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112 私の本棚-白木蓮の季節編-

この冬の終わりにも白木蓮が咲きました。
ふっくらとした、やさしい花が春の訪れとともに咲きました。

今年の白木蓮と出会ったのは、三月のはじめ、お仕事へ行く途中でした。やや霞みながらもきれいに晴れた平日、木いっぱいに白いお花が広がっていました。
その白木蓮は、川沿いの道に並んでいる桜たちの中に二本だけ紛れているのです。毎年、桜よりも何週間か早くつぼみをふくらませます。

少し離れたところから見るせいか、白木蓮に気づく時はいつも満開です。
ふわふわと木を彩る白木蓮。今年も会えた喜びに頬がゆるみます。

そして、どんな状況でも春は訪れることの奇跡に毎回感動します。

白木蓮はいつからつぼみをつけていたのでしょう。
毎日通る道なのに(そして毎年咲くことを知っているのに)全く気がつかなくてちょっと損した気分。

そんな白木蓮がつぼみをつけるころから満開までに読んだ本たちをご紹介します。


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1 『旅の断片』 若菜 晃子著/アノニマ・スタジオ
さまざまな国を旅する著者の旅行記です。
リアリティある表現で、国の雰囲気、景色を味わえるだけでなく、そこに住む人々と出会ったかのような体験ができます。

建物、空気、道端で出会った花。旅番組では通り過ぎてしまうような、小さなその国らしさと出会えます。
印象的な言葉がこちら。

-こういう小さい花が咲いていることなんて車の中から見ているだけでは小さすぎてわからない。メキシコに来なければ砂漠にこんな花が咲いていることもわからない。もちろんわからなくてもいいのだけれども、私はそれをわかっていたいと思う。

「砂漠断簡」より

今はなかなか外出ができない状況ですが、本で海外旅行へ行くのも良いものです。


2 『習慣を変えれば人生が変わる』マーク・レクラウ著/ディスカバー・トゥエンティワン
自己啓発の分野で大変人気のある本です。テーマは「習慣」。
平易な文章で読みやすく、生きていく上で大切にしたいことが詰まった良本です。

「自分の人生に責任を持つ」や「自分の最も大切な価値観を把握する」など、書かれている内容は当たり前のことですが、それを自分が実行できていないことに気づきます。

文章量は多くないので、あっという間に読めますが、各項目の最後についているQuestionやExerciseの答えを考えていると、いつの間にか数時間経っていることもありました。その時間が自分と対話する時間になります。

これは、読むだけでなく考える本。自分の心を見つめる本と感じました。
新しい年度に向けて、自分自身を見直す良いきっかけが欲しい方はぜひ手に取ってみてください。


3 『去年の雪』 江國 香織著/KADOKAWA
数多くの登場人物が送る人生の一部を集めた小説。
ひとつひとつのエピソードは、短ければ5行くらいの文章でおわる、とてもささやかなものです。そのエピソード同士がどこかで繋がっているように見えたり、繋がっていないように見えたりします。

おもしろいのは、エピソードに出てくる登場人物がとても多彩なことです。
すでに亡くなっている場合もありますし、着物を日常で来ていた時代である場合もあります。現代で働く人の場合、子どもの場合…。100人以上もの人々の暮らし、思いが出てきては変わっていきます。

そしてたまに訪れる時空のゆがみ。

これらからわかることは、最初に書いた繋がっていないように見えるエピソードも、広い、非常に広い目で見れば、繋がっているということです。時代が違っていても、その場所で誰かが生きています。体を失っても存在することはあります。毎年降る雪のように、降っては消えていく人々の人生のかけら。今は消えて見えなくても、去年は確かにそこに雪はあったのです。

印象的な言葉がこちら。

-違う場所に行けば違う時間が流れている


だれかの物語でありながら、人ごとではない気持ちになるお話。
この本を読んでいる私のそばにもずっと昔に生きたひとがいるかもしれません。
それは怖いことではなく、安心することだと知った一冊です。


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4 『のどがかわいた』大阿久 佳乃著/岬書店
2000年生まれの著者がみずみずしい感性で書いたエッセイ集。
十代の女の子の繊細な思いや本の感想、詩の紹介と内容盛りだくさんです。
特に17歳で発行した、詩を紹介するフリーペーパーの内容はおもしろく、新たな視点と出会うことができました。

印象的だった文章はこちら。

-詩を読む。すると、雨がまた違ったように見える。同じ風景の中に、色や匂いの全く違うものを感じることになるはずです。読む前と”本当は”変わらないはずなのに。

「詩の効用」より


私の詩を読むのが好きな理由―考えるや思うまでもなく、ふんわりと感じていたこと-がそのまま言葉になったと感じるくらい共感しました。

詩人・詩集の紹介や詩の解説もあるので、詩を読んでみたいけれど、何から読んだらいいのかわからない人にもおすすめの本です。


5 『道なき未知』 森 博嗣著/KKベストセラーズ
先の見えない人生とは、自分の足で歩いて道をつくっていくこと。その中で起こること、生まれる気持ち、世の中のことについて、工学博士で作家の著者がきっぱりとした文調で語る一冊です。

わかりやすい文章で、読み進めていくと自分の中に新しい考えが増えていきます。

印象的な言葉がこちら。

-生きているうちは、どうしたって単純にはならない。決まりきった形にはならない。

「何者」かにならなければいけないと決め込んで焦っていたころの私に教えてあげたい一言です。

読み応えのある文量で、著者の趣味である手作り鉄道(!!)の写真も楽しめる本です。


6 『比べず、とらわれず、生きる』 桝野 俊明著/PHP研究所
住職、庭園デザイナー、多摩美術大学教授として活躍される著者が紹介する、禅の言葉と考え方をまとめた一冊です。昔から語り継がれてきた言葉の数々は、さっぱりとしていながらも優しさとあたたかみを感じます。

