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【読書記録】布団の中から蜂起せよ(高島鈴)

あなたがこの本を必要としなかったとしても、この本はあなたのためにできている。いわば本書は、一方的にあなたを待っているのだ。

(作中より引用)

この本の言葉は、どれも重く響く。

それが受け取り手にとって
良い事だろうが、悪い事だろうが
どうやったって響いてしまう。

読者の中の深いところに共鳴して、
この本を読む前の人間とは
別の何かに変えてしまう。

本書を開いて、序章のわずか見開き2ページで
痛感させられ、私の危険を察知する部分が
警告を鳴らすのがわかった。

これはとても怖いことだけれど、
そしてとても危険を孕んでいるけれど、

同時に抗えないほどに魅力的であり
既にこの本に自分にとっての救いも見出しており、
私は強制的にアラートをOFFにして
ページをめくり続けた。


アナーカ・フェミニズムを掲げる著者の
思想は、とても過激で刺激的。
それを言語化している文章も決してハッピーなものではなく、攻撃的で怒りを感じる。
(読者へ、ではなく 社会などへ、の怒り)

「私はここまで出来ないわ…」
「そんな風に考えたことは無かった…」

と他人事のように遠くから眺めてしまう部分も少なからずあったけれど、下手に理解したふりをしても何も生まないし、私は著者じゃないからそれで良いんだと思う。


このように思想を文章という形にして
それが本になって、多くの人に読まれる。
それって考えてみれば結構リスク……💭

そのリスクを負って、自分の思想を開示して
声高に強気で語っているという事実に
尊敬するし、そのお陰で自分とは違う思想を
知ることが出来たのだから、感謝したい。

すごく勇気がいることだと思うし、
自分の内面を何度も見返し
自分の外の社会の問題にも目を凝らし
その結果でこの作品が生まれたことを
シンプルに凄いな、と感じた。


そして、この文章。
何度も何度も反芻して、
伝えにくい微妙なニュアンスも 完全に、とは
言わないまでも なるべく誤解なく伝わるように
と丁寧に紡がれている。

ここまで言葉にできるって凄い。
世の中にある均一化された分かりやすい言葉ではなく、高島さん自身の言葉で紡がれる言葉たちは説得力を伴って、すごく魅力的。

内容や文体が過激だったり
思想が強かったりする所もあるので
好き嫌いがハッキリ分かれる作品だと思う。
私は彼女のすべてに賛同する訳では無いけれど
この作品は好きだし、確かに読んで救われた。

ヘルジャパンを生きよう、と思える力強い一冊。

私が結婚を嫌がるのは、国にプライベートな関係を申告して承認を得る行為の気持ち悪さに加え、家族の再生産が可能であると見做しうる関係性にのみ社会的特権を与えるそのシステムが気に食わないからである。

生きていることは苦しい。変わらないこの世が憎い。しかし何の力もない。そのようなわれらが、ばらばらに生きて、ばらばらに抗う。この蓄積が、必ず巨大な「変わり目」を生み出す。私はそう信じている。

性格、ジェンダー、思想、全部毎秒更新されうる。その幅を加味して、どんな相手とも「人間」として向き合うのが当たり前になればいい。揺らぐのも揺らがないのも個人の自由だ。誰もさまたげるべきではない。

(いずれも作中より引用)

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