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2022年10月 一箱本屋PLOW店主が読んだ7冊

月末恒例になりつつある、今月の読書の振り返り。

今月は、一箱古本市に参加させていただいたり、初めてのZINEを販売したり、読書する時間がなかなかなかったなーと思っていたけど、振り返ったらそんなことなかったよ。

では、早速GO!

飛び立つ季節 旅のつばくろ(沢木耕太郎)

先月読んでいた、「旅のつばくろ」の続編。

国内の旅にまつわるエッセイで、沢木さんの旅のスタイルや思いつきでふらっと旅に出るフットワークの軽さに感心する。

特に印象に残ったのが、普段お土産を買わない主義の沢木さんが、岩手の黒石に立ち寄った時の話。

岩手の黒石で、沢木さんはたまたまこけしを買ったそう。

というわけで、いま、そのこけしは、私の家の居間の飾り棚で、一輪挿しの小さな花器と並んで佇んでいる。
しかし、その可憐な姿を見るたびに、買ってきたことを後悔する気持になる。仲間から引き離し、こんなところに連れてこず、あそこに置いたままにしてあげればよかったなと。
「飛び立つ季節 旅のつばくろ」より

わたしもこけしや民芸品の人形を買いがちなので、「仲間から引き離してしまった」感覚わかるなあ。

家に連れて帰ってくると、お土産屋さんにあったときと佇まいが変わるというか……同じもののはずなんだけど。

思うに、モノって、集団でしか出てこない、愛おしさがあるんじゃないか。

ボールペンしかり、シールしかり。
集まっているから、ますます愛おしく感じてしまうのだ。

わたしが、いろんなものをついコレクションしてしまうのも、その愛おしさのせいなのかもしれない。と物を増やす理由を正当化しておこう。

コークスが燃えている(櫻木みわ)

職場でちょこちょこ見かけるので、気になって読んでみた本。

筑豊の炭鉱町出身の私(ひの子)は東京に住み、もうすぐ40歳になる。非正規で新聞社の校閲の仕事をしているが、3年限定の仕事なので、いずれ新たな職を探さねばならない。両親は他界していて、年下の恋人だった春生とは1年以上前に別れていた。

新型コロナウイルスが広がるなか、前に弟との結婚騒動で出会った女性・沙穂から連絡があり、東京で食事をすることになる。彼女は看護師で、独りで子育てをしていた。ひの子は沙穂の影響で、逡巡しながらも春生にメールを送ってしまう。すると思いがけず返信があり、再び付き合うことになって……。
Amazon「コークスが燃えている」より

主人公のひの子は、元カレの春生と再会。とんとん拍子に関係をもってしまう。結果、妊娠するのだけど、未婚の母ならではの問題に次々とぶつかる。

非正規での勤務の不安定さ、出産環境、高齢出産。
おいおい、なんだかどれも他人事じゃないんですけど……。

はからずも、未婚で雇用も不安定な身寄りのない女性がいざというとき頼れるところの少なさ、そういった現実と、この小説を通して向き合うことに。

わたしも、非正規雇用&未婚バツイチなので、今後、結婚も出産もしないかも?と思いつつも、胃をキリキリさせながら読み切った。

将来的に、「結婚をしなかったからだ」「何も考えてないからだ」とばっさり切られるかもしれない今の立場は、なんてあやういんだろうか。

ひととのつながりを強調するエピソードが多いけど、それもその場しのぎでしかない。今の自分にとっては、モヤッと感が拭えない一冊だった。

Yuming Tribute Stories

ユーミン(松任谷由実)のトリビュート小説集で、こちらも職場で見かけていた本である。

選ばれたのは、「あの日にかえりたい」「DESTINY」「夕涼み」「青春のリグレット」「冬の終り」「春よ、来い」の6曲。

その6曲を、「小池真理子」「桐野夏生」「江國香織」「綿矢りさ」「柚木麻子」「川上弘美」の6人の作家が、それぞれ解釈して書き下ろしている。


10月9日(日)に参加した「千石ブックメルカード一箱古本市in千石」の帰り道。


何を思ったのか、わたしは、本を売ったお金で本を買っていた(笑)。そのうちの1冊がこの本である。

わたしは、全然ユーミン世代ではないけど、この6曲は知っていて。

曲の世界観がそのまま物語に反映されているわけではないのに、どの物語も、楽曲のテンションや歌詞の言葉から膨らませていった跡が見えて、なんだかむず痒くなった。

「DESTINY」の爽やかなイントロは、物語を映画のように見せてくれる。「春よ、来い」は、斬新な構成に、引き込まれる。

1番共感したのは「青春のリグレット」。この曲にはこんなフレーズがある。

私を許さないで 憎んでも覚えてて
今でもあなただけが 青春のリグレット

笑って話せるね それはなんて哀しい
だってせいいっぱい愛した
あなたを愛した

曲と小説を行ったり来たりしながら、思う。

わたしは、まだ青春のリグレット、ズルズル引きずっている。
「私を許さないで 憎んでも覚えてて」にも、小説のしょっぱい青春にも、ものすごく共感してしまった。

最後の結末まで読んで、自分ではないかと思ったぐらい。

ユーミンをあまり知らなくても、ぜひ手に取ってほしい!
都会の大人な恋のイメージが強いかもしれないけど、イメージが全然変わるよ!

