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「はじめてシーシャ屋さんに連れて行ってくれた人」-沼の話

【二人目】
Nさん(26歳) 
沼との出会い:マッチングアプリ 沼期間:半年

証明写真なのにこんな顔タイプなことある⁉

沼の話かぁ。大学三年生の時の話にしようかな。

その沼とはね、マッチングアプリで知り合ったの。当時私が20歳で、沼は24歳だったかな。広告代理店で働いてるって言ってた。プロフィール画像が証明写真でね。あんなのに釣られて悔しいなぁ。でも証明写真なのにこんな顔タイプなことある!?️ってくらいかっこよくて。マッチしてすぐ「会いましょー」って私から誘った。

私が誘ったのに、行く場所は沼が決めたの。「大須観音駅集合ね」って言われて駅で待ってたら、向こうから沼が歩いてきた。実物も写真通りですっごくかっこよかったの。仕事終わりだったのかな、スーツで来てね。大学生の時って、スーツ姿に憧れるよね。姿勢が良くて歩き方もきれいだったの。私に気づいて、ろくに言葉も交わさずに「行くよー」ってスタスタ歩いて行っちゃって。早速、相手のペースにもっていかれた。完全にやられたよ。

言われるがままどころかついていくだけ

それで、どこ行くのかもわからないままついて行ったのが大須のシーシャ屋さん。シーシャを吸ったのはそれが初めて。シーシャが終わったら、またどこに行くのか聞かされないまま「行くよ」って今度は真っ暗なバーに連れて行かれた。立体駐車場の一角にあるバー。よくあんな場所知ってるよね。どこ連れてかれるかわからないことにドキドキした。吊り橋効果だよね、あれ。バーを出た後、一緒にタクシーに乗ってホテルに行った。完全に言われるがまま。言われるがままどころか、何も言われなかったね。ただ沼についていくだけ。

セックスはね、めっちゃよかったよ。でも今思えば、私の経験が浅かったから、良く思えただけだと思う。そんなに丁寧だったイメージはないなぁ。やっぱり上には上いがるじゃん。そこらへんは上書きされてるね。今沼と寝たらブチギレるかも。でも、当時の私は沼のこと好きだったから夢中だった。だいたいさ、好きな顔が目の前にいるんだよ、そりゃいいでしょう。

全部沼のペース、それが心地よかった

最初に会ってからは、連絡も頻繁に取ってたし週1−2くらいで会ってたかな。だいたいシーシャ屋さんに一緒に行くか、私の家に泊まりに来る。会うタイミングは全部沼が決めるの。「今日栄で飲むから夜家いくね」とか。そういえば沼ってどこに住んでたんだろう。

絶対私以外の女の子とも遊んでたと思うけど、気配を感じたことはなかった。私と遊んでる時もよくスマホ触ってたけど、他の女の子の存在はわからなかった。隠すのが上手だったんだと思う。一回、相手のスマホでYoutubeの割と長い動画を一緒に見たんだけど、一件も通知来なかったもん。切ってたんだろうね。

その年はクリスマスにも会ったよ。沼が「たこ焼き食べたい」って言い出して、うちたこ焼き器無いよって言ったら、じゃあ買うかってドンキに連れて行かれて、たこ焼き器と材料を沼が勝手に買ってさ。家に帰って途中まで準備したんだけど、「作る前に飽きた」ってやめちゃったの。でも準備しちゃったし、やるしかなかったから私が作ったよ、たこ焼き。

沼はね、私のこと騙そうとか、沼らせようとかは思ってなかったと思う。「好きだよ」なんて言われたことないし、いわゆる思わせぶりな態度も取られたことない。ただただ私が勝手に沼ってただけ。その人のペースの中にいるのが居心地が良かったな、振り回されたかった。いつもドキドキしてたの。当時は付き合いたいと思ってたけど、あれがただの性欲だったのか依存なのかわかんないや。

LINEをブロックされても、なんとか関わりたかった

ああいう人には好きって言わない方がよかったんだと思う。好き好き言ってたら連絡頻度がわかりやすく減ってった。好きって明言されちゃうとさ、返事出さなきゃいけなくなるでしょ。逃げようかな、潮時かなって思うよね。

いつの間にか既読がつかなくなって、あ、これブロックされてるなって気づいた。最後に私の家に泊まった時にね、沼、冬物の上着を置いていったの。また取りに来るだろうと思ってたのに来ないままブロック。あの上着、しばらく取っておいてたけど捨てたなぁ。

LINEブロックされたあとも、会いたくて会いたくて我慢できなくて、よく連れてってもらってたシーシャ屋に一人で行ったの。沼はいなかったんだけど、店員さんがいい人でね、一人できた私にめっちゃ話しかけてくれて、その時シーシャ屋っていいなって思うようになった。今でもシーシャは好きだよ。 

