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037:新たな人生〜最高に辛かったこと

突然逮捕され、警察と刑務所に拘留されて過ごした2ヶ月は、それまでの人生野中でとても辛く感じる毎日でした。そして、ようやく帰国できることが決まった時は、「やっとここでの日々から抜け出せる!」と、本当に心躍る気分でした。

刑務所の中でも、日中は部屋から出ることができて、特にやらなければならないこともない。限られた範囲の中ですが、ある程度の自由がありました。しかし、そうは言っても刑務所の中という環境では、そこにいた人でなければわからないであろう不自由さや圧迫感といったストレスがあります。

なので、「遂に日本に帰れる!」そう決まったときは、本当に嬉しかったです。「もしかしたら、何年もここから出られないかもしれない」という不安から解放されたのです。でも、その時は分かりませんでしたが、一番辛い体験をするのは、刑務所の中ではなく帰国してからだったのです。

日本で待っていたもの

バリのホテルは私だけの力でオープンできたわけではありません。私のビジョンに対して賛同してくれて、その達成のために、それぞれの想いと共に出資をしてくれた50名以上の人達がいたからこそ叶ったことです。

しかし、そんな人達の思いとお金で形になったホテルは、その権利を奪われてしまった結果、全て失われてしまいました。

私は、信頼してくれて出資してくれた全員に対する責任として、一人ひとりにお詫びをするのはもちろん、これからどうするかを考えなくてはなりません。バリでの事件はすべてホテルのパートナーが計画したことで、いわば彼が加害者で私が被害者という立場でした。

しかし日本では全く反対で、私の方が迷惑をかけてしまった立場です。出資をしてもらった以上、私はその資金をきちんと運用する責任がありました。意図したことではありませんでしたが、それらを失った責任は取らなくてはなりません。

出資してくれたのは50名を超える人達でした。私は日本に帰る前から、帰国したら全員に直接会って、とにかく心からお詫びをさせていただこうと決めていました。

人生で一番辛い日々

ほんの2ヶ月前まで、バリにはたくさんの人達の想いによって現実となった、私達全員のものと言えるホテルがありました。ホテル自体は今でもそこにあり、建物こそなくなってはいませんが、それはもう私達のものではありません。想いの結晶は消え、その代わりに大きな負債を抱えてしまったのです。

総額、約一億円。

どのようにしたらそれを返すことができるのか、想像もつかない程の大きな金額です。私の手持ち資金は全てヴィラに出資していたので、返済に充てることができる資金は一円もありませんでした。

日本で弁護士に相談をすると「個人で返済をするのは無理だから」と、何度も破産を勧められました。確かに、財産を失い、仕事も失ってしまった私にとっては、あまりにも大き過ぎる金額です。無理だと言われるのは当然でしょう。

でも、私は「破産だけはしたくない」と断りました。それは「私を応援してくれた人を裏切ること」になると思ったからです。

当初の計画は、ホテルの運営利益から返済するとうものでした。その計画に比べると大幅に遅れてしまいますが、仮にどれだけ時間がかかっても全額必ず返済しよう、それが私にできる精一杯のお詫びだと思いました。もちろん、どうやったら返済できるかわかりませんが、まずは一人一人の出資者に直接お会いしながら、心からお詫びの気持ちを伝えることにしました。

まず最初にやったのは、全ての出資者に電話をかけることでした。そして、バリで起きたことを伝え、ホテルを失ってしまったこととすぐにお金を返済できないことをのお詫びをし、今後について相談させてもらうため、直接会ってもらえるようにお願いしました。

自分自身のビジョンに対して大勢の人達が出資をしてくれました。その結果、夢は現実になりましたが、その全てを失ってしまいました。私は騙されたとはいえ、全員「私に対して」出資してくれたということは、彼らにとって、ミスを犯したのは私自身です。その事実から逃れることはできません。

事件のいきさつを説明しアポイントを取ることを繰り返していると、自分は本当に大変なことをやってしまったんだということに直面し、「これから一体、どうなってしまうのだろうか」という不安な気持ちがどんどん大きくなっていきました。

バリでの2ヶ月間はもちろん辛い経験でした。でも、帰国してからの毎日は、それよりももっともっと辛く感じられました。そして、全てはまだ始まったばかりだったのです。

読んでいただいてありがとうございます。何かを感じてもらえたら嬉しいです。これまでの経験について本にしようと考えています。よろしければポチッと・・・。