私は両親の老いを見て見ぬふりしてきました


私の両親は、いわゆるセルフネグレクトでした。

セルフ・ネグレクトとは、健康、生命および社会生活の維持に必要な、個人衛生、住環境の衛生もしくは整備又は健康行動を放任・放棄していること。

出典:『セルフ・ネグレクトの予防と支援の手引き』(東邦大学看護学部・岸恵美子)
  • 掃除をしない

  • 風呂にほとんど入らない

  • 食事はコンビニ弁当とファストフード

という生活を何年も続けていました。

息子である私は、もちろんそうした両親の状態を知っていました。
なんとかしなきゃなあといつも思っていました。

でも、結局何もしませんでした。

正直に言います。

私は見て見ぬふりをしていました。

  • とりあえず生きてはいるし、なんとかなるだろう

  • もう少し時間が経てば、生活リズムを元に戻して普通の生活を送るようになるだろう

  • 本当にやばいことになるまで、放っておけばいいだろう

どういうわけか、そんなふうにとても楽観的に考えていました。

見て見ぬふりを続けた結果


しかし、現実はそんなに甘くはありませんでした。

両親の不規則で不健康な生活は、少しずつ少しずつ両親の身体を弱らせていきました。

気付いた時には手遅れでした。
家の中はゴミだらけでどうにも手がつけられない状態になっていました。
両親は立ち上がるのにも苦労するようになっていました。

単なる言い訳


単なる言い訳でしかないのですが、私もまったく何もしなかったというわけではありません。

両親に家の掃除をしようかと申し出ました。
でも、「そんなことはするな。自分たちでできるから大丈夫だ」と言われ、まあいいかと思ってしまいました。

弟と「さすがにやばいよな。なんとかしないとな」と話し合いました。
でも、具体的には何も手が出せないままでした。

地域包括支援センターに電話で相談して、父にサポートを受けることをすすめました。
でも、父から「ちょっと考えてみる」と言われて、結局そのまま何もしないままでした。

両親が倒れた日のこと


ある日、実家に行ってみると、両親が倒れていました。
二人ともまったく動けなくなった状態で横たわっていました。

季節は秋。
上着がいるくらい肌寒い日でしたが、扇風機をつけたまま、半袖・短パン姿の父がリビングに倒れていました。

その横で、母も動けなくなっていました。
目は開いていましたが、焦点が合わっておらず、何を見ているのか分からない状態でした。

そして、救急車を呼び、両親を病院に運んでもらいました。
両親は、入院することになりました。

本当にぎりぎりのところでした。
あと1日、私が実家に行くのが遅かったら、最悪の事態になっていたかもしれません。
ぎりぎりのところで、救われました。

そういう意味では幸運でした。
九死に一生を得ました。

反省、そしてその後の自分


両親がそういう状態になってしまったことに対して、私は強く責任を感じました。

  • 両親が少しずつ弱っている姿を目にしながら、見て見ぬふりをしてしまった自分。

  • 仕事や育児で忙しいことを言い訳に、両親の生活の手伝いを何もしなかった自分。

そんな自分を恥じました。
あと一歩遅かったら、一生後悔するところでした。

その後の私は、これまでの埋め合わせをするかのように、両親のためにできる限りのことをしました。

  • 入院の手続き・必要な買い物

  • 退院後の生活の準備

  • 要介護認定の申請

など、自分の生活にあった仕事や育児などのタスクの優先順位を下げ、両親のために時間を使いました。

介護を「親孝行のチャンス」と捉える


「両親に介護が必要になったこと」

それだけ見たら、あまりポジティブな印象はないですよね。
でも私自身は、意外とポジティブにとらえています。

これまで両親のことを見て見ぬふりをしてきた自分を反省し、介護を通して親孝行ができるときがやってきたのです。

  • 近くに住んでいながら、ごくたまにしか会うことがなかった両親と毎週のように会うようになり、話をするようになりました。

  • 両親がよく分からない役所関係の手続きについて、自分に聞いてくれるようになりました。

遅まきながら、やっと両親に親孝行できるチャンスが巡ってきたということです。

私は40代で妻子持ちのサラリーマンです。
世の多くの方がそうであるように、仕事も家事・育児もそれなりに忙しいです。
介護だけに全力投球するわけにはいきません。

だから、自分の限られた時間をいかにうまく使うかを考えました。
自分がやるべきこと、介護のプロの手を借りることをしっかりと切り分けました。
介護に関する本を読んで、基本的な知識を習得しました。

そんな私が身をもって経験したこと・学んだことを、このnoteで書いていきます。
私と同じように、突然親の介護が必要になった人・介護と仕事の両立に悩んでいる人に、何か少しでも役に立てたらいいなと思っています。

今後ともよろしくお願いいたします。

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