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書店が似たような顔をしているから【#読書感想文】

最近、書店に置いてある本が、似たようなラインナップに思える。
私の身近で大型書店が軒並み消えて、わりとこじんまりとした書店にばかり足を運んでいるせいだろうか。

小さな書店の限られたスペースに置かれている書籍は、
・人気作家の新刊本
・映像化された作品
・受賞作か、書評で取り上げられた作品
の、どれかだ(おおむね)。

自然、どこの書店も似たような顔をしているように見える。これからの季節、来年に向けて、カレンダーや手帳に場所を奪われて、さらに書籍の置き場が減っていく。

私は、切実に本に飢えている。
あぁ。久しぶりに大きな書店に行きたい。

新しい本の手触り、たくさんの本が並んでいる空間を味わいたいのだ。

前情報なしに、書店に並べられてある本を手にとって、「これ、面白そう!」とピピーンと心震える出会いを果たしたい。

でもわざわざ足を伸ばしてまで行く場所にしか、大型書店がなくなっている。
さて、どこに行くか…。

以前、note上でも話題にした有料制の書店のことを思い出した。
だがその入場料は、平日でも1,600円を越え、休日に至っては、1,800円を越える。

映画より高いの!?
そんなバカな!
そう思って、頑なに足を運ばなかった私の元に、夕方16時を過ぎると"ナイトクルージング"といって、770円で入店出来るよとの情報がっ。

行ってみるしかない!
そう決意した私は、有料制の書店に足を運んでみることにした。

16時。
恐る恐る書店のカウンターに、ナイトクルージングで入店したい旨、申し出る。

規則に目を通し、支払いをすませると入店用のバッチを渡してくれる。これで受付終了。
このバッチが、有料ブース利用の目印だという。
ワクワクしながら、これまで入らなかった有料スペースへ。

まずは心を落ち着けようと、飲食ブースで飲み物をもらうことに。
ここでは、コーヒーと煎茶は飲み放題なのだ。カウンターに申し出ると、係の人が準備してくれる。
無料なのに、どっしりしたマグカップにあったかい煎茶をいただけて、ほっこりした。

いざ、選書コーナーへ向かう。
この店舗には、3万冊の書籍が置いてあるそうな。3万冊って意外と少ないっていうのが、正直な感想。
駅にある大型書店だと60万冊はあるそうなので、そう感じるのは当たり前か。

ひとつひとつの棚を丁寧に見て回る。
アートの棚や料理の棚、デザインの本が無造作に平積みされてあるテーブルなど、テーマに合わせて並んでいる。

ある棚は、佐々木倫子・著、漫画の名作『動物のお医者さん』が置いてある棚の並びに、『ヘビ大図鑑』が置いてあった。
どういうカテゴリー!?と思ったが、棚には『ペット』と書いてあった。あぁ…。

どうも、ここはそんな場所らしい。
何の説明もなく、思いがけない書籍に出会える場所。

ふっかふかのソファーや、テーブルと椅子が用意してあって、パソコン作業されている方もいる。みな思い思いに過ごしているようだ。
スタイリッシュな雰囲気で、穏やかな音楽が流れていて、ゆったりと過ごすことができる。
静かだ、とても静かだ。
さしずめ、お茶が飲める図書館といった感じだろうか。
好きな方には、たまらないだろう。
もちろん店内の書籍は購入可能。書店ですもの。でもなんとなく、何も買わずに書店を後にした。

2時間延々、書店で時間を過ごしたはずなのに、さらに私が足を伸ばして出向いたのは、駅前の大型書店。
人が大勢いて賑やかで、雑多な本が溢れんばかりに置いてある。
眩しい!

何より書店員さんの手書きポップが、あちこちに見受けられる。
コレコレ、と思った。
このポップがあるのとないのじゃ、熱量が違う。

その時々で、書店員さんが売りたい本なのだから、買う側のこちらの気分と相性もある。
だが、これが売りたい!読んでくれ!というポップや帯には、自分がこれまで興味なかった本をも、手に取らせるチカラを感じる。

で、今回買った書籍がコレ。
新井見枝香・著『本屋の新井』。


現役書店員さんのコラムをまとめた、本や書店づくしの1冊。
書店ハシゴして、書店員さんの書店エッセイ購入するって、どんだけ書店好きなの?って自分にツッコミいれたくなるけれど。

読んでおもしろかった本について
したためずにはいられないのです、
書店員という生き物は。

なんて帯を見たら、買わずにはいられないじゃないか、本好きとしては。

1ページに、手書きっぽい一言。
次のページに、思わず「ふふふ」と頬がゆるむような、ゆるい文章が続く。
どこから読んでも、ダイジョーブ。

共演者に
お詫びのドーナツを配った


のページで紹介している本が、このミステリー!?とか、驚きに満ちた出会いが待っています。

静謐に並べられた書籍もいいけど、人の体温が感じられるコトバで本を紹介されるって、改めていいよね。と思った次第であった。

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