筆ペン・ルーリングペン・コーラペンでのカリグラフィー
20世紀初頭にカリグラフィーが復興して以来、スタンダードなカリグラフィーペン(ブロードエッジド・ポインテッド)以外のペンを使って作品を作る作家が登場してきました。彼らがどういった道具を使ってるのかを紹介したいと思います。
▼スタンダードなペンはこちら
筆ペン Brush pen
古くから丸筆でスクリプトを書く(ブラッシュスクリプト brush script という)方法はあったようですが、1972年に日本で筆ペンが開発され世界中に普及すると、より一般的になったようです。
ブラッシュスクリプトの名手としては日本では鈴木泰子さんが有名ですが、鈴木さんがアメリカでこの技法に出会った時に、講師の方に「なぜ日本人のあなたが私に習いに来たの?」と聞かれ、「筆でアルファベットを書いたことはありませんよ」と答え、二人で笑いあったそうです。
入手方法はもう説明するまでもないですよね。文具店どころかそこらのコンビニで売ってます。が、大型の文具店に行くとカラフルなものがありますので、足を運ぶ価値はあるでしょう。
もちろん普通の水彩画用の筆と絵の具でも書けますが、ちょっと毛足が長すぎるのと、絵の具の用意や筆の洗浄がめんどくさいので、筆ペンの方が簡単でいいと思います。
ルーリングペン Ruling pen(カラス口)
もはやいにしえの画材と化してますが、コンピューターが普及する以前、グラフィックデザイナーや建築家は、このペンで線を引いていました。一定の太さの線が引け、ネジで太さを調節できます。カラスの嘴に似てるので、日本では「カラス口(ぐち)」というのが通称です。溝引きを使っての直線引きは必須の技術でしたし、このペンを研ぐのは新人の仕事でした。これをサボると、師匠や先輩からデバイダ(両脚とも針のコンパス)が飛んできたそうです(パワハラ)。
いまでも大きな文具店や画材店に行けば、大きな三角定規(これももう使われてないと思いますが)などが置かれた製図用具売場の片隅でホコリを被ってると思います。
これでカリグラフィーを書く時は、写真のようにステーキナイフを持つ要領で寝かせて持ち、ペンの腹が紙につくようにして書きます。角度によりペンが触れる面積が変わるので、これによって太さを調節して自由な書風で書いていきます。
この持ち方が難しいと考えた人がいたようで、普通の持ち方でペンの腹がつくような変形ルーリングペンがいくつか考案されました。以下のものは何年か前にブラジルでクラウドファンディングを行って開発されたものです(私も支援しました)。プロジェクト名は Dreaming Dogs。収益は保護犬のために使われたそうです。John Neal Bookseller で購入できます。
ほか、トルコの Calligraphy Story でも変わりダネのルーリングペンを販売しています。
コーラペン Cola pen(フォールデッドペン Folded pen)
これもかなり変わったペンです。薄い金属板を折りたたんで(fold)作るペンで、よく材料にコーラの空き缶が使われるのでコーラペンと呼ばれてます。アルミ缶なら普通のハサミで簡単に切れるので、特別な道具は必要ありません。これを何か棒(鉛筆が手頃です)にテープでくくりつければ完成です。英国のカリグラファー、Seb Lester さんの Instagram で作り方が紹介されてましたので引用します。
で、どんな書体があるの?
このコーラペンやルーリングペンで書く書体には、特に決まったものがありません。作者のセンスによって自由に表現します。それだけに基礎ができてない初心者が書くと、ほとんどタダのラクガキになってしまいますので、中~上級者向けのペンだと思います。なので、まず普通の書体を練習し、それに飽きたらチャレンジしてみてください。
とはいえ、まったく何のヒントもないのとアレですので、以下の書籍を推薦しておきます。こちらはスタンダードなペン以外でのカリグラフィーの作例を多く紹介しています。