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2020年、日本の教育が激変する。この事実に対して、「受験のプロ」はどう捉えているのか? 東大受験マンガ『ドラゴン桜』『ドラゴン桜2』で数々の斬新な教育方法を打ち出し、実践する主人公・桜木建二にインタビューした。
子どもの能力を伸ばすために注力すべきは、「根拠のある自信づくり」「具体と抽象を行き来する会話」と力説する。「小学校・中学校受験は子どもの将来を不幸にする」。衝撃発言の理由は。
勉強嫌いになる可能性が高い

大前提として、12歳頃までの子どもの能力と将来の能力は、まったく関係がない。子どもの発達スピードは個体差がとても激しく、12歳までの能力は何1つ将来を保証するものではないんだ。
そのうえで、小学校受験と中学校受験は、子どもの将来を楽にはしない。むしろ、不幸にする可能性が大きい。
発達心理学で区分される発達段階において、小学校受験に臨む6歳は、「直感的思考段階(前操作期)」から、「論理的思考段階(具体的操作期)」へ移る時期といわれている。
直感的思考段階とは、状況の理解の仕方が、目に見える特徴に左右されること。例えば、コップに入った水を平らな皿にそのまま移したとき、高さがある方(コップに入った方)を量が多いと判断する。
4枚のコインがあったとして、4枚を密着させて並べたものと、離して並べたものをどちらが多いか比較させると、後者と答える。これが直感的思考段階だ。
この次に訪れる論理的思考段階では、自分が具体的に理解できる範囲のものに関して、論理的に思考したり推理したりが可能になってくる。
この移行は、4、5歳でで進む子もいれば7歳の子もいて、8歳までには必ず終わる。いつ移るかは、頭の良さにはまったく関係がない。にもかかわらず、小学校受験で問われることの多くは、論理的思考期でないと解けない内容なんだ。
この次にやってくる思考の変化は、12歳。論理的思考段階から「抽象的思考段階(形式的操作段階)」へ移る。
抽象的思考段階は、経験に基づくことや目に見えることだけでなく、抽象概念や知識がわかり始める。例えば、「生きる」「幸せ」などがわかり始める。算数から数学になり、xやyなど抽象的な数式も扱えるようになる。

この移行時期も個々の子どもで差が大きいのだが、中学校受験のための勉強は、この抽象概念の理解を多く問われる。論理的思考段階の子どもは、苦痛で仕方ない勉強を無理やりやらされるわけだ。
小学校受験も中学校受験も、年齢を重ねさえすれば楽にできることなのに、苦手なトレーニングをしている。
身長で考えてみてほしい。子どもの身長はいずれ成人並に達するのに、成長期前に頭を無理やり引っ張って伸ばそうとするようなものが小学校受験、中学校受験。これでは勉強が嫌いになる可能性が高い。
受験に失敗した子の親は、「うちの子は受験が苦手」「勉強ができない」といった意識を持つかもしれない。子どもの方も自信をなくし、受験や勉強に苦手意識を抱いてしまう。本当に苦手かどうかは、この年齢の時点ではわからないのに、だ。
「孟母三遷の教え」との故事があるように、教育は環境からの影響が大きい。親が良い環境を整えること自体は賛成だが、そこに至る小学校・中学校受験は失うものが多いことは知っておいた方がいい。
「根拠のある自信」で挑戦できる
受験の失敗に限らず、子どもが自信を失うことは、その先の人生において大きな損失だ。自信は、モチベーションの源泉だからだ。
人が自分に自信を持つことは、そう簡単ではない。「根拠のない自信」と呼ばれるものも、実は虚勢を張っているだけであることは少なくない。
本当に持ち合わせたいのは、「根拠のある自信」を積み重ね、その成功体験がつくる未来の自分への「根拠のない自信」。これまでの経験が実績となり、不確定なことに挑戦できる。そんな自信だろう。
では、「根拠のある自信」を持つためにはどうすればいいか。今すぐできることとして、心の中に、自分の小人をたくさん持つといい。ものごとを考えるとき、たくさんの小人を主体にするんだ。
例えば、「英語ができる?」と聞かれて、自信を持ってできると言える高校生は多くないだろう。そこで、1000人の自分の分身(小人)を思い浮かべる。
1000人が英語を学んでいると想像して、「英単語帳にある、aから始まる英単語を覚えられる?」と小人1に聞いてみる。小人1が「できるよ」と言うと、隣にいるbを覚える小人2も「私もできるよ」と言う。
そうしてcを覚える小人3も「私だってできる」と言い始めると、「英単語を覚えることができる」小人集団が形成される。そこから次第に、「英熟語を覚えることもできる」という集団や、「英作文500個なら丸暗記できる」という集団も出てくるだろう。
小さな自信が広がり、「リスニングだってできる」と言う小人も現れてきて、「テストって意外と点数取れる! できるよね」と意識が変わっていく。自信とは、伝播するものだからだ。
一方で、恐怖や不安も伝播する。1人の大きい自分を主体にすると、物事を全体で捉え、できない部分にフォーカスして不安になる。
すると、その不安が伝播し、小人全員も不安になる。思考の順序を入れ替えて小人を主体にすることで、「できるよ」「できるよ」「できるよ」と伝播し、自信になっていくというわけだ。

