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020 窓辺で本を-ルピナスさん-

足元をみて歩いていると、何かに躓くことは少なくなるかもしれませんが、方向がこれで良いのかどうかわからなくなることがあります。

私はときどき、お店のガラスに映る自分を見て、姿勢がしゃんとしているかチェックします。思っていたよりも猫背になってしまっていることもあり、そういう時はたいてい何かにもやもやしている場合が多いです。

姿勢の良いおばあちゃんになりたいものです。

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バーバラ・クーニーさんの絵本『ルピナスさん-小さなおばあさんのお話』は一人の女性が強い志を持って生きていく姿が描かれた作品です。

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主人公のアリス(のちのルピナスさん)は、子どものころおじいさんと三つの約束をします。

・遠い国に行くこと
・おばあさんになったら海のそばに住むこと
・世界をもっと美しくするために、なにかすること

上の二つはアリスが自主的に決めたことですが、最後の一つはおじいさんから与えられた約束です。私は「もっと」美しくする、という文章が好きです。今が決してだめではなく、すでにある美しさも認めていることが読み取れて、素敵だなと思います。
アリスは、この約束たちを胸にさまざまな経験を重ねます。
良いことも悪いことも起こりますが、彼女は常に自分で考え、考えた結果を行動にうつし、最後にすべての約束を果たします。

このお話を読んで感じるのは、たくましさと覚悟。
アリスは生涯独身を貫きます。
友人らしい友人も出てこず、家族であるおじいさんも最初の方の二ページのみの登場です。
アリス以外に描かれている人物には名前がありません。みんな、エキストラなのです。
しかし、寂しさは感じられません。
それは、幼いころの幸せな記憶と大切な使命があるからかもしれません。

この絵本は、ストーリーの素晴らしさはもちろんですが、絵の美しさも楽しめます。
絵本の色調について最後に解説があり、それによると
「おじいさんとすごしたアリスの子ども時代は、心の奥まであたたまりそうなピンク」で、大人になって人生が進んでいくにつれて「ピンクに少しずつ青がまじってむらさき」になります。人生の後半は「青の世界」になり、病気の間は「冷たい白がかっ」た青、子どもたちが遊びにきたときには「ピンク色」になります。
主人公の感情や人生をルピナスの花の色で例えた、見事な表現です。

私は表紙の絵にも注目しました。
表紙の絵は三分の二が草原で、海も描かれています。海の先には高い建物が立つ対岸の街の影が描かれています。主人公のルピナスさんはちょこんと小高い丘の上を歩いています。
広い世界の中で、一人の女性が姿勢良く心持ち上を向いて歩いています。
家族がいても、友人がいても、決めるのは自分。
その人生を歩むのも自分です。
ときに「頭のおかしい」と言われても自分の意志を貫くこと。
ルピナスさんは、自分の選択に責任を持ち、孤独を受け入れる強さを持っています。

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次の連休は、景色の良いところに行きたいと思っています。
自然の中で、なるべく空がひらけているところ。
そこで、私も自分の「やりたいこと」をもう一度考えてみたいと思っています。
決まったら、歩き出しましょう。

何かに迷いがあるとき、『ルピナスさん』をぜひ読んでみてください。
元気がもらえます。
今、足元に広がる地面を踏みしめてどこまでも歩いていけそうな、そんな元気です。

今回も最後まで読んでくださって、ありがとうございました。

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おまけ

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