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#断片小説
コインロッカーに降る雨をきみは知らない
「またすよ」
舌打ちしながらヤマザキ君が事務所に戻ってきた。
「どうした?」
僕は業務日報を打ち込んでた手を止めて彼を見上げる。
「例のロッカーですよ、西口の」
ヤマザキ君がほんと面倒なんだけどという表情で、小さな応接テーブルの上に封筒をバサッと放り投げる。
「なんなんですかね? 俺らに嫌がらせですか」
「まさか」と言いながら、僕はヤマザキ君の顔を一瞥してからテーブルの封筒に目を移す。
ミドリさんの三日月(再放送)
ご主人の様子が朝から変だった。いつもなら着替えて出勤前の散歩に連れ出してくれる時間なのにスウェット姿のままだ。
真面目に顔を近づけて「今日だけでいい、代わってくれ」と頼まれた。
その代り、ご主人が犬として家で留守番をすることになった。
もしかしたら、ウチの近所のボス犬から無茶な頼みがあるかも、と言うとご主人は、そんなのいいんだよと気にする素振りもない。
ご主人が犬小屋に入ったのを見届けて、