に返すような、夏くんの「そこいてね。」、とても良かったです。後、毎度言いたいけれど、徳田さんの静かなピアノの音楽がお話に寄り添っていて、本当に素敵です。

***
次回予告、水李の「母親ってそうじゃない女より偉いのかよ」って朱音に投げかけるシーンが気になるし、弥生さんが夏くんに中絶した経験があることを打ち明けるし、弥生さんに「決めさせようとしないでよ」って強い口調で言う夏くんが強い意思を持っているように見えるし、何よりシャワーを浴びながら泣いている弥生さんが苦しすぎて…色々な気持ちが渋滞しそうになりそうな、第四話。

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