印象的な言葉はこちら。

-まったく独りになって考える時間をもってほしい。自分は独りであるという覚悟をもって生きること。その覚悟はとても美しい

「山中無暦日」より

上記のほかにも「水急不流月」「下載清風」など、心が洗われるような禅語たちと出会えます。意味がすぐにわからなくても、言葉そのものがもつ凛とした美しさを感じませんか。

追われるような日々に疲れた方は、この本を開いてみてください。
きっと、気持ちをほぐしてくれる言葉と出会えると思います。


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7 『ピアノ調律師』 M.B.ゴフスタイン著/現代企画室
まっすぐな性格の女の子デビーと世界一のピアノ調律師であるおじいさんが繰り広げるあたたかな絵本です。

両親を亡くしたデビーはおじいさんにひきとられます。
おじいさんは、デビーにピアニストになってほしいと願い、ピアノのお稽古をさせます。しかし、デビーが将来なりたいのはおじいさんのような世界一のピアノ調律師なのでした…。

印象的な場面はこちら。

(おじいさん)「やはりあの子にはこれ(調律師)より、もう少し良い仕事に就いてもらいたかったのです」
(ピアニスト)「人生で自分の好きなことを仕事にできる以上に幸せなことがあるかい?」

この場面で、おじいさんのこれまで乗り越えてきた苦労を感じとることができます。ここで言うおじいさんの「良い仕事」とはどういうものなのでしょう。名誉?給金?その両方かもしれません。そして、ピアニストであるリップマンが言う「良い仕事」は、「自分の好きなこと」でした。リップマンのこの言葉で、おじいさんは初めてデビーの夢を応援しようか…と思いはじめます。

子どもがやりたい仕事と親(あるいは親族)が子どもにやらせたい仕事が必ずしも一致するとは限りません。でも、親が子どもの夢に反対するのも、ひとつの愛情からなのだな、と思いました。そして、反対をしながらも、最終的には子どもが選んだ夢を心から応援する。そんな大きな愛情を感じる一冊でした。

線の美しさをあますことなく楽しめる絵も見どころの絵本です。


8 『野尻抱影 星は周る』野尻 抱影著/平凡社
星をこよなく愛する天文随筆家であり英文学者の著者が語る、星との思い出エッセイ集。
星についての考えはもちろんのこと、星になって空から地球を見下ろしている自分を書いたり、古今東西の星にまつわる作品を取り上げたりと、多角的に語っています。

印象的な文章がこちら。

-科学は宇宙の神秘を年ごとにあばくが、あばくそばから新しい神秘が加わる。星は永久に若く、みずみずしく、むろん美しい。

-私が死んだら行く星は、…やはりオリオンときめておこうか?


読了後、知人と電話で本の話をしていたら、知人もこの本を読んだことがあるそうです。
彼は天文学者を目指していたこともあるほどの星好きなので、感想を聞いてみました。

「これはね…共感の嵐だよ。書かれていることは、僕が星を見上げるときに感じていたことと似ている。こんな風に自分の気持ちを自分の言葉で表現できたらどんなにいいだろうね。今、夜空を眺めて心踊らせる人は、もしかしたら減っているかもしれないけれど、星が好きな人にはぜひ読んでほしいね」
とのこと。

私は星のことについては明るくないのですが、それでも視野が広がっておもしろく読めました。なにより、昔、今と同じ夜空の下でこんな考えを持っていた人がいた事実を知ることができるのがおもしろく、心豊かになることだなと感じました。


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いかがでしたか。
2月〜3月は、小説からエッセイ、自己啓発本、絵本も久しぶりに手に取りました。
気になる本はありましたか。

新型コロナウイルスで不安な日々。
休日も家で過ごす時間が増えると思います。

そんなときは本をひらきましょ。
本がもつさまざまな世界への扉を開けば、リビングにいながら豊かな心の旅へ行くことができます。

そして、どんなときも毎年白木蓮が咲いて春を告げるように、きっとこの状況も終息すると信じています。
早く明るい光の中へマスクをつけずに出られる日々が戻りますように。
すでに感染された方が一日も早く元気になりますように。

今回も最後まで読んでくださって、ありがとうございました。

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おまけ
読書のおとも①

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やっぱり紅茶。カップに入っているのは1.Edible Flower Tea です。
プレゼントでいただいて、お花を浮かべるなんてどんな紅茶だろう!と思いながらも、パッケージが素敵でなかなか開けられませんでした。

味は、すっきりしたスタンダードなダージリンティーです。
食用ビオラが春にぴったりで、見た目からもうきうきします。
休日のごほうびティーです。

2.MARIAGE FRERES のMARCO POLO
ほかの記事でもご紹介しましたが、やっぱりこの紅茶が好きです。
甘くはなやかな香りがお湯を注いだときから立ち上って、しあわせな気持ちになります。
うっかり茶葉を引き上げるのを忘れても、渋くなりにくいのも特徴です。
クッキーやチョコレートとよく合います。

読書のおとも②

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アロマポット。
普段は電気?のアロマフューザーやアロマキャンドルでアロマを楽しんでいましたが、ティーキャンドルをたくさん購入したので、アロマポットも購入してみました。100円均一ショップで購入したのですが、なかなかかわいらしくてお気に入りです。

ゆらゆらとゆれる小さな明かりに癒されますし、気がついたらお部屋がふんわり良い香りになるのもうれしいものです。


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