しばらく通ってたら、ある日沼がお店に来たの。えっ、いるじゃん、水曜日にきてるんだ!ってわかって、次の週も水曜日に行ってみたらやっぱり沼が来た。その時は向こうもわたしのことを認識したみたいで、思いっきり背を向けられた。ブロックされてるのに会いにいくのって頭おかしいよね。でもとにかく顔が見たかったの。なんとか関わりたかった。今振り返ると自分が怖い!若かったな〜じゃ済まないよねこれ。

「遊んでくれます?」「うんー」

ブロックされて3ヶ月くらいして、会いたくて諦めきれなくて「おひさです」って沼にLINEしてみたら返事がきたの。その前に送ったLINEは既読無視のままだったから、その時だけたまたまブロック解除してたのかなぁ。あ、当時のLINEの履歴残ってたよ。

N「おひさです」
沼「です」
N「最近忙しくしてますか?」
沼「今日暇なの?」
N「沼は?」
沼「暇だけど」
N「遊んでくれます?」
沼「うんー」

で、また大須観音駅に呼び出された。そのへんのホテルに行ったのがほんとに最後。そこからまた既読がつかなくなった。それでも何回かLINE送ってたな、私からブロックできないあたりだめなんだよね。

今思えばさ、好き好き!ってだけいって、付き合いたいって言わないのも怖かったのかな?ブロックしてもLINEしてくるし、よく行く店に会いに来るし、沼通り越してストーカーじゃん。怖かったよね、わぁ怖い思いさせてごめんね沼!

脱沼したと言うよりは強制終了

沼ね、最近結婚したんだって。名古屋のシーシャ界隈ってみんなツイッターで繋がってたから、沼がよく行くシーシャ屋のフォロワーを全部見て、沼のアカウント探したの。特定してからずっと見てた。途中から鍵垢になっちゃったんだけど、他の人が送ったリプは見れるから、「結婚おめでとう!」ってリプがたくさん来てるの見た。

こないだシーシャ屋行ったら、沼を見かけたの。「いる!気まず!!」って思っただけだった。ほんとに終わり。沼を脱した、っていうよりは、向こうから脱せられたって感じ。強制終了だね。

ドーナツの子の沼の話、読んだよ。私ね、あの子みたいに「ひなたを歩きたい」って思ったことない。夜中に家にきてくれる、夜ご飯だけ食べてホテルいく、それで十分だったもん。会ってる間超幸せだった。セフレでいいからずっと遊んで欲しかった。

最終的には、好きだって言ってもなぁなぁにされた上にブロックされたし結婚してるけど。それでも幸せな思い出。会ってた期間は半年か、楽しかったからめっちゃ早かったな。引きずった期間の方が長いからね。

結局、私を騙す人が好き

沼って、沼がこっちむいたら沼じゃないの。彼氏に沼るとかたまに言う人いるけどさ、ちがうよね。それは溺愛じゃん。沼なんて汚い言葉で表現しちゃいけないよ。沼ってもっとこうズブズブしてる。汚ねぇ感情。

沼ってた時にね、優しくて素敵な人が好きだって言ってくれたの。かっこよくて誠実で、将来のために勉強も頑張ってた。でもまったくときめかなかったからお断りしたの。なんであの人がだめで、沼みたいなクズばっかにときめいちゃうんだろう。でもしょうがない、そういう人が好きなんだと思う、私。

結局、私を騙す人が好き。モテそうな雰囲気の人。でもさ、余裕のある人って素敵に見えるけど、私みたいに好き好き行ってる奴がまわりにいるから余裕なんだよね。私も一回でいいから誰かを沼らせてみたいよ。そしたら余裕持てるのかな。

溺れてる人がいてはじめて沼がうまれる

今はもう大人なんだから、沼り沼らせとかじゃなくて、人間として人間と関係を築くのも大事だなって密かに思ってます。でも、育てるのは無理だなぁ。完成品をくれって思っちゃう。クズって楽なんだもん。

今は沼はいないけど、沼体質自体は脱していない。私はまた同じことを繰り返すんだろうなって気持ちは抜けないな。変わってないもん私。どうやったらこの体質をやめられるのかわからない。もう沼りたくない!って思うんだよ。でも、めっちゃ幸せだよ?沼って。会えない間は苦しいけど、定期的に会えてる時はずっと幸せ。幸せのよくわからない物質がずっと脳から出てるんだもん。

ここまで話してて、自分にも責任があることに気づいたよ。被害者ヅラするのやめよ。沼ってさ、沼だけだと成り立たないよね。溺れてる人がいてはじめて沼になるの。わたし、自分から溺れに行くからね。泳げないのに。


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