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ドルトムントに見た、コーナーキック守備戦術

コーナーキック守備戦術
~ボルシア・ドルトムントより~

 今回は、セットプレーの局面であるコーナーキック守備において、ボルシア・ドルトムントを分析します。
 まず、ドルトムントはコーナーキック守備時、ベースとして「マンツーマン」による守備を行います。これを分析することで、マンツーマンの守備に対する個人的な見解と、ドルトムントのような守備に対する有効な対抗策を考察していきます。


ボルシア・ドルトムントの
コーナーキック守備

① ベースとなる配置
 ドルトムントはコーナーキック守備時、下図のような配置となる。
 具体的に、ドルトムントはベースとして「マンツーマン」の守備を行い、かつ10人全員をゴール前の守備に戻す。よって、配置を「ボール周辺 - ゴール前 - 前方のエリア」の順で数字で表すと、敵のショートコーナーの受け手がいない場合は「0-10-0」、ショートコーナーの敵の人数によっては「1-9-0」となる。

コーナーキック守備時の配置「0-10-0」
※UEFA チャンピオンズリーグ 23-24 vs ミラン
コーナーキック守備時の配置「1-9-0」
※UEFA チャンピオンズリーグ 23-24 vs ミラン


② ボール周辺
 ここから、それぞれのエリアにおいて分析する。
 まず、ボール周辺のエリアでは、敵のショートコーナーの可能性がある場合、ボールの受け手に対していち早く寄せられる位置かつ、直接コーナー時のボールに対してブロックできる位置に立つ。
 一方、ショートコーナーの可能性がない場合は、このエリアに人は配置しない。

ボール周辺のエリアでの対応
※UEFA チャンピオンズリーグ 23-24 vs ミラン
ボール周辺のエリアでの対応
※ブンデスリーガ 23-24 第13節 vs レバークーゼン 

 また、ショートコーナーが開始された際は、ゴール前のエリアのニアサイドに立つ1枚がボール周辺のエリアに移動し、数敵同数(マンツーマン)で対応することもある。

数的同数(マンツーマン)で対応する。
※ブンデスリーガ 23-24 第13節 vs レバークーゼン 


③ ゴール前 
 次に、ゴール前のエリアでは、ベースとしてマンツーマンとなる。

ゴール前のエリアでのマンツーマンによる守備
※UEFA チャンピオンズリーグ 23-24 vs ミラン
ゴール前のエリアでのマンツーマンによる守備
※ブンデスリーガ 23-24 第13節 vs レバークーゼン 

 ただし、図の通り、ゴール前やペナルティエリア周辺に上がってくる敵はせいぜい7人程度であり、よってマークにつくのは7人で、ボール周辺のエリアに1人を配置したとしても2人が余る。
 そこで、特に空中戦の競り合いやヘディングの強いフンメルス(CB)やフュルクルク(FW)の2枚が、ゴールエリア内のニアサイドとファーサイドをゾーンで守る。(フュルクルクがニアサイド、フンメルスがファーサイドに立つことがほとんどである)
 この狙いは、ヘディングの強い選手がフリーでボールを弾き返すことができるようにするためだろう。

フンメルス、フュルクルクがゴールエリア内で
ゾーンで対応する。
※UEFA チャンピオンズリーグ 23-24 vs ミラン
フンメルス、フュルクルクがゴールエリア内で
ゾーンで対応する。
※ブンデスリーガ 23-24 第13節 vs レバークーゼン 


④ 前方のエリア
 
最後に、前方のエリアについては、ドルトムントは基本的に「0-10-0」や「1-9-0」の配置となり10人全員を守備に戻すため、ここのエリアには配置しない。
 しかし、試合の状況によっては、カウンターで決定的な仕事ができる選手(または、コーナー守備ではあまり戦力として期待できない選手)を前方のエリアに配置することもあるが、そのような状況はほとんどないと言ってもよい。

前方のエリアには人を配置しない。
※UEFA チャンピオンズリーグ 23-24 vs ミラン
前方のエリアには人を配置しない。
※ブンデスリーガ 23-24 第13節 vs レバークーゼン 


 今回は、ドルトムントのマンツーマンをベースとしたコーナーキックの守備について分析しました。
 私の考えでは、マンツーマンによる守備は個人の能力に依存するところが多く、コーナーキック守備であれば、競り合い、ヘディングの技術、体格差などに自信のある選手を要する場合は非常に有効だと思います。
 ではここで、ドルトムントのコーナーキック守備に対する有効な対抗策を考えます。
 以前の記事でも指摘したとおり、敵がマンツーマンであるということは、攻撃側が意図をもって「相手を動かす」ことができます。つまり、攻撃側が流動的に動くことによって相手を動かし、スペースとフリーマンを作り出すことができるのです。
 例えば、まず、ボール周辺の状況から考えてみましょう。このエリアにショートコーナーを行うと見せかけて3~4枚を配置します。相手はマンツーマンであるため、3~4枚はマークについてくるでしょう。となると、ゴール前のエリアでは、残りの6~7枚が配置されていることになります。これだけで、ゴール前のエリアではかなりのスペースが生まれます。この状態で、直接コーナーを行い、かつゴール前でダーゲットがフリーになるような動きを組織的に行えば、チャンスの可能性が高まります。またこのとき、ゴールエリア内で敵の長所となる選手(ドルトムントでいうとフンメルス、フュルクルク)を特定し、その選手をブロックする味方を配置することも有効です。
 仮に、ボール周辺のエリアに敵がマークに出てこなかった場合は、そのエリアで数敵優位となるため、ショートコーナーを行うことが有効になります。


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