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Kurotei「デザインの力で参加したくなる大会に。」 | スマブラで作るヒト ver 1.2.0

どうも、fun2smashです。
「クリエイティブでスマブラ観戦を楽しく」をモットーに活動しているスマブラ観戦大好き人間です。

現在任天堂のゲーム「大乱闘スマッシュブラザーズ(通称スマブラ)」を使って、いわゆるesports的な競技として大会が開催される「競技スマブラ」が注目を集めています。

競技スマブラ(esports)は選手・プレイヤーの活躍あってのものなので、基本彼らが主役です。
しかし大会は彼らだけでは成立しません。大会運営・配信の技術スタッフ・映像エディター・撮影スタッフ・デザイナーなど様々なクリエイターが最高の舞台を作るからこそ、プレイヤーもそこで輝きたいと思うのではないでしょうか。

そんなクリエイターの方々にスポットを当て、fun2smash(私)が様々な質問をさせていただき、その内容をまとめたものが「スマブラで作るヒト」です。
アーカイブはマガジンにして随時追加していきますので、よろしければフォローをお願いします。↓


前編の記事に引き続き、デザイナーのKuroteiさんにインタビューしました。 前編では、Kuroteiさんの普段の活動や競技スマブラでのクリエイティブ活動、スコアボード表示ツールのBraceBracketについて伺いました。まだお読みでない方は、ぜひ下の記事をお読みください。

後編では、Kuroteiさんが担当された競技スマブラ大会の「西武撃」のクリエイティブのことや、競技スマブラやトーナメントにおけるデザインについてもインタビューしました。



西武撃について

- ではKuroteiさんが西武撃で担当したクリエイティブを教えてください。

7月に開催されたスマブラSPの大会「西武撃」
Kuroteiさんがクリエイティブ周りを担当した。

Kurotei :
ロゴをはじめとしてスコアボード、配信レイアウト、リザルト、サムネイル、トランジションなど全体的に担当させていただきました。
単純に「かっこいいデザインを作る」ということを目的にするのではなく、「大会を魅力的にして西武撃に関わりたくなるようにする」ことを目的に掲げ、クリエイティブを仕上げていきました。

上:西武撃のメインビジュアル。黄色を基調とした好戦的なデザイン。
下:各種クリエイティブ。スコアボードやリザルト画面などもKuroteiさんがデザインした。

また、見える部分だけでなく、色や書体、ロゴの配置ルールなどのガイドラインも制作しました。

ロゴの配置ルールや、使うフォントなどのガイドライン。


- ガイドラインはどういうところにこだわって作りましたか?

Kurotei :
今後自分が西武撃に毎回全力でコミットできるわけではないので、自分がいなくても「持続させられる」ことを意識してデザインを行いました。
1つのイベントのデザインというよりも会社のアイデンティティを制作するイメージで、カラーやフォントなどのデザインルールの策定を行なっています。色指定などは今までの大会にもあったと思いますが、使いやすい範囲のフォントを指定する、ロゴのマージンを指定する、などといった部分はあまりなかったのではないかと思います。

大会フォントは、Google Fonts源ノ明朝(Noto Serif)など
誰でも無料でつかえるものを採用。デザイナーへの引き継ぎがカンタンに。


- Kuroteiさんが西武撃のクリエイティブを担当するようになった経緯を教えてください。

Kurotei:
もともと大会スタッフ中心で交流するスマブラ大会制作勢窓で、デザインについて話したりアイデアを提案したりさせていただいていました。
ただ自分が大会のデザインを経験していないのに提案するのはフェアじゃないなと感じていたので、実際にデザインをやってみたい旨を伺ってみたところ、縁がありお手伝いをさせていただくことになりました。

てんぷらさんが作った「スマブラ大会制作勢窓」
大会制作についてのあれこれを交流している。運営以外の一般の方にもウェルカム。


- 相談をいただいてからのスケジュールを教えてください。

Kurotei :
大まかなスケジュールとしては5月末から6月中ばにかけてロゴのデザインとガイドラインを制作し、大会前の1週間で他のデザインを一気に仕上げました。

まず、「デザインがスマブラの大会にどういった影響を及ぼすのか」というスライドを作り、例を出しながらこれからどういうことを行うのかを知っていただき、そこから話し始めていきました。

