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029:バリの刑務所はこんなところ

警察に連行されてから、ブノアの警察とクロボカンの刑務所に勾留されて日本に帰国するまでの間は、時系列でずっと日記を書いていました。そのため、当時のことをこと細かく書こうと思えば、

12月1日:11:35からランチ。メニューは、魚のフライ、こんにゃく、さつまいもの甘煮、ほうれん草のおひたし、味噌汁。

というようなことも書けます。でも、毎日ほとんど同じ事ばかりしていたし、そんな細かいことまで知りたい人はいないと思うので、その代わりに刑務所に移ってきてからしばらくの出来事について簡単にまとめてみましょう。

クロボカン刑務所の略図

実際に刑務所内にいたときは、中がどんな感じになっているのかを把握するのも容易ではありませんでした。でも、今ではGoogle Mapsという便利なツールがあります。最近はバリ島のようなところでも航空写真の解像度が上がっているので、刑務所の中がどんなだったかを誰でも観ることができます。

ただ、ネット情報によるとオフィスと面会場だった3つの建物は、2012年に起きた刑務所内の暴動で燃えてしまったらしく、そこだけ建て替えられたため、当時とは違ってるそうです。それを踏まえて、修正マップを作ってみました。

私がいたのはB棟です。隣にあるA棟も作りは同じで、この二つの棟は比較的収容されていた人数が少なくゆったりしていて、他の棟よりも若干快適だったように思います。なお、「初日はたくさん人がいた狭い部屋で一晩を明かした」と書きましたが、それがK棟です。

しばらくしてから、下の方に並んでいる5つの棟のどこか(どれだったか覚えていませんが)にも行きましたが、こちらはK棟ほど酷くはありませんが、人が多く部屋も狭かったように記憶しています。

B棟での最初の日

B棟は8つほど部屋があり、その中の私の部屋は、本来であれば定員は4名程度の広い部屋でしたが、ありがたいことに私ひとりで使えることになりました。

最初に部屋に入って気付いたのは、中には本当に何もないこと。テーブルはもちろんベッドもありません。入り口は鍵がかかる鉄の扉で、看守が開け閉めする鍵の他に、中の住人が外出するときに使うための南京錠がありました。部屋の一番奥にはガラスも網戸もない鉄格子の入った窓。

入り口の隣にトイレが一緒になった水浴び(インドネシア語で「マンディ」と言います)をするためのスペースがあり、マンディをするのとトイレを流すのに使うための水を貯めておくタンクがある。

とても小さなスペースでしたが、これが部屋の中にあるということは、いつでも好きな時にマンディができるということ。部屋には当然冷房はないので、これはとてもありがたかったです。

電気が使えるありがたさを実感

部屋には照明とコンセントがありました。照明は夜の間しか使えませんが(日中はスイッチを入れても点灯しない)、コンセントの方は24時間いつでもOK。好きな時に電気が使えるのは本当に嬉しかったです。ブノアの警察は、部屋で電気を使うことができず、夜は入り口の鉄格子越しに差し込む明かりだけで過ごしていたのですが、ここではそんな不自由さはありません。

荷物を広げ、それぞれの置く場所を決めていきましたが、もともとたいした物は持ってきていないのであっという間に終わってしまいました。

ブノアにいる時は、他にいる人は全員警察官だったので、「何かを盗まれることはないだろう」ということで、日本とのやり取りをするためにPowerBookを持ち込んでいたのですが、ここは不特定多数の人(おまけに全員犯罪者)がいて、日中は誰もが自由に出入り出来てしまいます。そのため、貴重品は全て弁護士に預けることにして、持ってきたのは、着替えと本やティッシュ、シャンプーなど必要最低限のものだけでした。

水がない!・・・かも?

片付けが終わりなんとなく落ち着いたので、1日ぶりにマンディをしようと思ったら・・・なんと、さっき見たときよりも水が少ない!どうやらタンクが水漏れしているようです。その時は部屋の鍵が空いていたので、部屋の外からホースを引っ張ってきて水を足しましたが、夕方以降鍵がかけられてしまうとそうはいきません。果たして朝まで持つか心配でした。トイレを流すためにも必要なので、水がなくなってしまうとトイレも使えないのです。

ホースから水を足しているうちにマンディをしようとすると、今度は手桶がない!「ちょっと手桶を買いに」ということはできないので、仕方なく飲み終わったミネラルウォーターのペットボトルを切って、即席の手桶を作って、ようやく念願のマンディができました。

最初からすんなりとは行きませんでしたが、環境だけを考えれば「ブノアの警察よりも過ごしやすくなるかもしれない」と、少しだけポジティブな気持ちを持つことができました。

読んでいただいてありがとうございます。何かを感じてもらえたら嬉しいです。これまでの経験について本にしようと考えています。よろしければポチッと・・・。