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「選ばれし人 詐欺師フェリークス・クルルの告白」 トーマス・マン

佐藤晃一(選ばれし人) 高橋義孝(フェリークス)訳  トーマス・マン全集  新潮社

(訳者と出版社、たぶんこれで合っているとは思うけど、読んだ時の記載がないので自信がない…)
(あと、読んでいた当時の記録より、おまけ(既に他の本の記録で紹介済)が多い)


「選ばれし人」

今はトーマス・マンの全集から「選ばれし人」っての読んでいる。中世フランドルが舞台。なんか自分にぴったりの語り手を見つけてしまって嬉しくて仕方がない?という感じのマンをみることができる。
(2007 07/19)

マンの「選ばれし人」もクライマックス。マンの語るのが楽しいっという気持ちが、それぞれ登場人物達の会話に乗り移っている、という感じ。
(2007 07/20)

「詐欺師フェリークス・クルルの告白」


マンと鹿島氏
今はトーマス・マンの「選ばれし人」とセットの「詐欺師フェリークス・クルルの告白」読んでいる。この小説には主人公の田舎の菓子屋から、パリのサーカスまで、ありとあらゆる世俗の物の描写が病的に描かれている。こういうところは前に読んだ鹿島茂氏の「ベンヤミン熟読玩味」を想起させるのだが。同じ時代くらいなのかな。
確か「世界文学全集を立ち上げる」では、この作品勧めたのは、鹿島氏ではなく、三浦雅史氏だったのだけど…(笑)
(2007 07/25)

「詐欺師フェリークス・クルルの告白」の中で、金持ちの侯爵が隠れて恋人とパリにいたい為に、クルルに代理?の世界漫遊旅行に行かせるところがある。この「代理」というか「詐称」というかの必要には、クルルのこれまで培ってきたさまざまな技が役立ったわけだが……
いいなあ、そういう侯爵、自分の前に現れないものかなあ?
もし、皆さん代理旅行者希望なら是非御一報下さい(笑)
(補足:エステルハージ・ペーテルの「ハーン=ハーン…」などはまさしくそういう作品)
代理読書ってのも、前考えたことあったなあ…
(2007 07/27)

詐欺は芸術の小箱
昨日、「詐欺師フェリークス・クルルの告白」読み終わった。
サーカスの空中ブランコを中間の鏡とした、立体的構造。後半の読みどころはクックック教授という、昔の歌謡曲みたいな(笑)リスボンの博物館館長。

新潮社さあーん。トーマス・マン全集って手に入らないのかなあ。できれば文庫で…
(2007 07/28)

補足その1 書くことと必然性…(ジョルジュ・ペレック「煙滅」)


いろんな先行作品のかけらの中を読み進んでいく。ソンダク、カサーレス、マンにソフォクレスにポー…作家の選択は「い」段の文字が入ってないのは勿論のこと、他にも何かあるような…

 〈作家〉の務めとは、前もって天がすべてを定める、との考え方を覆すことであって、それがかなわぬのなら作家の創作など無用であろう
(p46)


って、格好いいこと書いといて、そのすぐ先ではそれを否定するかのような文が出て「選ばれし人」が発見できずに終わってしまう。
そんなこんなの雑多な文を書きつつ、部屋に残しつつ、主人公?アッパー・ボンはどこかへ失踪してしまう。どうやら何かの欠落を感じとった者が次々と消えて行く…というストーリーらしい。
(2011 07/21)

補足その2 光文社古典新訳文庫で登場

昨日、光文社古典新訳文庫で「詐欺師フェーリクス・クルルの告白」出たので購入(ただし上巻のみ)。
「新訳」というからには、当然新潮社版と訳者違う(光文社の方は岸美光氏)。
とりあえず、上巻の解説ならぬ「読書ガイド」は読んでおいた。この作品のパロディーの一番の源泉はゲーテの「詩と真実」(創作と現実??)なのではないか?と岸氏は述べていた。あと、クルルはあの後、日本に来ていた?? マンの夫人の兄弟が指揮者として日本で活躍していたという。そういう構想もあったらしい。
下巻にも「読書ガイド」はあるらしいので、また購入したらいずれここにも。
(後日購入…)
(2011 09/27)

補足その3 新倉俊一氏の「ヨーロッパ中世人の世界」

第1部最後の章「中世人と近親相姦」に「選ばれし人」出てた。この話のヴァージョンはフランスにもドイツにもあった(マンが依拠してるのは当然?ドイツヴァージョン)。近親相姦の兄妹の間にできた子がその母と結婚するというダブルな近親相姦。ゲルマン系ではいろんな諸事情により近親相姦はそんなに珍しいものではなかったという。

 倫理的には極めて危険の要素を内包する『教皇聖グレゴリウス伝』の発生と成功を可能ならしめた背景に、思考の、少なくとも倫理観の変革を読みとらないわけにはいかない。そう考えるとき、この聖者伝は猟奇的な説話であることをとうに止めて、つまずきやすい罪人に比類ない望みをあたえる書として、はかり知れないほどの励ましをあたえる書として受け容れられた可能性を、かなりの程度に信じうるのではあるまいか。
(p155)

(2020 08/17)

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