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花組全国ツアー『激情』ゆるゆる感想①


全国ツアーみてきました

花組全国ツアー公演『激情/GRAND MIRAGE!』千秋楽おめでとうございます!
宝塚にハマって10年ほど、初めて全国ツアー公演を各地で観劇してきました。
梅田、長野、相模大野、刈谷の4会場で観劇したのですが、観るたびに皆さんの役作りが変化し、より深まっていって、毎公演本当に楽しかったです。
また、全ツメンバーの下級生はかなり顔と名前が一致したと思うので、次の大劇場公演もより楽しみになりました。
会場的には、刈谷市総合文化センターアイリスが一番観やすくて最高でした。またやってほしい。

ファンの方と色々お話できたり、偶然全ツメンバーをお見掛けしたり、各地で美味しいものをいただいたり、公演以外もとっても素敵な思い出ばかりで、本当に夢のような時間を過ごすことができました!

『激情』感想

『激情-ホセとカルメン-』のタイトル通り、プロスペル・メリメ『カルメン』およびビゼーのオペラ『カルメン』をベースにしたお話だということ、縄のヤバい場面となんかすごい暗転シーンがあること、これしか知らない状態で観てきました。
まず、メリメが何故ドン・ホセという男の物語を執筆するに至ったのかから始まり、春祭からは客席を春のセビリアへ誘う構成も素敵ですし、曲が全て最高!早く楽曲配信来てほしいですね。

真っすぐさゆえに突き進み、転がり落ちてゆく様が痛々しいほどの、永久輝さんのホセ。
匂い立つような女の色香の中に自由を愛する無邪気さも併せ持つ、どこまでも自由な、星空さんのカルメン。
ご贔屓が演じられているということを抜きにしても、凛々しく力強く魅力的でカラリとしたスペインの風を感じる綺城さんのエスカミリオ。
そして、それぞれのお役としてセビリアで生き生きと存在する花組生の皆さん、それを作者という立場から見つめる凪七さんのメリメ……全てが素晴らしく、とても面白い作品で、私にとっての初めての『激情』がこの花組全国ツアー公演で良かった!と心から感じています。

登場人物ごとの感想ちょこっと

ドン・ホセ

ドン・ホセ・リッツァラベンゴア。ナバーラ出身の男。
原作を読むと結構血の気が多いというか、勉強より運動派っぽくて。
彼の中にある衝動的な暴力性や、独占欲の強さ、思い込みの強さあたりが、カルメンと出会ったことでハチャメチャに刺激されて、どんどん転がり落ちていってしまったのかなという印象でした。
カルメンに惑わされたのではなく、彼自身の元来持っていたものがあくまでも刺激された結果なのかな、と。まあ、刺激に弱すぎると思うんですが。

本当に、永久輝さんが上手い……こう、絶妙に身勝手な男がなんでこうも似合うんですかね。
ドン・ジュアンのラファエルを思い出しました。
上手いからこそ、ホセにいらつく。
あと、パーマかかってる髪型が色っぽくて好きでした。
そりゃカルメンも「ハンサムな伍長さん」って声掛けます。だってかっこいいもん。

ホセは事あるごとに「俺は、母さんを悲しませてしまった……」と言っていますが、目の前にいるミカエラのことはどう思っているんですか?と、常々思っていました。
まず目の前にいる女の子をお前は悲しませています。現在進行形で。
私はミカエラの味方なので、わざわざナバーラからアンダルシアまで娘一人で来た婚約者に対して、あの態度は無いだろう、と思っている派です。
「俺をどこまで引きずり下ろせば気が済むのだ、神よ!!」も、ホセの心からの叫びなのは理解できますが、そこで神よ!というワードが出てくるのがとてもキリスト教徒っぽいな……となんとなく思ったり。
神のせいで堕ちたわけではなく、自分で選んだ未来だよ。
ホセって、帰れる故郷があって、婚約者もいて、ドンって付くくらいですし、衣食住ですごい苦労をしたことも無さそうなイメージ。
そんな彼が、陽のあたる場所で生きることをやめてまで共に進もうとしたわけで、彼の中では確かにカルメンを愛していたんだな〜と頭では理解しました。
ミカエラのことがあるから、納得はしていない。

カルメン

自由を愛する無邪気さ、男を惑わすような匂い立つ女の色香。
どちらもカルメンの持つ一面ですが、星空さんのカルメンは無邪気さをより強く感じました。
例の縄の場面でも、色仕掛けの中に彼女の持つ無邪気さや可愛らしさが覗いていて毎回キュンとしていました。好き。
薔薇の香りと、艶やかな姿がホセの脳裏に焼き付いたんでしょうね。

また、エスカミリオとのカードの場面も印象的で。
あのマタドールのエスカミリオにイカサマを仕掛ける度胸、ニヤっとしながら手札を見せる様子と、彼が去った後にイカサマを見抜かれたことを理解した瞬間の表情。
エスカミリオとの刺激的な恋愛ゲームの始まりを楽しんでいるような印象もあって。
フラメンコの直前に、ホセが営倉から出てくることを聞き「今日……」と嬉しさを滲ませてた直後だというのに、どこまでも自由な女だな~と、いわゆるおもしれー女を見る心持ちになっていました。
エスカミリオの「ぐさりと一突き」という台詞もあるので、彼女が揃えたのはスペードのストレートフラッシュだったら、後々の占いと同じスートで物語的には面白い気がします。

