マガジンのカバー画像

ふむもくエッセイ

109
ふむふむと思ったことと、もくもくと感じたうれしいことを集めました。
運営しているクリエイター

#思い出

091 白い日にはお茶と音楽を

雲がたくさん出て空が白い日。 せっかくのお休みなのに、なんとなく外に出たくない日。 そんな日は家カフェしましょう。 どのお茶をいれるか、どの食器を使うかは気分次第。ひとつずつ選んでいくうちに、沈んでいた心がわくわくしはじめます。ケトルにお水を入れて、さぁお湯をわかしましょう。 お菓子があれば、もっとうれしい。(こういう日のためにお菓子のストックはいつも気にかけています。)音楽も選びます。しばらく新しいCDを購入していないのですが、今持っているCDたちでも、まだまだ飽きませ

089 空の上、空の下の人たちにごあいさつ

ずっと大切にしている手紙たちのなかには、もちろん年賀状もあります。 はじめて年賀状をもらったのは七歳。小学校一年生のときです。その頃から毎年こつこつと、だれかに年賀状を書いてきました。 プリンターを使ったり、スタンプやシールを使ったり、自分で絵を描いたり。 はがきという小さなスペースを工夫するのがおもしろくて、年賀状の準備は、ちょっとした楽しみでした。 -------------------- 年賀状を書くときに欠かせないのが住所録。 高校生の時に作ったものを今でも使っ

088 ニットのようなあたたかさ

さむさが厳しくなってきたので、プチ衣替えとしてもこもこのニットを出しました。 自分で購入して自分が着ていたニットなのに、出している最中に「あ、こんなニットあったな」と発見もあります。なつかしい人に久しぶりに再会するようで、なんだかうれしくなります。 ニットをあれこれ出していると、ほこりが立ったのか、突然目がしばしばとしてきました。思わず、ニットを持ったまま目をつむりました。 すると、あることを思い出しました。 それは、先日再会したとある女の子のことです。 -------

081 光を感じる青

自分の見たものや感じたことを絵にできたらどんなに素敵でしょう。 これは、私が常々思っていることです。 「写真」ではなく「絵」なので、完璧なリアルさがなくても、部分部分(例えば咲いている花の大きさなど)が現物と違っていても良くて、「絵」だからできる何か伝わるものが描けたらいいなと思います。 特に風景は常に変わり続けるものなので、心に残るものがあればそれを記憶のまま描けたらいいな、と思います。 -------------------- 以前、ポーラ美術館に足を運んだときに

072 ハウスヒストリー

日に日に涼しさが増して、お日さまもやさしくなっていきます。 この季節に歩くのがとてもすきで、お休みの日も仕事の日もたくさん歩きます。 外に出たときにすっとした冷たい空気が体に染み渡るのは、心地良いものです。 両親は実家を改修工事するそうです。 雨もり修繕と洗面所のやりかえをするそうです。 (庭の柵は叔父さんがペンキを塗ってくれるそうです) 「もう築三十年以上だもの」 母がそう言っていました。 三十年以上前。 私が生まれる前です。「私」という命すら誕生していません。 -

055 やさしさをどうぞ

朝、家のドアを開けたら、からりと乾いた風が体を包んで秋を感じました。 こんな風に、いつも次の季節は不意にやってきます。 そして、気温が下がるにつれてみかんが食べたくなり、みかんが食べたくなるとおばあちゃんのことを思い出します。 -------------------- 私のおばあちゃんのイメージは秋から冬です。 それは、いつも編みものをしていたからかもしれないし、おばあちゃんの好物がみかんだったからかもしれません。よく、どんぶりいっぱいの-汁が今にもこぼれそうな-うどんを

