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突然入門した合気道女子の道場礼讃記

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あたまとからだの動きが全然一致しない運動能力だけど、これから一生憧れつづけるなら今が人生で一番早いと思い立って入門した合気道女子の道場礼讃記
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合気道場はいくつになっても、青春を現出してくれる夢の国だということを、道場を変えるときに思い知った話。

合気道場はいくつになっても、青春を現出してくれる夢の国だということを、道場を変えるときに思い知った話。

短冊が、目の前にぶらさがっている。
こう書かれている。自分には能がない、と。
道場を変えることにした。
ああ、むりだ。もう通えない、と思ったあの日の夜のことを、現像できるくらい明瞭に覚えている。
ふつうに考えたらそりゃそうなんだけれど、もう曜日の組みようがない。
日常に占める比重が大きすぎる。
平日の退勤後に、地下鉄で道場に向かう。
帰宅して22時。そこからおふろと夕飯。始業も早いので、早く眠らな

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daily🌱立夏の躑躅と四方投げ

daily🌱立夏の躑躅と四方投げ

🌱立夏
顔をあげると、むわっと、もうもうと、みどりの香りが顔面に直撃する。
マスクをしているのに届く、朝の森のかおり。
濃い葉の一枚一枚から、分厚い樹々の皮から、盛り上がった土から、香気が迫ってくる。
まじまじと見つめると、どう考えても、みどりの面積が広がっている。
こんなに濃かったろうか。
ほとんどみどりしか見えない。
もう、と、音を立てて、みどりの分厚いモヤが、全身をくるんでくれる。
くるむ

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憧憬は鎮火しないので、子どものころ憧れたことは、いつでもさっさとはじめたほうがいい話。合気道はじめました話。

憧憬は鎮火しないので、子どものころ憧れたことは、いつでもさっさとはじめたほうがいい話。合気道はじめました話。

記憶にあるかぎり、これほど嬉しい買物はなかった。
というくらい、目のくらむような体験だった。
合気道はじめて半年強、やっと買った。道着。
道着着て寝たいくらいオーバーランしてる。気持ちが。

別に入門後すぐ買ってよかったし、男性はわりとすぐ買うし、逆に同期のなかでいちばん遅かった。
師範八段に「お前まだ買ってへんのか」といわれて、道着をもってこられて「着てみい」と、サイズをあてられてやっと、
――

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おめでとうの七つの味。思いついて通っただけの道場で聞く、おめでとうの味わい。

おめでとうの七つの味。思いついて通っただけの道場で聞く、おめでとうの味わい。

おめでとうには、七つの味がする。
単一の味だったはずのおめでとうは、人生が展開してゆくにつれて、味わいを変じてゆく。
だれかには甘くても、だれかには苦くて、その場にいるだれもが一色に染まることはない。
あの人には酸いだろう。遠目に見て思う。どういう気持ちで聞いているのだろう。
目を向けても笑っている。大人なのだからそうだろう。お酒をのんで笑うしかないだろう。
やけ酒なのかも、こころから喜んでいるの

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