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アートってなあに?〜「あるがままのアート」で深呼吸


 うわ〜っ!!!た、たのしいっっっ!!!
 猛暑の上野公園を突っ切って、入り口で検温と消毒をして、予約の時間まで少しロビーで涼んで。そう、こうして展覧会にくるのも久しぶり。階段を降りて会場に入った途端に、心とアタマがふわーーーっと開いた。

 入り口を飾る小森谷章さんの糸の塊、記富久さんの木彫りに着色した肖像たち。大きな女性が画面からはみ出さんばかりに描かれた魲万里絵さんの絵・・・カラフルで力強く、個性豊かな作品たちが、目に、心にわーっと訴えかけてくる。
 この半年、多くの博物館や展覧会が、ヴァーチャルで見学できるよう映像などを公開してきた。こうした時期であってもなくても、実際に現地に足を運ぶことができないところを画面を通じて覗くことができるのはありがたいけれど、やはり、作品を実際に自分の目の前にする、このドキドキ感は全く違う。会場に足を一歩踏み入れて、それを痛感した。

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 会場では、音声ガイドの代わりに、それぞれの作家紹介をQRコードで読み込み、音声で聞き取ることができるようになっている。普段はあまり音声ガイドを使わないのだが、ほとんどが初めて出会う作家さんだったこともあり、次々と読み取っては聞いてみた。長さも内容もほどよくありがたく利用したが、ただしこれはやはり、誰もが同じようにスマホを使用しているわけでもないので、ボードに文字で記載したものもあったほうがいいと思う。今回に限って、感染対策としての処置だったのかもしれないけれど。 
 そういえば、イタリアの美術館や展覧会でも、QRコード解説もぼちぼち導入されている。イタリアでもこれまではほとんど使ったことがなかったのだが、今度見かけたら試してみよう。

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 松本寛庸さんや福井誠さん、古久保憲満さんらの、気が遠くなるほどの緻密で細密で繊細な大作、あるいは高田幸恵さん、藤岡祐機さん、渡邊義紘さんといったこれまた微細で丹念な手作業による作品・・・。
 どこか何らかの障害を持つ、あるいはいわゆる正当な美術教育を受けていない、王道に則っていないアーチストたちのこれらの作品を「アール・ブリュット」として区別するのならば、そうでないアートは何がアートなんだろう?だが、そんな邪念も、作品の力を前にどうでも良くなってしまう。目を近づけて、少し後ろに下がって、そしてまた近寄って見たり、後ろに回り込んで見たり。錆び付いた全身と五感をギクシャクと動かしながらその宇宙への接近を試みる。

 あ、お久しぶりです、と思わず心の声をかけたのは、澤田真一さんの、ちっちゃなイボイボでいっぱいの不思議な生き物たち。澤田さんの作品は、2013年に、ヴェネツィア・ビエンナーレで紹介されたときに初めて拝見した。この年は、マッシミリアーノ・ジョーニ氏という若いイタリア人のキュレターが総合ディレクターを務めたのだが、例年以上に数多くの作家、作品が世界中から集められた展示の中で、澤田さんのコーナーは比較的ゆったりとスペースを設けて、じっくり見学できるようになっていた。あの時、イタリア中、世界中から見学に訪れたほとんどの人々は、私と同様に、「ブリュット」かどうかではなく、ただ、作品自体の持つ個性と力に印象を受けたのではないかと思う。・・・それにしても、いつ見ても、何度見てもやっぱり、澤田さんの作品たちはどれも、ちょっと不気味で、不思議で、愛らしくてかわいくて、ともかく一度見たら忘れられない。

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 ああ、そうだった、アートって、楽しい!全身に急激に血が巡って、ここまでのさまざまなストレスから解放され、自粛やマスクでぎゅっと凝り固まっていた全身がほぐれるような気がした。

 感性豊かな、個性あふれる作家さんたちの、発表の場がもっともっと増えたらいいなあ・・・。

「あるがままのアート - 人知れず表現し続ける者たち -
2020年7月23日〜9月6日 日時予約制
東京藝術大学美術館
https://www.nhk.or.jp/event/art2020/

#ヴェネツィア #イタリア #ヴェネツィアビエンナーレ #エッセイ #美術 #あるがままのアート #東京藝術大学美術館 #東京 #展覧会巡り  

Fumie M. 08.23.2020


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