そこから、西武撃さんの大会として目指すところや強みなどのヒアリングを行いました。
西武撃さんの強みとして自分たちで機材を保有しており長く継続できている体制があること、目指すところとして全国大会よりも関東のローカル大会のような形でありたいこと、選手に試合の機会をたくさん与えたいこと、そして安定した基盤の上で色々な試合形式の挑戦などをしていきたいことなどを伺いました。

ヒアリング後、西武撃さんとのやり取りでクリエイティブを3案制作しました。正直なところどの案になっても悔いはない良いデザインができたと思っています。下のものは制作中に作ったバリエーションの一部です。

西武撃のクリエイティブのために制作された3案。
最初Procreateでスケッチを行い、書体デザインツールのGlyphsで形を整えている。

A案は「セイブゲキ」という音のイメージを重要視した西部劇を意識した横長のもの、B案は同じくイメージを意識しつつもモダンな字形の省略を試したもの、C案は西武撃で今後色々なことに挑戦したいとおっしゃっていたことに応じて好戦的とも取れる激しい造形にしました。この中からC案をベースにしつつ、現在の形になりました。

西武撃さんとのヒアリングからクリエイティブに反映された部分は、「継続して開催できる体制」はロゴのA, B案に、「これから色々な挑戦をしていきたい」という部分がC案に出ているかなと思います。

ヒアリングした西武撃の強みや目標がデザイン案に反映された。

Cのような文字のデザインはあまり経験がなかったので、知り合いのデザイナーの方々にアドバイスをいただいたり、色々なデザインを参考にしながら何度も作り直しました。
Bは特によくできていたこともあり、今後行われる「西武撃Rising」のロゴに使っています。


- 実際にクリエイティブを担当してみて、想像したところと違った部分はありましたか?

Kurotei :
まず自分が想像していた以上に作る画面とデザインの数や対応しなければいけない状況の数が多いことです。BraceBracketで用意している画面の他にも、サムネイル、待機中に出す画像、名札のイラストを紹介するための画面、何かメッセージを出したい時のテロップ、エンディング、告知画像、ステージルール、Twitterに投稿する画像…などなど、普段見えている画面がほんの一部であることを改めて感じました。

また画面の「デザイン」だけでなく、どのように実装するか、運用するかと言ったことも考える必要があると感じました。配信担当者の方にいい感じに配置してもらう…といった曖昧な方法ではなく、OBS(ライブ配信ツール)の設定をどのように共有するかが課題です。
西武撃などではテキストで配置方法をまとめたマニュアルを作成していましたが、大会中は良いこと悪いこと含めてなんでも起こり得るため直接的に設定を渡す方法を模索しています。

デザインは大会を特徴づけるものではありますが、選手達のプレイを邪魔するものであってはならないと考えているので、デザイン自体が強く主張することはないようにと考えていました。それでも新しいデザインにコメントで反応してくださる方がいらっしゃりデザイナーとしてとても嬉しかったです。


競技スマブラとデザインについて

- BraceBracketや西武撃でのご経験から、 デザインやフォントは競技スマブラやesportsにどのような効果をもたらす(もたらした)と思いますか。

Kurotei :
スマブラ界隈においてデザインやエンジニアリングはまだまだ活躍できる余地があるように見えるので、BraceBracketによって、より大会の運営や配信を手軽にかつ個性を持って行うことができれば、大会の魅力も増して運営側に興味・関心を持つ方も増やせると感じます。

フォントはデザインの中でも印象を大きく変える要素ではありますが、正直なところスマブラの大会において書体を選ぶことはあまり浸透していないようなので、大それた話ではありますが、自分も啓蒙していくことで書体がよりスマブラ界隈のデザインに浸透していくことを期待しています。

自分が周りのesportsのデザイナーや篝火のクリエイティブをみて、スマブラのデザインに参入したように、自分の活動によってスマブラの大会のデザインがやりたいと思ってくれる人がいたら良いな、と思います。


- デザイナーやエンジニアリングはどのような場所で活躍できると思いますか?

