原作本で補完する【#電本フェス2022冬読書】
映像化作品にハマったら、原作本を読みたくなるタチである。
先日、映画『かもめ食堂』をみた。
フィンランドを舞台に、食堂をはじめた日本人女性のお話。
北欧の雰囲気よし、出てくるごはんが美味しそうでよし、登場人物がまた肩の力が抜けてて、ゆったりとした時間が流れている楽しい作品だ。
ずいぶん前に勧められて、最近ようやく観たところ、
「なんてステキな作品だろう!」
と、まんまと夢中になってしまった。(いや、遅すぎるよ)
もう、誰に勧められたのかすら忘れてしまった。
あまりに良かったので、群ようこ・著『かもめ食堂』も読んでみることに。
いやぁ、読んでみてよかった!
映画の中で不思議だった部分が解き明かされて、本を読み終えて妙にスッキリした思いを味わえる。
群ようこの淡々とあたたかな読みやすい文体で物語は進む。映画はA面で、原作本はB面ってカンジ。
つまり表裏一体というか。
映画の中の小林聡美演じる主人公・サチエは
、なかなか謎の人物である。
「なんて、たった今思いついたこじつけですけどね」
軽妙な会話の中に、本音を悟らせない何かを感じさせる。それは、よそよそしいのとは違う、一本スジの通った信念のようなものだ。
そもそも日本人女性がパートナーもなく、フィンランドで食堂を営んでいるというのが謎過ぎる。
そのサチエに対するギモンが、原作本では回収される。
どんな家庭に育ったか。
開店までどんな資金調達を行ったか。
キチンと描かれているのだ。
後に食堂を手伝ってくれることになる、ミドリ(片桐はいり)だってそう。
「指さしちゃったんです。どっか遠いところに行ってやろうって思いましてね」
それでヘルシンキに来たとは言うものの、映画を観ているこちらは「???」なのだ。
ミドリが世界地図を指さすまでに至った、
体の底から熱いものがこみあげてきた。
本ではその理由が、語られているのである。
みんな、事情は人それぞれ。
そこらへんの事情をまるまる、映画に投入してたら、鑑賞後、また違う感想をもっただろう。
登場人物の物思いを思いきってカットしたからこそ、映画でうまれた余白が心地いいのだと感じた。
映画だけを見るもよし。
原作を読んで、どんな映像化になるんだろうと想像を膨らませるもよし。
映画と原作、どちらも十二分に楽しむもよし。
楽しみ方は千差万別でよい。
みんな思うことは、きっとそれぞれなのだから。
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