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ボトムアップ科学技術12〜和田小六先生の科学技術とリベラルアーツ〜

こんばんは。一週間は本当に早いですよね。今日は雨が降ってしまったので家でゆっくりできるかなと思っていたのですが、夕方から授業があったことを思い出して慌てて移動しました。☔️
先週、振り返りとまとめを書いたので心機一転記事を書いていきましょう。

リベラルアーツをやっている人間が真正面から、そのことを書かないの?というご指摘も時々頂くのですが、あくまでどこかで具体的なフィールドや現実の課題との関連を持っていたいと思っています。だからリベラルアーツの定義として、②の定義があります。それを科学技術の分野でやっていこうとしているのがこの記事であり、僕のリベラルアーツだったりします。

LA①・・・古代ギリシャの自由七科のように学問や対話、より良い日常生活のために必要な能力(言葉、感性、統計・科学リテラシー、対話の能力など)

LA➁・・・自身の専門や職業、個性など自身に特有な見方、考え方を理解し、他者や社会と折り合いをつけながら、より良い方向へと用いる在り方とその技術

LA③・・・統合、総合知的な領域
日本リベラルアーツ協会

前置きが長くなりましたが、今回は工学教育の分野でリベラルアーツの源流を作った和田小六先生について書きたいと思っています。
和田先生は日本の航空工学者です。

長距離飛行の世界記録を打ち立てた航研機の開発など、東京帝国大学航空研究所長として日本の航空工学の発展に貢献した。東京工業大学学長、東京帝国大学教授、千葉工業大学3代目顧問などを務めた
Wikipediaより

ここで注目したいのは和田先生は東京工業大学の戦後の教育体制を築いた方なんですよね。日本の大学におけるリベラルアーツの祖として南原繁先生のお名前がよく上がりますが、今の東工大の大きな仕組みを作り、教養教育の大切さを認めたのは和田先生です。

1945年8月に太平洋戦争が終わると、9月には当時の学長、和田小六(1890-1952)のイニシアティブのもとに改革のための改革委員会「教育刷新調査委員会」が立ち上げられ、半年のうちに改革(のちに「和田改革」と呼ばれるようになる)が進められ、1946 年(昭和 21 年)4 月から新カリキュラムでの講義が開始された
岡田大士「東京工業大学における戦後大学改革に関する歴史的研
究」

改革で行ったことは2つで、専門領域ごとに細分化したセクショナリズムの是正、一般教育、教養教育を新設し楔形教育の礎を作ったことです。
楔形教育とは、大学1年から4年にかけて教養教育が減り、専門教育が増えると言う形で、現在の東工大でもこの形態をとっています。


くさび形教育 https://www.titech.ac.jp/public-relations/education/features/wedge-shaped

また、大学教育の意味についても検討していました。

我国ノ大学ハ職業教育ニ近キモノガ大部分デアッテ、此点ハ大學ノ性格トシテ再検討サレナケレ バナラヌ。国家最高ノ智能ヲ集メ真理ノ追求ヲ目途トシ、學術ノ蘊奥ヲ研メルト共ニコレラ學生ニ授ケ国家最高ノ智能ヲ養成スルノガ大學ノ目的デアッテ単ナル職業教育ハ専門學校ノ仕事デアル。
直筆ノートより

この話は近年の大学にも通じる部分があるでしょう。近年実践的人材が大切とか、L型大学なるキーワードも叫ばれていますが、大学はどうあるべきか常に論争があるのだなと思います。

記事を紹介するのは最後にしますが、和田先生は東工大の70周年記念式辞でこんな言葉を残しています。

技術者により高い理想とより広い視野とより深い認識を与え,その知的道徳の円満なる完成を期することあるのでありまして,それは, 技術を志すものに「どんなことがやれるか」ということを教える以上に「どんなことをやらなければならないか」ということを教えんとするものであります。
私は職工学校時代より受けつがれました本学の実践的の伝統を今後,深くヒュマニティに基礎を置いた人間的人格的教養の上に育て,本学を巣立ち行く技術者によって来るべき新しき時代,この 20世紀の後半がリュイス・マムフォードの言葉を藉りますならば「暮れ行く機械の時代の最後ではなくして,むしろ明け行く真の人間の時代の始め」となることを心から念願して罷まぬものであります。
和田小六学長,東京工業大学70周年記念式典式辞の一部

技術ができることをただ、実装するのではなく、どんな必要性に応じて技術を用いるのか?が大切であり、それを深く考えるために高い理想と、広い視野、深い認識が大切だと説いています。
それこそリベラルアーツの領域ですよね。

まだまだ、和田先生のお考えを全て理解できたわけではありませんので今後とも研究していきたいです。「一般教育と専門教育」と言う論文も発表されているようです。

東工大の博物館のnoteも和田先生に触れているものがあるので紹介します。


この科学技術と教養のあり方を学びに東工大に入学したのでもっと色々研究したいと思います‼️

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