闘牛場で、亡くなったエスカミリオに彼のムレータを掛ける場面は、グレート・ギャツビーでデイジーがギャツビーの墓穴に花を投げ込む場面を思い出しました。
彼との恋に別れを告げ、自分の運命の瞬間が来たのだと理解してホセの元へ向かう様子が印象的でした。
ただ、カルメンはニコニコ笑ってホセに手を差し伸べるような女じゃないと思うのでラストのアレは、ホセの都合の良い夢だと思います。

プロスペル・メリメ

事あるごとにツッコミを入れてくる原作者のメリメさん。
「私は、小説を書く事にしたのです」といった台詞があるように、彼の筆の上でホセやカルメン、エスカミリオ、すべての人間達が活き活きと息づいているのが伝わってくるような、絶妙な立ち位置。
その空間にいながらも、あくまでも傍観者として人々を見つめている様子でありながら、浮いているわけでもなくて。
序盤は、自分の描き出すホセと対話しながら執筆している印象を受けたのですが、次第にホセが自ずから動き出して、彼自身の最期に向かって行ったようで。
メリメがいることで、ホセとカルメン、エスカミリオの三角関係から客席が置いていかれず、客席と舞台との橋渡しの役割も果たしている、そんな印象を受けました。

エスカミリオ

千秋楽までずっと観劇の度にカッコよすぎてどうしたらいいかわからなかった。
梅田で初めて観た際、セビリアの春祭りの綺城さんがあまりにも素敵すぎて、興奮して、ここの場面だけ記憶を飛ばしました。
マタドールの服でウィンクを飛ばされると、人間は融けるしかない……好き……

完全に個人の感想になるのですが、最初に観た際には”人気闘牛士エスカミリオ”の仮面を着けていて、その仮面を着けることすら楽しんで生きている男、という印象でした。
”運命の女神に愛されている男”を演じている感、と表現しても良いかもしれません。
それが、次に観劇した際にはがらりと変わっていて。
心の底から自分は運命の女神に愛されているし、どんな勝負にでも勝つと信じている、スター性のある男性に変化していて、けれどもその解釈がすごくしっくりきたな~と。
こういう男が仕事の前に祈りを捧げていたりするのを想像すると大変興奮するのですが、そういった描写は皆無で、一貫して力強く輝く男なのが最高でした。
あなたもアンダルシアの太陽よ。
彼が出てくると、場面がパッと明るくなるんですよね。
作中に、爽やかな風を吹かせてくれる存在であると同時に、闘牛士という命を賭ける職業由来であろうギラつき、燃え上がるような情熱も持っていて。
メインの登場人物の中で、スペインの概念を一手に引き受けているのでは?

特に、リーリャス・パスティアでのエスカミリオが大好き。
フラメンコを観る際の獲物を見定めたような視線と、ハレオをかけるノリの良さ。初対面の女の腕と腰を触ってテーブルに着かせる強引さ。
そして、カードの場面での力強い歌声と、心から今この瞬間の勝負を楽しんでいる興奮が伝わってくる表情!
カルメンがカードを配るまでは、目の前の女を見極めるように鋭く見つめているのですが、「この、手の中のカード……」と歌い始めた途端に、瞳にギラリと光が入ったのが本当にぞくりとしました。
彼の興奮がダイレクトに伝わってくるようで、自分で「生まれ持っての勝負師」と宣う男は一味違いますね。

また、カルメンとの逢瀬もとても色っぽくて。
贔屓のキスシーン耐性が皆無だったのですが、頑張りました。最高。
カルメンのショールを力強く引き寄せ、彼女を抱き寄せながら腰を撫で首筋に口づけからの腕にも口づけ……って書いているだけで情報過多。
ひとつひとつの振付がゆったりとしていて、目の前の女を強引さがありながらも丁寧に愛している感じがあって、エスカミリオの遊び慣れている感がより強調されていて素敵だな~と。
最後にショールを右肩にばさりと担いで去っていくのも本当にかっこよくて。背中が勝ち誇ってるんですよ……
カードから始まったカルメンとの恋愛ゲームにおいては、エスカミリオが勝者だったのかもしれないです。

闘牛場の場面は「カルメン。この私の勝利を、君に」と言って試合に向かうのが忘れられなくて。
エスカミリオという男が、自分の命を賭けた試合をそんな軽率に他人に捧げるとは想像できないので、彼の中でカルメンに対する想いの中に、俺の勝利を捧げるに値する女という感情が芽生えていて。
人間の女との恋愛ゲームには勝利しても、己と運命の女神との人生をベットした試合に負けた男の最期は、何度観てもぐっとくるものがあります。
それにしても、綺城さん腕長いからムレータ捌きが素晴らしいですね!
現役生で、今一番布振り回しているのでは。

おわり

ホセとエスカミリオの対比については、まだ咀嚼してきれていない部分があるので、別途noteに書く予定です。
本当に、毎公演楽しかった!!早くBlu-ray欲しいです。明日出ないかな。

刈谷公演は名古屋に泊まったのですが、美味しいシェリーをしこたまいただきました。

名古屋で飲んだモスカテル2種
エレデロス・デ・アルグエソのモスカテル
ボデガス・カイドサのラウレアード

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