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熊にバター(行き場のない掌編集)

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日常と異世界。哀しみとおかしみ。行き場のないことばたちのために。
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#断片小説

コインロッカーに降る雨をきみは知らない

コインロッカーに降る雨をきみは知らない

「またすよ」
舌打ちしながらヤマザキ君が事務所に戻ってきた。

「どうした?」
僕は業務日報を打ち込んでた手を止めて彼を見上げる。

「例のロッカーですよ、西口の」

ヤマザキ君がほんと面倒なんだけどという表情で、小さな応接テーブルの上に封筒をバサッと放り投げる。

「なんなんですかね? 俺らに嫌がらせですか」
「まさか」と言いながら、僕はヤマザキ君の顔を一瞥してからテーブルの封筒に目を移す。

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婚約の鯵

婚約の鯵

土曜日の区役所は、なぜだか酷く混雑していた。

僕らは、いったいどの窓口に行くべきなのか。というより、どの用紙に何を書くべきなのかも分かってなかったので、 朝の新宿駅のような人の流れを前に呆然とするしかない。

あちこちで人々が何かを訴え、区役所の職員も首を振ったり、手に何かの用紙を掲げてどこか指差したりしている。

「来る日、間違えたかも」

僕がつぶやくと

「こんなもんじゃないの」と

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ミドリさんの三日月(再放送)

ミドリさんの三日月(再放送)

ご主人の様子が朝から変だった。いつもなら着替えて出勤前の散歩に連れ出してくれる時間なのにスウェット姿のままだ。

真面目に顔を近づけて「今日だけでいい、代わってくれ」と頼まれた。

その代り、ご主人が犬として家で留守番をすることになった。

もしかしたら、ウチの近所のボス犬から無茶な頼みがあるかも、と言うとご主人は、そんなのいいんだよと気にする素振りもない。

ご主人が犬小屋に入ったのを見届けて、

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ライオンのスープ

ライオンのスープ

動物園のライオンというのは、だいたい寝ている。

アムールトラなんかが、せわしなく檻の中を行ったり来たりしているのに比べると、ライオンはいつも横たわっている。

ときどき大儀そうに眼を開けて、5分前の世界と何も変わりがないことを確かめて、また眼を閉じる。

どうして、そんなに寝ていられるんだろうね、と僕が訊ねると、
「そういうふうにできてるからだよ」と、ライオンは面倒くさそうに答える。

「たまに

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