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福岡伸一さんに訊く、学びを血肉化させるための読書術

日経新聞に毎週土曜日掲載の『半歩遅れの読書術』というコラムがあります。

各界で活躍している人たちが、各人各様の読書術を開陳する、そんな場なのですが、世の中には、いろんな本の読み方があるのだなあ、と毎回、いちいち感心したり、驚いたりしながら読んでいます。


直近だと、昨日の土曜日に「哲学書 読み方は『遅い者勝ち』」と題して、哲学者の野矢茂樹先生が執筆されていました。

哲学書を読むにはまず速やかにその世界に入り込み、次にどれだけ遅く読めるかの勝負となる。すなわち、まずは全体の枠組みを理解し、そこからさらに深いところまでたどり着くには書物との(批判的な態度も持った上での)対話が必要だ、という趣旨の話をされていました。

その際、記されていた「遅い者勝ち」という表現に心を持っていかれ、しばらくの間、この文章を何度か脳内反芻&味読しておりました。


さて、今日、書こうと思ったのは、そんなコラムに以前連載されていた生物学者の福岡伸一さんの文章について。その中に以下のような記事がありました(2016年11月13日付日経新聞、福岡伸一氏)。

以下に、その一部を抜粋。


読書のひとつのコツとして「専門家が、優秀な学生・生徒を前にして行った講義録を読む」ことを今回も提案してみたい。講義録は、著者が自ら学んできたことを惜しげもなく開陳してくれる場である。
同時に、どれほどのプロフェッショナルであっても、相手が超一流の頭脳を持つ若者となれば、自分のすべてを使って講義をするから、内容は必然的に精錬・充実したものになる。
ひとりの個人の勉強史に触れる経験は、ネットの中にはおいそれとない。やはり本の中にこそある。なぜなら、本の中には時間軸があるからだ。


これを読んで「なるほど!」と思いました。考えてみれば私(鮒谷)も過去に「専門家が、優秀な学生・生徒を前にして行った講義録」は、たくさん読んできましたが、確かに実際に面白く、惹きつけられるものが多かったのです。

講義録が書籍化されたものの中で、専門外の人間(=私)にとっても面白く、有益で、学びになると思った、たとえば以下のような本は自分のメルマガでも過去、紹介してきました。


<脳を鍛える (東大講義 人間の現在1)>

<進化しすぎた脳>

<海馬>

<現代の地政学>

<君たちが知っておくべきこと:
 未来のエリートとの対話>

<松井教授の東大駒場講義録
 地球、生命、文明の普遍性を宇宙に探る>

<東大駒場連続講義 知の遠近法>

<それでも、日本人は「戦争」を選んだ>


福岡伸一さんの指摘によって初めて気づいたのですが、たとえば、これらの本がいずれも面白かった理由は「専門家が、その分野を専門に学んできたわけではない若者を前にして行った講義録」だったからなんですね。地頭の良い、若い世代の人間に対して、自らが修めてきた学問の成果を、分かってもらうために、難解な術語を用いずに、全力で伝えるのですから、門外漢の私にとっても興味を惹きつけられるに決まっています。


また「ひとりの個人の勉強史に触れる経験は、ネットの中にはおいそれとない。やはり本の中にこそある。なぜなら、本の中には時間軸があるからだ。」という一文にも痺れました。

ネットで何でも調べられる時代になり、情報や知識のつまみ食いをすることは容易になりました。しかし、当該テーマの広範・豊穣な文脈、背景そのものを捉え、一定以上のレベルでの理解をしようとするならば、その世界にどっぷりと使った人からの話を聴ける環境に、どっぷりと浸かる必要があるに違いありません。

もし、それが許される環境にないのであれば、擬似的に、そうした講義の記録が書き起こされた、一定量以上の活字に、どうしても触れる必要があるでしょう。たかが数百文字、ないし数千文字程度で、一つの分野における文脈や背景を理解することはできないからです。


特に何らかの分野において、全体構造を掴みつつ、ある程度までの、個別具体の知識までを得ようとするならば、何十本もの「ライトな」断片情報に目を通すよりも「どっしりとした」という形容が正しいかどうかは分かりませんが、そのような骨太の感覚を持たせてくれる重厚な一冊の本を読み通したほうが、深いところで自分の血となり肉となるのでしょう。

こうした感覚はうっすらと、それはあくまで感覚的なものでしたが持ってはいたのですが、なぜそのような読書に意味があるのかというと、そうした本の中に(講師が、当該分野に対する学びに捧げてきた期間の)時間軸を感じていたからだったわけですね。

当時、このようなコラムに触れて、これまで通り、いや、これまで以上に「ネットでの情報収集」の時間を削ぎ落とし、「真に血となり肉となる読書」に時間を優先的に投入しようと決意させられたことを思い出しました。


せっかくの機会なので「専門家が、優秀な学生・生徒を前にして行った講義録」を探しましたので、以下に紹介いたします。とりあえず、全巻一気買い(!?)ですね。そこからパラパラ眺め、興味を持ち、読みやすそうなものから、順番に読んでいく。

中には、当然、分からないものや、興味をかきたてられないものも多々あるはずです。しかし分からなくてもいいし、パラパラ、数分、眺めるだけでもいいのです。そうした小さな、けれども何年にもわたる継続した取り組みが「将来のイノベーションの種」となり、いずれ芽吹いてくれることがあるのだから。

【人生もビジネスも「組み合わせの妙」でうまくいく】
https://note.com/funatani/n/n416c80f21d2c


下記が「専門家が、優秀な学生・生徒を前にして行った講義録」のご紹介となります。興味を持たれたものがあれば、手をとってみられてみてはどうでしょう。


『危機を覆す情報分析 知の実戦講義「インテリジェンスとは何か」』

『危機を克服する教養 知の実戦講義「歴史とは何か」』

『東大講義録 文明を解く I』

『東大講義録 文明を解くII ー 知価社会の構造分析』

『アウグスティヌス『告白録』講義』

『加藤周一最終講義』

『科学の科学
 〔コレージュ・ド・フランス最終講義〕』

『遺伝子が明かす脳と心のからくり
 東京大学超人気講義録』

『生命に仕組まれた遺伝子のいたずら
 東京大学超人気講義録 (file2)』

『遺伝子が処方する脳と身体のビタミン
 東京大学超人気講義録(file 3)』

『新訳 ソシュール 一般言語学講義』

『尾崎行雄・咢堂塾 政治特別講座講義録』

『書き文字から印刷文字へ
 活字書体の源流をたどる』

『アミューズメントの感性マーケティング
 早稲田大学ビジネススクール講義録』

『アインシュタインの東京大学講義録
 その時日本の物理学が動いた』

『解剖学の抜け穴─
 解剖学教室の講義余録から』

『山上敏子の行動療法講義
  with東大・下山研究室』


それからこんなものも。

『東大関連の講義録書籍一覧』

『京大関連の講義録書籍一覧』


他にはこんなのもありました。

『東京大学講義録』

『丸山真男講義録一覧』

『微生物学講義録』

『物理学講義録』

『代数幾何学 : 初学者のために』
 ※日本人で2人目のフィールズ賞受賞者数学者
  広中平祐京都大学名誉教授による講義ノート

『大学の理工系講義ノートPDFまとめ』


ご参考までに!

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