見出し画像

ニューヨーク・シティに見た、GKを効果的に利用したビルドアップ

2023 MLS
ニューヨーク・シティ

 今回は、自陣からのビルドアップの局面において、MLSのニューヨーク・シティを紹介します。
 ニューヨーク・シティは、4バックにGKを組み込んだビルドアップを行っており、とても面白いと思いました。
 そこで、ニューヨーク・シティのビルドアップを数試合において分析し、そこからビルドアップの目的とは何かを考察したいと思います。


ニューヨーク・シティの
自陣からの攻撃

① ベースとなる陣形や配置
 まず、ニューヨーク・シティは自陣からの攻撃時、下図のような配置となる。
 具体的に、DFラインではGKをCBの位置に配置し、加えて右SB・CB2枚で4バックを形成する。GKが左右どちらに立つかは試合によって異なる。中盤のエリアではCMFが2枚並ぶ。前線のエリアではサイド大外で高い位置を取った左SBを含めた5枚のアタッカーが均等に配置される。陣形で表すと「4-2-5(2-4-5)」となる。

ビルドアップ時の配置①
vs フィラデルフィア・ユニオン
ビルドアップ時の配置②
vs フィラデルフィア・ユニオン
ベースとなるビルドアップ時の配置
vs フィラデルフィア・ユニオン


ビルドアップ時の配置③
vs ニューヨーク・レッドブルズ
ベースとなるビルドアップ時の配置
vs ニューヨーク・レッドブルズ


② プレーの展開
 基本的なプレー展開としては、「ショートパスを多用したポゼッションによるビルドアップ」を行うことがほとんどである。ただ、場合によっては、ショートパスで敵のプレスを引き付けておき、押し上げた敵最終ラインの背後へのロングボールを狙うダイレクトなビルドアップも行う。


③ プレーのパターン 
 プレーのパターンとしては、サイド後方に位置する右SBとCBが大外に開き、GKを含めた4バックでボールを左右に何度も動かして敵のプレスを引き付けたところで、敵のプレッシャーラインを越える縦パスや前線へのロングボールを配球するというようなパターンが多く見られる。
 このとき、傾向として、敵のプレッシャーラインを越える縦パスを送るのは4バック中央に位置するCBの選手がほとんどであり、一方、前線へのロングボールを配球するのはGKであることが多かった。

ベースとなるプレーのパターン。
4バックでボールを左右に何度も動かして敵のプレスを引き付け、敵のプレッシャーラインを越える縦パスや前線へのロングボールを配球する。


④ 具体的なシーン
 
ここで、プレス回避が成功したシーンを2つ紹介する。
 シーン1は、4バックでボールを左右に動かし敵のプレスを引き付けたところで、中央からのショートパス(縦パス)によりプレス回避したシーンである。
 シーン2は、同様に4バック + CMF2枚でボールを左右に動かし、前に出てきた敵最終ラインの背後を狙い、左サイド大外の味方をターゲットとしたロングボールによりプレス回避したシーンである。
 どちらも、最終的に前線のアタッカーがフリーで前を向いて敵最終ラインに仕掛けられる状況を作ったシーンである。

 【シーン1】

 【シーン2】

 

 今回は、ニューヨーク・シティの自陣からの攻撃時の、GKを4バックに組み込んだ配置によるビルドアップについて紹介しました。
 GKを4バックに組み込むことで、前線のエリアに通常よりも1枚多くの選手を送り込むことができ、今回の場合では、敵の4バックに対して5枚が配置され数的優位な状況となっていました。ニューヨーク・シティがGKを4バックに組み込んだ狙いはここにあったと思います。
 プレス回避したシーンから見て分かるように、自陣からのビルドアップ時の目的は、「前線のアタッカーがフリーで前を向いて敵最終ラインに仕掛けられる状況を作る」ことだと私は思います。この観点からも、ニューヨーク・シティのようなビルドアップは効果的な方法と言えるでしょう。

 

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?