この発想を子育てに応用するには、確実にできるお手伝いをさせるといい。毎日、自分の靴をそろえる、お箸を並べるなど、単純なことをしてもらう。
無理なく子どもが続けられることで「自分はできる」と子どもの自信になると、「根拠のある自信」になる。小さな実績によって自信が伝播し、どんどん難しいこともやれる、やってみるようになっていく。
思考力や自主性を育てる教育が叫ばれているが、土台がない人間は思考できないし、自分で考えて動けと促しても不安になるだけだ。
自信をつけてやる前段階では、愛情をたっぷり与えることも欠かせない。子どもが失敗しようがどんなに人に迷惑をかけようが、すべてを受け入れる。愛情を注ぎ続ける。
子どもにとってそんな存在がいることが、安心につながる。愛情と安心があって、小人思考でやれることを繰り返し、自信が伝播する状態を親はつくっていく。すると、子どもは自然と動く。
具体と抽象の階段を行き来させよ
土台をつくりながら意識したいのは、会話だ。会話こそが、子どもの能力を伸ばす。
人間の脳が最も活発に働くのは、あまり知らない相手と会話している時だといわれている。
家族や親しい友人との会話なら、「昨日の試合、楽しかったよね」で話が通じる。昨日の試合がサッカーの部活の話を指すと情報が共有されたうえでの会話だから、言葉選びや説明は楽をしたもので済む。
それを知らない人が相手だと、もっと丁寧な会話になるだろう。
そもそも、我々の普段の会話では、必ずズレが起きている。ある人が「旅行は、ゆっくりした乗り物で移動するのが好き」と言ったとする。
ここで使われた「ゆっくり」は、鉄道であれば新幹線ではなく在来線で移動することなのか。あるいは飛行機ではなく新幹線のことなのか。
相手の発言に対し、ほぼ同じ内容を違う抽象度で言い換えたり具体化したりすることで、確認し合いながら理解を進めている。こういった会話が、脳を活発に動かしている。
2020年の大規模な教育改革で大学入試が変わる話にもつながるが、これからは、知識量を確認するものから、知識を生かす力を問われるようになる。では、知識を生かすための前提となる「理解」とは何だろうか。
「理解する」とは、「100%自分の言葉で言い換えられること」だ。アウトプットはごまかしが利かないので、しっかりと理解していないとできない。

日本の教育もそんな流れに向かうのだが、東大の入試問題は現状とそう変化しないといわれている。そもそも東大受験はインプットを重視せず、「言い換える力」を求めてきたからだ。
日本史でよく出題されるのは、10個のキーワードがあり、「この10個のキーワードを使って江戸時代の百姓の生活を説明せよ」というもの。つまり、言い換えだ。
説明に必要な文字数が200字なのか500字なのかで、具体と抽象をどう使い分けるかも問われる。
英語もそう。「この絵を見て、この絵に描かれている状況を200語以内で英作文にせよ」といった出題がほとんど。
日本語から英作文を作れと指示し、知識だけを見るのではなく、具体的な絵を見て抽象的な言葉に置き換えられるかを問う。その後に、英文作成能力を確認しているのだ。
言い換え可能かどうか。これは能力のすべてで、時代がどれだけ変わっても変化しない。そんな「言い換え力」を育てる方法としても、抽象と具体を行き来させて理解を深めていく、あまり知らない相手との会話は有効なのだ。

言い換える力を伸ばす会話は、親子の日々の生活でもできる。
子どもに「今日、学校どうだった?」と聞く。子どもは、今日という1日を短い言葉にして説明することになる。「楽しかった」と一言返ってきたら、「何をして楽しかったの?」「どんなふうに楽しかったの? わかるように詳しく教えて」などと質問を重ねていく。
子どもは長くしゃべることが苦手だから、なんとなく会話すると30秒ぐらいで終わってしまう。そこを5分間続かせるように意識してみるだけで、子どもの脳は活発に動き、脳も能力も育つ。
親の質問の方法としては、「今日新しい先生が来たらしいね。どんな先生だった?」と具体的なところから入ってもいい。
具体と抽象とは、具体的なエピソードから少しだけ抽象、さらに抽象、そこから具体と、いくつも階段がある。その階段を行き来するような、ちょっとずつズラしてあげる会話をしていく。
新しい先生について、「優しい先生だった」と、抽象度が高い返答を子どもがしたら、「どんな行為を見て優しいと思ったの?」と具体的なことを言わせる。その返事に対して、次は抽象に向かうような質問を投げる。
親子が一緒に見ている世界について会話するのもいい。景色を見て「すごいきれいだね!」と子どもが言ったら、「どこを見てそう思ったの?」「どんな風な気持ちになったか教えて」などとしっかり聞き、会話していく。
その際に気をつけたいのは、子どもの発言を親が補足しすぎないこと。子どもと同じものを見ている親は、「きっとこういうことだろう」と言葉を補いがち。親が先回りしてわかってあげすぎると、子どもはしゃべらなくなってしまう。
脳を最も発達させ、人間を人間たらしめているのは、会話。抽象と具体を行き来させ、理解を進めていくような経験を子ども時代にどれだけするかが大切なんだ。

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