見出し画像

037 ビニール傘から見える世界

みなさんはどんな傘を使っていますか。
私は傘を三本持っています。
ひとつはグレーの生地にピンク色の花が描いてある、楽しい雨天専用の傘です。
もうひとつは白地にベージュのしましま模様が描いてある日傘です。
さらにもうひとつは、水色に白い小花がさりげなく描いてある折りたたみ傘です。

どれも三年以上使っていて、とてもお気に入りの傘です。

--------------------

出社のときに晴れていたので傘を持って行かなかったら、退社の時に雨が降っていました。困っていると、会社の先輩が置き傘を貸してくださいました。(その方はたくさん置き傘をされていました)

「返してもいいし、返さなくてもいいから」
と言われました。

外に出て、ビニール傘を広げようとすると、しばらく使っていなかったせいか、ぱりぱりと音を立てました。
やぶけたらどうしよう…と思いおそるおそる広げると、穴ひとつなくて、きれいな透明色。傘の中に入って上を見上げると、なんだか空が明るく見えました。

水滴が落ちる音も、いつもと違うみたい。
いつもはぱらぱらぱら。
ビニール傘だとぽつぽつぽつ。
なんだか楽しい気分です。

傘にのっている雨の雫もきらきらと光っています。
私はついうれしくなって、足取り軽く駅に行きました。

電車から降りると、雨は止んでいました。
一時的な雨だったようです。

アスファルトから雨上がりのにおいがして、穏やかな空気。風も涼しいです。
でも、ちょっと残念。もう少し雨の中を歩きたかったな。
そう思って、家の100メートル前から傘をさしてみました。

電車に乗る前まで降っていた雨たちがすこしのこっていて、とてもきれい。
ビニール傘もいいな、と思いました。

--------------------


翌日、先輩に傘を返しました。
その時にこう言いました。
「電車から降りたら晴れていたけれど、傘をさしちゃいました。」
先輩は首を傾げて
「どうして?」
と訊きました。私は昨日の小さな感動を、どうやったら上手く伝えられるのかわからなくなってしまいました。ビニール傘から見える世界。聞こえる音。いつもと違っていて、もうすこしその世界にいたくて…ふむ…と考えて
「なんだかもったいなくて」
と言ってしまいました。すると先輩は笑って
「なんだそりゃ。やっぱり君は変わっているな」
と言いました。

こういうとき、私はふにゃふにゃと笑うことしかできません。
でも、いいのです。私が発見した世界なのだから。

次雨が降ったら、また行ってみたいな、と思います。
透明で水を感じる世界。


ビニール傘を買わなくちゃ。

今回も最後まで読んでくださって、ありがとうございました。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?