デザイナーについては、大会にデザイナーが入るという形はまだまだ主流ではないように見えるのでデザイナーはたくさん活躍できると思います。

競技スマブラにおいては多くがボランティアによって運営されているので、esportsとデザインに興味がある学生さんなどが参入して経験を積むには良い環境なのではないかと思います。
プロのデザイナーがディレクションをしながらアマチュアのデザイナーが作り上げていく、といった形式が理想かもしれません。

エンジニアリングに関しては、「SmashPowerLogger」などの戦績記録ツールや、配信に使えるツールなどは個々人で開発されている方をたまに見かけています。

スマブラSPのオンラインレーティング機能の「世界戦闘力」を
スクショをTwitterに投稿するだけで手軽に記録できるSmashPowerLogger

一方で、大会運営や配信管理といった裏側の部分では、主催者様やスタッフの方々のマンパワーで何とか行われているところも多いように見えます。大会制作窓によって知見の共有ができるようになりましたが、さらにそこにエンジニアリングが加わり分業が進めばより大会が開きやすくなったり、今まで人の手に頼っていたところを少人数で解決できて他のクリエイティブやチャレンジの部分に人を回せるようになるのではないかと思います。

とはいえ、そういった分業化が進むということはすなわち属人化が進むということでもあるので、作った技術をどのようにあらゆる人が使えるようにするかは考える必要があると思います。BraceBracketはその点ブラウザ上のツールという形になったので割と使いやすくできたかなと。

fun2smashもスマブラ大会で何かを作るということをオススメしています。(宣伝)


- Kuroteiさんがよいデザインと思ったスマブラ大会を教えてもらえますか。

Kurotei :
スマブラだとこの間行われたCEO, Phantomのデザインは結構好きですね。
Phantomは試合直後に数秒ではありましたがリプレイと共にStatsが表示されていたり、いろんな画面のレイアウトがあって面白かったです。抽象化されたステージアイコンは流石に名前を入れた方が良さそうでしたが…笑

上:アメリカのアトランタ州で開催された「CEO 2022」
下:オーストラリアのシドニーで開催された「Phantom 2022」

あとGenesisのカチッとした固まりきっているアイデンティティもいいですし、BraceBracket自体のデザインは割とMainstageRiptideの影響を受けています。

上:アメリカのカルフォルニア州で開催された「Genesis 8」
下:アメリカのカルフォルニア州で開催された「Mainstage 2021」

英語圏の大会は欧文フォントの選択肢が多くて羨ましくも思います…あと、VGBCさん(アメリカのスマブラの配信専門集団)の配信フォーマットはリプレイの再生が進化していたり、試合後のコメントの挿入がスムーズにされていてすごいなと感じます。

スマブラ外だと、Vtuber最協決定戦はイラスト、デザイン、映像が全て噛み合っていて理想の形だと感じています。自分がスマブラの大会をやりたいと感じた原因の一端でもありますし。

VTuberの間でApex Legendsが盛り上がることを
目的としたオンラインの大会 「VTuber最協決定戦」


- スマブラコミュニティでの制作について、知人や他のデザイナーの反応はありましたか。

Kurotei :
自分が主に入り浸っているKENメンバーの方々が反応してくださったり、他のesportsのデザインを行なっている方が反応してくださったり、また他のゲームのesportsシーンを見ている兄弟が反応してくれたのが嬉しかったです。
知り合いのデザイナーの方々も会話の過程で話に出ることも多く、案外見ていただいているんだなと嬉しくなりました。


- 最後に、今後スマブラでのクリエイティブ活動でやっていきたいことがあれば教えてください。

Kurotei :
篝火さまのように毎回クリエイティブに力を入れられているフラッグシップの大会も素晴らしい一方で、定期的に安定して開かれる大会も価値があるので、そういった大会にデザインで少しでも貢献していけたらと考えています。

先日行われた大会「仁義#1」でもロゴに合わせて配信周りのカスタマイズを担当。
※ロゴをデザインしたのはおすしっくすさん。

特に自分はBraceBracketというスコアボードツールも制作しているので、大会ごとにカスタマイズしたデザインのBraceBracketを導入するという形で貢献できるのが理想です。一方で、自分が書体デザインという特異な分野を専攻しているので、その辺りの知見も共有していきたいと考えています。



以上でインタビューは終了になります。
競技スマブラやesportsへのクリエイティブの重要性や、それを作り上げるためのクリエイターが何をしているかということが少しでも感じられたら幸いかと思います。

Kutoteiさんは質問内容に1つ1つ真摯にご回答いただき、ガイドラインなどの画像の掲載許可も快くしていただきました。制作の話を聞いていても実直で、完成度を高めるための進め方が素晴らしいと思いました。

最後に改めてBraceBracketのリンクを貼らせていただきます。Kuroteiさんの想いがつまったものになっていますので、大会を開催されたい方は是非一度お使いください。



私は普段スマブラ観戦にまつわることで、Twitterに画像を投稿したり、noteに記事を書いたりしております。自己紹介記事を投稿しているので興味がある方はこちらも是非ご覧ください。



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