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#断片日記
「求む」やる気のない方
厚介は逡巡していた。思ってもなかった求人を発見したからだ。
厚介の特徴は「やる気のないこと」である。世間一般ではやる気のなさはあまり評判がよくない。
けれども厚介は意に介してないのである。こんなに世の中にやる気が溢れているのだ。一人ぐらいやる気のない人間がいてもいいんじゃないか。
むしろ、そういう人間がいたほうがバランスが保てるってものだ。それぐらいに考えている。
以前の職場でも彼は、あま
トモナガさんのお仕事
トモナガさんの仕事場は山手線の中だった。
といっても、スリや痴漢などではない。そういうのは、もちろん犯罪であって仕事とは呼べない。
じゃあ電車の運転士? それとも鉄道警察隊か何か? どれもちがう。ほとんどの人は、彼の仕事をしらない。
その日も、トモナガさんは五反田駅のホームにいた。
彼は、とある社章を胸に着けた男をマークして、 男が8両目の4番ドア付近に乗ったのを確かめると自分も隣のドアか
夜の入り口でサボテンは
「暗くなるのが早くなりましたね」
打ち合わせからの帰り道。まだ明るい時間だったので、いつもは通らない公園の脇道に入ろうとしたところでサボテンに話しかけられた。
しまった、と思った。日没前の明るさが残る時間はサボテンの活動時間なのだ。
サボテンは知人にでも偶然会ったかのように話しかけてきて、不意をつかれた僕は、うっかり「ええ」と返事をしてしまった。
「もうすぐ立冬ですからね」
サボテンはす