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【ヒント】不安や不確実さの中にいられる能力

「ネガティブ・ケイパビリティ」という言葉を知っていますか?

19世紀のイギリスに生まれた詩人、ジョン・キーツが「不確実なものや未解決なものを受容する能力」を記した言葉です。

「できる能力」ではなく、「できない状況を受け止める能力」。
先がまったく見えない、すぐには答えを出せない、といった状況下で、支えになってくれる概念です。

あいまいなままでも生きていくために

あいまいなまま、というのは、暗闇の中を手探りで歩くような感覚に近いかもしれません。

現代に生きる私たちは、効率化やスピードを重視し、結論を急いでしまうところがあります。
ですが、世の中にはそう簡単には解決できない問題の方が、多くあふれているのではないでしょうか。

人間の脳には「分かろう」とする生き物としての方向(ポジティブ・ケイパビリティ)があり、そのおかげで文明が発達してきたとも言えます。
問題を早急に解決し、理解したいという視点は大切ですが、悩んだり迷ったりして、ウジウジする自分を疎ましく思わないためにも、宙ぶらりんな状態に耐える力は必要です。
立ち止まることで見える景色もあるでしょうし、思わぬ出会いや気づきといった豊かさをもたらしてくれるでしょう。

どうすれば身につくのか?

それでは、「ネガティブ・ケイパビリティ」という能力を得るには、どうしたらよいのでしょうか。

『ネガティブ・ケイパビリティ 答えの出ない事態に耐える力』の中で、帚木蓬生さんはこのように述べています。

「この概念の存在を知り、頭に入れて、耐え続ける態度をもつだけで、ネガティブ・ケイパビリティを身につけられる」

「身につけたい」という考えそのものが、せっかちで、無理に答えを出そうとしている態度なのかもしれません。
ですから、その場所にに留まって耐え、状況をよく観察しながら気づきを得る姿勢が、大切になってくるのだと思います。

嫌な日々もいつかは終わる

「ネガティブ・ケイパビリティ」は諦めることを意味していません。
今は変えられないとしても、やがて夜が明けて、東の空が明るくなるのを待つように、希望を見出す態度です。

デンマークの心理療法士、イルセ・サンさんが述べていることと、とてもニュアンスが似ているなと思います。

「今日が過ぎるのを黙って待とう。自分自身にやさしくしてあげて、よりよい日が来るのを楽しみに待とう」(Ilse Sand, 2020, p.80)

ひとりで耐えることは苦しくても、誰かがその苦しみをわかってくれたり、誰かとその痛みを分かち合ったりできれば、嫌な日々もいつか終わりを迎えるでしょう。
「ネガティブ・ケイパビリティ」には、対話や共感、寛容など、寄り添うためのヒントがあふれているように思います。

ある時は悲しみが
多くのものを奪い去っても
次のシーンを笑って迎えるための
演出だって思えばいい
(Documentary Film/Mr.Children)


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