054 小さなまんが家だったころ

みなさんは、幼いころどんな遊びをしましたか。 私は両親共働きでしたし、兄姉とも年が離れていたので、ひとり遊びをすることが多かったように思います。 ピアノを弾いたり、シルバニアファミリーをしたり、カレンダーの裏にお絵かきをしたり、絵本を朗読したり。庭でしゃぼん玉もよく吹いていました。 ときどき兄や姉がひょっこりと遊びに参戦してくれて、オセロやドミノをしてくれていました。 その時は、なにがおかしいのかわからないような些細なことでも兄妹でけらけらと笑っていました。たとえば、庭に

043 ブルー・イン・ブルー

涼しくなってきたと思ったら、また少し暑くなったようです。 窓を開けて寝ていたら、明け方に暑くて目が覚めました。 私が目を覚まして「まったく」と思っていたら、それをフォローするように風が吹きました。それで窓を見たら外がなんだか青いのです。はて、と思ってベランダに出ました。 外は思ったよりも涼しくて、いちめんの青色。 ベランダから見えるビルも、向かいの白い家も、道路も青で染まっていました。 緑色だったはずの屋根も、自動販売機も、ポストでさえ青色に見えました。 そして、これは前に

031 夢の話、あるいは安心するということ

もう数えきれないくらい、毎晩夢を見ているのに、夢のことは「はてな」だらけです。 もう一度行きたいな、と思っても行けないですし、もう二度見たくない!と思う夢でも忘れたころに再び見ることがあります。自分の意思で眠っているのに、見る夢を選べないことがガチャガチャみたいでおもしろいと思います。 今回はそんな夢の話。 -------------------- 私の母は話を聞きません。 それはもう見事に聞かなくて、露ほどの悪意もなく意識をあちらこちらへ向けてしまいます。常に視線が他

028 名前が白詰草のようにきれいだったらいいのに

白詰草で花かんむりを作るのがすきでした。 きっちりではなく、ふんわりと編むと、白詰草同士が手を繋いでいるようでした。 -------------------- 私が自分の名前について考えるようになったのは、いつのころでしょう。 もう思い出せないくらい、うんと昔のことです。 私は、おそらく少し変わった名前をつけられた一人でした。 ものすごくめずらしくて、その名前は私以外にはまずいない、とまでは言いませんが、めったにいない名前でした。 読めない漢字を使っている訳でもなく、キ

027 ティーカップ・ストーリー

もくもくと広がる雲の下で、火曜日が始まりました。 今日は予定のないお休みです。うれしくて早起きをしました。 こういう日はいつものマグカップではなくて、ティーカップに紅茶をいれましょ。 「007 お茶の時間」という記事でも書きましたが、私は紅茶をはじめとするあたたかい飲みものが好きです。そのため、ティーカップもいくつか持っていて、そのどれにも思い入れがあります。今回はそのうちの二客をご紹介します。 -------------------- ⑴ Afternoon Tea の

022 花畑の思い出*ふむもくエッセイ*

古い椅子を見ていると、すこしかなしくなります。 なぜだろう、と考えてみました。 考えてもわからなかったので、次の日も考えました。 それでもわからなかったので、考えるのをやめてしまいました。 -------------------- 実家の近くには、小さな花畑があります。 広さは、うまく言えませんが(なぜなら入ったことはありません)、庭にしてはずいぶん広く、花畑にしては小さいくらいで、形は長方形。周囲はぐるりと背の低い格子状の柵が巡らせてあり、簡単な扉が付いています。扉は鍵

021 風鈴のおと*ふむもくエッセイ*

じわじわと暑い夏。 雨が降ればその後は少し涼しいのですが、しばらく経つと、またもわりと暑くなります。 実家に帰ると、することがなくてうれしくなります。 ただ畳の上に転がって天井を見つめたり(それをしていると、猫が畳に投げ出している私の足と足の間に入ってきます)、母が育てている植物や金魚をながめたり、枝豆をさばくのを手伝ったり。 実家では猫がエアコン嫌いなので、よっぽど暑いとき以外はエアコンをかけません。 そのため、防犯上は良くないのですが、実家は窓やらドアやらを基本開け