見出し画像

「ハーン=ハーン伯爵夫人のまなざし ドナウを下って」 エステルハージ・ペーテル

早稲田みか 訳  東欧の想像力  松籟社


ドナウ川を旅して


エステルハージのドナウ川紀行?小説。こちらは2200円。エステルハージ家と言えば、ハンガリーの名家。自分的にはハイドンのパトロンとしてかな。その現代の末裔は作家。キシュとカルヴィーノに一番共感を覚える、というのだから作風もおのずとわかる。自分好み。
(2009 01/04)

過去か現在か


エステルハージの「ハーン=ハーン伯爵夫人のまなざし」(ドナウ川紀行)。旅人のプロとしてドナウ川を下っていく現在(主に電報のやりとりとして書かれる)と、おじのロベルトに連れられてドナウ川に遊んだ過去が混然一体となって溶け込んでいる印象。自分の読みが足りないこともあるが、読者としてもあまり両者を切り離そうという野暮な?ことはせず一体となった世界に遊ぶのが流儀か、と…現在の方には、この本執筆時に起こっていた1989年からの東欧革命もちらちらと…
ちなみに、作品始めの方にあるハイネからマルクスに宛てた手紙というのはフィクションのよう。騙されそこなった。

もひとつちなみに、出版社の松籟社って京都にあるカルヴィーノ始めとするイタリアものが強い出版社だなあという印象あったけど、東欧ものも結構出している。このエステルハージの作品は「東欧の想像力」と題した新シリーズの第3弾。その前2人はキシュとフラバル…そしてパヴィチも刊行予定…とか…目の離せない出版社の一つ。
(このあと「東欧の想像力」シリーズには随分とお世話に…補足)
(2009 01/18)

カルヴィーノまるごと


今は「ハーン=ハーン伯爵夫人のまなざし」(ちなみにこの一風変わった名前の人物は実在するという)エステルハージ著を読んでいる。第19章はまるごとカルヴィーノの「見えない都市」の引用及び変容でなりたっている。
著者のエステルハージがカルヴィーノ好き、自分も大好き?なので、著者の故郷であるハンガリーはブダペストを「見えない都市」に見立てた章を楽しんでいる。
でも、このまるごとの引用は何かの問題提起でもあるのでは?あるのでは?ある…何を?うーむ、思いつかないなあ…ま、いいか、楽しければ、夢の中で追いかけた女を見逃した場所に広場を作って見逃さないようにした…とか。
エステルハージは(故意に?)カルヴィーノとは違った感触。カルヴィーノの透明な澄んだ世界に対し、濁った何かが足に絡まる世界…それはドナウ川の印象と重なるのか?
(2009 01/20)

「ハーン=ハーン伯爵夫人のまなざし」読了報告


「ハーン=ハーン伯爵夫人のまなざし」を昨夜読み終えた。すっ飛んでわからない表現等もあったが、まあ、なんとか…東欧革命の頃ってルーマニアドナウデルタ周辺にコレラって発生してましたっけ?ああ、この辺はマルケスの「コレラの時代の愛」からとってきたのかな?今気付いた(補足:本当か?)。

意外?とハンガリー文学って自分にとっては穴で、今までカリンティの短編集(それもチェコの作家との合冊)しか読んだことなかった。続いて読むなら、やっぱり先述のカリンティの息子の「エペペ」でしょうか。
(補足:この後、ハンガリー文学に結構はまる。はまったのはいいけれど、翻訳数(やはり)少ない…)
(2009 01/22)

関連書籍


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?