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苦悩は去る。やがて思った以上の平穏な時がやってくる。

電話が嫌いだ。

正確に言うと、こちらが出るまで繰り返し電話をかけ続ける人が嫌いだ。今どき、文字を入力するツールなどいくらでもあるのに、”今ここ”で回答を得ようとする人たち。たいがいが他人の時間を奪うことに無頓着な人だったりする。

「『おがわ』で飲み会なんだけど、メンズ2名がドタキャンでさ」
「僕今日、給食当番なんで給食着せんたくしないと」

「頼むよ、向こうに女子4人揃えてって、こっちから頼んでおいて恰好がつかないんだよ」
「上履きロッカーに忘れちゃったんで取りに戻らないとお母さんに」

「参加費いらないから、お前とあと一人なんとか。一次会だけでも!じゃヨロシク!」

ぷー ぷー ぷー

ぼちぼちの付き合いなのに相手を理解するための努力を怠るこの人が苦手だ。
だが後の電話攻撃もぞっとしない。仕方ない、こたろうを誘うしかない。タダだから来るだろう。
こたろうは基本的に他人に無関心だが、初対面の人でもそこそこ会話は出来るし、爪の先まで草食系なのでこういうときは害がなくてよい。女性に関心が無いわけではなさそうなのだが、以前
「コンテンツの薄い女は嫌い」
と、オタクらしい発言をしていて吹いた。
僕はオトナゲがないので、飲み食いは好きな人たちとだけがいい。男性女性問わず、お酒が入るといきなり距離を縮めてくる人は特に苦手で、初回から身の上話とかされるともう苦行でしかない。あと、色々と聞かれるのも面倒なので、スマホは機内モードにして絶対テーブルに置かない。電話番号を聞かれたらスマホは自宅に忘れたSNSなど他の連絡ツールはないと伝え、相手の番号をメモしてもらって帰ってすぐさま捨てる。一度、行きつけのbarで待ち伏せされるという怖い思いをしたことがあったので、徹底して些細な情報も漏らさない。

ウーロンハイをオーダーする。気乗りしない飲み会では薄い酒で十分だ。
一次会を解散して、家に帰る体でいつものBARに立ち寄るシュミレートをすると二時間くらいなら持つ。笑顔で適当に相槌を打っていれば誰も不幸にならないという大人の振る舞いは最近になって漸く覚えた。
僕の左隣には服装も地味目で大人しそうな女性、その隣にこたろうなのだが、なんか割と盛り上がっているのが気になる。
自分の右隣の女性がトイレに立った際、僕はメニューを見るふりをしながら左側二人の会話に耳と脳の神経を集中させた。

「俺なら引き出しの取っ手にガム。噛んだやつ。」
「私は嫌いなお客さんの来社時には100℃のお茶だします。あと、同僚の子は上司のお茶の上で雑巾絞ってましたよ。」

静かな復讐方法で恐ろしく物騒な盛り上がり方をしている


#最近の学び #自分にとって大切なこと #ゆるく生きよう #コント部 #エッセイ #合コンとか #気乗りしない飲み会 #僕なりの幸福論

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