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文房具コーナーで出会った、届かない(かもしれない)メッセージ

そうだった、修正テープを買わないと。


たまたま寄ったバラエティショップの文房具コーナー。

文房具コーナーとは、まさしく沼であり、魔境である。一度入ってしまうと、数時間は滞在してしまう。

しょっちゅう使う文房具なんて限られているのに、新しい文具のチェックに余念がないわたし……。


店内をぐるぐる見渡して、ふと目についたのは、最近よく見かけるようになった、パイロットの「ジュースアップメタリック」。

メタリックカラーで、黒い紙にも描けるペンだ。

隣に、「クルールフォンセ」シリーズも並んでいる。

こちらは暗いカラーのノートで、

「クリエイティブブラック」
「アミュージンググリーン」
「リラクシングネイビー」

と絶妙なニュアンスカラーが素敵だなあ、と見るたびに思っているノートである。

おお、クルールフォンセシリーズのノートが、ジュースアップ用の試し書きノートにされているではないか!

特にペンを探しにきたわけでもないのに、学生時代からの習慣でちょろちょろっと試し書きをする。

黒い紙に白い文字、新鮮だなあ……。

◆◆◆


ところで、試し書きをするときに何を書くか。悩ましいところではないだろうか?

わたしはそのお店があるエリアを書く(「EBISU」「HARAJUKU」「新宿」など)ことが多いけど、みんなどんなこと書いてるんだろう? 

ふと興味が湧き、ぱらぱらとページをめくる。

「今日はつかれた〜」と感想を書いている人もいれば、日付だけをシンプルに書く人もいる。結構バリエーションがあるみたい。

なんだか、お店を訪れた人と交換日記をしている感覚だ。



ゆっくりとページを眺めながら、ノートをめくっていく。すると、1つの深刻?な悩みに遭遇した。

「字が下手だと残念」

ブルーのペンでひっそり書かれた悩み。

全然そんなことないよ、と思うぐらいには美しい字だった。けれど、そうか、これを書いたご本人は字が下手だと思っているのかあ。

ちょっと切なくなってしまった。

と思ったら、下に続きがあるではないか!あれ、でも違う人の文字……?


そこに書かれていたのは、「とてもお上手ですよ」というメッセージだった。

シルバーっぽい色味のペンで、さささっと殴り書きのような筆跡。矢印がひっぱってあって、この人宛のメッセージですよ、と静かに主張していた。


これを書いた人は、思ったことをそのまま届けようとしたんだ。

軽い気持ちかもしれないけど。それでも、どこの誰とも知らない人に返信するというのは、なかなかできない。


2人は出会うことはないかもしれない。再び来店したところで、このメッセージが残っているとも限らないし、メッセージすら届かないかもしれない。

けれど、やりとりの痕跡を見て、なんだかニンマリしてしまった。

メールやSNSが当たり前の時代に、文房具コーナーの小さなノートの中で、こんなアナログなやりとりが繰り広げられていたなんて。

ドラマチックすぎる。


結局、修正テープは買い忘れてしまった。
でも、代わりに「ほかほかしたもの」をもらってきた気がする。

「字が下手」と悩んでいるあなたに、温かいメッセージが届いているといいな。

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