恋をしていた3 / キス、そして添い寝

大好きな時間、キスについて

わたしは、彼とのキスが好きでした。彼も、よくキスをしてくれる人でした。
彼との添い寝も好きでした。

多分彼はセックスをするのが好きだったけど、私はその瞬間よりも、そのあと彼が優しく抱きしめてくれるのがもっと好きだったんです。いっぱいのキスと優しい腕の記憶は、私の中にその後も残って、消えなくて、なんどでも一人の夜に思い出しました。

あなたを今抱きしめてくれる人がいるのなら、その時間を大切にしてください。
恥ずかしがらず、キスしてほしいって伝えてみてください。

その優しいふれあいを素直に求め合えるなら、あなたとあなたの相手は幸せの中にいられると思うのです。その記憶があれば、あなたはもし彼と共にいられない時が来ても、自分にも誰かにも優しくなれると思うのです。


さまざまなキスの記憶

私たちは一度会えば数百回ものキスをした。

私は長いキスをしたのはその彼がはじめてだったので、いつも何かを考えていたと思う。ただ、彼のくちびるは柔らかくて私は驚いた。そして私のくちびるを柔らかく溶かすのも彼だった。

時には、くちびるが触れ合ったままで眠ることもあった。

私の嫌いなキスは、飲み会の後にお互い酔いすぎてするキスだった。私はここに来てから非常にお酒に敏感になっていたので、少し気分が悪くなった後でお酒の匂いに満ちた息と舌は苦痛だった。

そういう夜のあとは、私は明け方5時とか6時とかに一人で起き出さなくてはいけなかった。彼を起こさないようにベッドを抜け出すのにも気を遣ったけれど、何よりひとりでお酒の残りを吐き出すと、まだ暗いままのリビングにたった一人で体育座りで座っていたくなるような惨めさと孤独に飲み込まれた。ストッキングを脱いだ素足は、まだ人の起き出さないリビングにすっかり冷やされた。


そして添い寝の記憶

彼は抱き合った後は私を近くに置いておきたがった。私はその時間がとても好きだった。私の幸せのかたちだった。

腕まくらをする彼のちょうど右肩の位置に私の左耳のちょうど下を合わせると、それはぴったりだった。そして私はそのまま彼が鍛えている胸筋や、深い茶色味を帯びた黒の翡翠のネックレスや、左の鎖骨のすぐ下にある彼の初めてのタトゥーを指でなぞるのが好きだった。

その形のままでいると、彼は腕を回して私を抱きしめてきたし、私も右腕で彼を思い切り抱きしめることができた。

驚くことに彼はその状態で眠りにつくことも多く、私は少しの息苦しさと強く抱きしめられている幸福感との間で葛藤することになった。きまって後ろ髪を引かれながらも腕の中から抜け出さなくてはならなかった。

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