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やりがいだけではメシは食えない

NPOで働く人が低賃金、長時間労働、雇用環境などを理由に、今まで社会課題解決を目標に情熱を持って頑張ってきたのに、プツンと糸が切れたように燃え尽きてしまい、今までの活動とは全く違うフツーの会社に戻ってしまうというケースが後を絶たない。私がこの業界で働き始めた9ヶ月という短い時間の中でもそうした人を目の当たりにしてきた。その度に、苦虫を噛み潰すような悔しい思いをしてきた。「せっかくあれだけの決意をして、この世界に飛び込んできたというのに、どうしてまた戻っていってしまうんだろう……。」仲間が一人、また一人といなくなってしまうのはとても辛く、どうしようもないやるせなさに襲われる。

NPOでの仕事は、やりがいだらけだ。やりがいしかないと言っても過言ではない。社会の役に立っている実感も、人と人との温もりも、地域や国が抱える問題を背負って立てるということは、この業界特有の素晴らしさ、働く意義と言ってよいだろう。だけど同時に、やりがいだけではメシは食えないということは紛れもない事実だ。私がそれを一番肌で感じている。証券会社で金を稼ぐことに特化して、ひたすら己の懐を肥やし続ける為に働くことは、どうしても性に合っていなかった。ただそれが生きる為に必要な行為だったからだ。そこから一転してNPO業界で働き始めて、確かにやりがいは得られるようになったが、良くも悪くも自分のお金を稼ぐということにヒリついている人がなかなかいないのも、これまた事実だ。

そもそもNPOが扱っているテーマはマネタイズしずらい。マネタイズできるなら、株式会社がとっくに手を付けているだろうし、そうした営利事業の間に生まれた歪みをほどくのが本来のNPOの役割だ。受益者からはお金を取れないことが多く、第三者的な立場にある寄付者にお金を出してもらうことで初めて事業が成り立つ。より多くの共感を得られるテーマの方がもちろん寄付は集めやすいだろう。寄付を集めるには、人の機微や、細やかさに気付ける力がなくてはならない。寄付も人がお金を出すという点においては、消費者がモノやサービスを購買することとなんら変わらない。寄付を消費行動と捉えるならば、これは明確にマーケティングだと考える。

そして日本の寄付市場そのものは間違いなく成長市場だ。日本の個人寄付総額は年間1兆円にも満たない。だいたい8000億円くらいと言われている。日本ファンドレイジング協会が掲げる10兆円市場がもし本当に来るとするのならば、単純に今より10倍寄付を集めやすくなるということだ。だからこそ、今、難しいことをやっていることから逃げずに、ファンドレイジング業界内の自分の立ち位置を確立しておくことが重要になってくる、はずだ。少なくとも現時点で私はそう感じている。2019年は寄付という善意から生まれる行動をいかに設計していくのか、感動の渦を巻き起こす為には自分にどんなことができるのかに挑戦する年にしたいと思っている。


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