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プラネタリウムの暗順応|ふあんクリエイターの推理日誌

 暗い空間にいることが苦手で、暗さに打ち勝つ計画を考えていたところ、偶然たどり着いたのがプラネタリウムだった。なにかのついでに科学館を訪れる機会があり、併設されたプラネタリウムを発見。これだ、と思った。

 チケットを買った。ここから、緊張が始まった。

 上映までに少し時間があったことで、脳に余計な心配をする暇を与えてしまった。暗さに耐えられるか。館内の展示を見学しながら気を紛らわせてみるものの、控えている上映に気をとられ、心ここにあらず。本来なら展示に集中できるはずなのに。

 とにかく、このチャンスを逃すわけにはいくまい。入場開始まで何回かお手洗いに行き、気持ちを鎮めていた。

・・・ーーー・・・

 座席は自由だった。非常口真横の通路側の席で心身の逃げ道を確保し、そのときを待った。早く始まらないかな。わたしの不安は、ことが起こる直前に最も高まる。あぁ、早く始まらないかな。腕時計をチラチラ気にしながら、これからの挑戦がうまくいくことを祈った。あぁ、早く。

 そのときがやってきた。サアーっと闇が降りてきて、あぁ早く、が、あぁいよいよ、に変わり、からだに妙な力が入っていた。もう逃げられないぞ、と闘うような気持ちになっていた。


 そこで観た夜空は、想像をはるかに、はるかに(!)超えていて、どこへ行けばこのような景色に出会えるか考えていた。澄んだ空気のただよう高原か、登山をしたことがないからわからないけれど、山頂とか。海辺や、砂漠か。まだ踏み入れたことのない土地に、思いを巡らせていた。宇宙の奥行きを感じるような、満天の星空であった。こんなプラネタリウムがあるなんて。


 心が慣れてきたのだろう。見入っていると、当初の目的であった「暗い空間を克服する」ことは意識の外に追いやられ、「たのしむ」という心の眼が徐々に開かれてきたのがわかった。あぁ!と思った。この「あぁ!」は、平常心を取り戻す過程を冷静に感じられたことへの感動のようなものだった。


 上映後、次にプラネタリウムを観るときは非常口付近の席でなくともたのしめる予感がした。そしてそれは現実となった。

[つづく]

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