私の生活改善運動 THIS IS LIFE(安達茉莉子)

帯にあった、『「これでいいや」で選ばないこと。「実は好きじゃない」を放置しないこと。』という言葉。

もともと、安達さんのZINEを何冊か持っていたので、買おうと思ってはいたのだけど、この帯を見て、ますます気持ちが逸る。

ところで、「生活改善運動」とは?
安達さんは、こう定義している。

自分にとっての心地よさ、快・不快を判別し、より幸福なほうに向けて生活の諸側面を改善していく自主的で内発的な運動だ。
私の生活改善運動 THIS IS LIFE(安達茉莉子)より

この定義のもと、安達さんは本棚をDIYしたり、服を作ってみたり、生活にまつわるひとつひとつを丁寧に選択していく。といっても、「ていねいな暮らし」ともまた違っていて、自分の心地よさを追求していく、と言った方が正しいかも。

「幸せを受け取っていいと思えるようになった」という言葉に、あ、わたしも違和感を見過ごしていたのかも、だから素直じゃなくて、軸が捻れているのか?(わたしは自分のことをそう思っている)と気づく。

買い間違えたダブルの毛布、長年使っていて買い替えたいと思ってる枕……

限られたお金の中でやりくりするので、ときどき物に自分を合わせていっちゃうんだけど、最近は、見過ごさないで何かしら改善できないかな?と考える日々である。

隙間時間(小谷実由)

わたしが長年好きなモデルさん、おみゆさん(小谷実由さん)。

シューズブランド「NAOT JAPAN」の公式HPで連載していたエッセイがついに本になるとな……!?
はい、オリジナル栞付きサイン本をCOTOGOTO BOOKSさんでポチッとしましたよ。

内側の遊び紙が表と裏で違っていたり、表紙を外すとおみゆさんの写真が載っていたり、見た目からすでにときめきMAX♡の状態でいざオープン!

インスタでときどき見かける、猫のしらすの話、文章を寝かせる話、予定を勘違いしていてうっかり?早起きした話、なんでもないけどなんでもなくない日々の話をあっという間に読んでしまった。

ご主人の島田さんが撮ったお写真が好き。

靴のことには触れられてないけど、うちの母と叔母が以前からNAOTの靴を絶賛しているのを思い出し、わたしも履いてみたくなった。

魔法騎士マジックナイトレイアース(CLAMP)

わたしたちアラサー世代だと、「カードキャプターさくら」や「ツバサ」「xxxHOLiC」の方が馴染みがあると思う。

でも、わたしのファーストCLAMPは「魔法騎士マジックナイトレイアース」なのであった。

というのも、わたしの父は結構なオタクコレクター気質で、小学生の頃、家にあった家庭用ゲーム機はなぜかセガサターン一択(当時は友人が初代プレステや64を持っていてうらやましかったなあ)。

初めてやったゲームが、レイアースだったのである。
父がCLAMP好きだったわけじゃないし、なんで家にあったのかは不明だけど……

でも、OP映像の迫力とダークな展開に、小学生のわたしは気づけばレイアースの虜に。

そのレイアースが、10月からPREMIUM COLLECTIONシリーズで発売されると知り、買いましたよ!発売日に!


過去に1回だけ読んだことがあったけど、ほぼ記憶がなかったので初見と変わらない状態で読み始める。
はあ……見開きのコマの美麗さがハンパじゃない!カードキャプターさくらの柔らかい絵柄とは違って、迫力と圧がすごいんですけど。

初期のCLAMP作品を知っている人から聞いていた、「CLAMPは、初めて見たとき絵が美しすぎて衝撃だった。別格だったよ」という言葉を噛み締めた。


あと、導師クレフとプレセア、ゲームより出番長い?(ゲームだと秒で石にされる)

エメロード姫「伝説の魔法騎士たちよ……」

このセリフが、CV:緒方恵美さんで脳内再生されるあたり、確実にゲームのやりすぎだな、と20年前のことを思い出したのでした。

しかし、なかよしで連載されていた少女漫画なのに、魔神(ロボットみたいなやつ)が出てくる世界観、当時の読者さんたちはついていけていたのか??気になるところである。

スター・レッド(萩尾望都)※再読

一箱古本市で、手に取ってくださる方が多かった「スター・レッド」。
また読みたくなって、再読。

実は読む前からひとつ引っ掛かっているシーンがあった。


超能力があれば、道具を使わなくていいから手がいらない、話さなくていいから口がいらない、それは退化じゃないか?



あるキャラがそんな主張をするシーンがあるんだが、それが今のAIの進化とダブってしまって……。

AIでイラストやHPが生成されるようになったら。文章を生成するようになったら。もう人間の技術はいらないのか?

そんなの、だいぶ未来の話かと思っていたけど、すぐそこまで近づいていることなんだ、と思ってゾッとしてしまった。

結論から言えば、実用化には課題がまだまだあるのでゾッとするほどのことではないのかもしれない。でも数十年前の漫画ですでに似たようなことが言われているなんて……。

今、改めて読んでほしい漫画のひとつだなあ。


今月読んだ本のnote

個別に読んだ本の感想をアップしていたのでそちらもぜひ……!

今月も長々とお付き合いいただきありがとうございます。
また来月もよろしくね!

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その日にあったこと、考えたことなど、頭の中で爆発しそうなくらいパンパンな思考を、日々放出しています。


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