恋をしていた4 / 恋の期限が決まっていた。
人を好きになるということ、それは想像以上に苦しくて、理不尽に辛いものなのだという現実が押し寄せてきました。
これを読んでいるあなたは、今恋をしていますか。忘れられない人がいますか。一度でも恋を経験したら、おしよせる不安に潰れそうな夜があったと思います。幸せすぎるなんていう理由で絶望的な気持ちになったことがある人もいると思います。
私にとって最も辛かったのは、こんなにお互い想い合っていても一緒にいられないという、ただそれだけの圧倒的な事実でした。
好きじゃなくなって別れるとか、人と一緒にいてうまくいかなくなった経験もない私でした。何もかも初めてだったのに、好きな人と好きなまま離れる日が決まっている。その実感は突然ある夜私を襲い、その日初めて一人で泣きました。
恋の期限
私は彼が好きだった。大好きだった。大好きだった。
そして彼も私を少なくとも気に入ってはいたと思う。 彼は浮気を毛嫌いする人で、それを私は彼のインスタグラムに出てくる友人らの紹介で知っていた。こいつは彼女に浮気されてひどく傷ついていたけど、今新しい人と幸せにやっているようで安心する、みたいな話を聞かせてくれた。
そうして浮気の話が上がると、彼はとても嫌悪感をあらわにした。過去に彼自身に何かあったのかもしれないと思ったくらい。彼が私と同時に誰かと関係を持っていることはないとほとんど断言できる。
そして私も他のものには全く興味がなかった。でも、私の期限は2ヶ月後だった。それは圧倒的な事実だった。私よりももしかしたら、彼がそれを気にしていたかもしれない。私はもっと気軽に考えていた。
失恋の期限
私は残りの2ヶ月を彼のために使いたいと考えるようになっていた。
私の中は文字どおりに彼でいっぱいで、aikoの歌に出てくる女の子になった気分だった。そしていつ自分が失恋するかも考えるようになっていた。
いい方に考えないといい結果も来ないなんて頭の隅では考えながらも、私の冷えた頭は、いつ傷つこうか、いつなら笑って友達だと言えるかを私に考えさせていた。
帰国一週間前くらいに、彼の家以外の、できれば学校も避けた場所で、軽く切り出し、でも真剣に話したいなんて思うようになっていた。もう十分に苦しかった。でも彼のことを考えることはやめられなかった。
恋愛をしながら生きている世の中の人たちが信じられなかった。恋愛なんて何か他のことをしている時にできるもんじゃないと思った。わたしにはできない、やるものじゃないと思った。
溺れる。
きっと初恋ではない。けれど本気で人を好きになってしまったのは、恐らくこれが初めてなんだと思った。これは本気の恋だった。
今までは、人を好きになることに憧れて、水族館の大きな水槽でゆらゆらと光に照らされたクジラか何かを口を開けて眺めていただけだったと思った。ガラスの厚みとか半透明の汚れとか、それぞれが安全な場所にいるその隔たりの大きさにも、全て気がつかないでいたみたいだった。
私はなんにも知らなかった。 それだけだった私がいつのまにか何も持たずに海に放り出されていた。何も知らない間に、私を見つめてくれる目を探し当ててしまった。そうして気付いたら溺れてしまっていた。