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【詩】言葉にならないほどに透過した祈り

言葉を紡ぐ。言葉を手繰り寄せる。祈るように、祈るように、形のない祈り、黒と白の世界、文字だけの世界、で私は息をする、暗転。薄暗い部屋にランプ、静謐さの中でコンピュータのファンの駆動音だけが鳴り続けている。モニターのランプ、世界が点滅している。キーボードの打鍵音が重なる。私は言葉を操る。息を吸い込むと躰を感じる。私は考える/私はどういう人間で/どうあるべき/なにをして/なにになりたい/を。存在は呪いで、肉体は枷だ。そうして私はいつまでも一人だ。世界は残酷だ。限りなく近接することによって、しかしどうしようもなく離されていく、私達は永遠に自らの思考の外側には行くことができない、そうして他人と〈私〉の分断をみる。言葉を手繰り寄せる。指先を動かす。この世を支配するたった一つの法則があるとしたら、それはきっとリズムだろうと思う。踊るように旋律が流れ始める。おもむろにピアノに触れて、ツーファイブワンを弾く。和音、ポリフォニー、構造の多層性、が溢れ出す、突然、雪原に何もなく少女が立っている。透き通る程の白いかんばせは何も物語らない。長い茅色の髪をなびかせ、少女の赤い瞳が揺れる。呼気は白い。少女はしかし何も喋らない、それは私なのか、呪いなのか、ただ世界が透過しつづけている。

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