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017:順風満帆で迎えた1周年

オープニングパーティの感動の夜から数日。日本から来てくれた人達がひとり、またひとりと帰国していきました。

全員が帰国すると、早速スタッフ全員を集めてミーティングを行いました。ホテルとして初めてのお客様を迎えたことで、いくつかの問題点や改善点に気付くことができたため、それらを明確にしてオープンまでの間に改善するという大切な仕事が待っているからです。

ホテルの正式オープンは2月1日。約一週間という短い時間しか残されていませんでした。

その時点での予約状況はまずまずといった感じで、これは事前に出来る限りの広報活動を行っていたおかげだったと思います。私達の予定通り予約は全て日本からのお客様でした。そして正式オープン後も継続的に予約が入り、幸いなことに稼働率は徐々に上向いていきました

順調には感じられましたが、最終的な目標を達成するには、常にサービスのレベルを上げつつ、広報活動にも一層力を入れていく必要があります。日本の旅行会社やバリで日本人をターゲットにしている旅行会社への売り込みはもちろん、雑誌などの広告掲載、インターネットでのPR活動など、とにかくできることは何でもやりました。

また、私がバリにいる間は出来るだけホテルでお客様と直接コミュニケーションをとり、お客様からの生の意見や要望を聞くようにして、小さなことであってもできるだけ取り入れるようにしました。

日々手応えを感じながら、一日も早くホテルを理想の形に持っていきたいということを考えて仕事をする毎日は、とても充実していて、とても幸せでした。

スタッフとのビジョンの共有

私が最も力を入れたのはスタッフの教育でした。日本人とインドネシア人では価値観も生活習慣も違うため、日本人が「良かった」と思うようなサービスを提供できるためには日本らしさを理解してもらう必要があり、そのためには時間をかけて教えていくしかないと考えました。

そしてもうひとつ、スタッフには自分たちの仕事に対してやり甲斐を感じると同時に、ひとりひとりが自分自身の目標を持って取り組んで欲しいと考えていました。自分が「何を目標にして生きているか?」は、全ての行動に影響するからです。

スタッフとしてお客様に対して何を提供し、何を感じてどうなってもらいたいのかを意識すること。また、ホテルが順調に運営できるようになった時、私達が地域の人々に対して何ができるのかをイメージし続けること。

自分達の仕事のクォリティを上げることは、お客様に最高のひと時を過ごして頂くことに繋がり、それがバリに住むたくさんの人たちのためになって、最後は回り回って自分にも返ってくる。それを理解した上で仕事に取り組んでもらいたかったのです。

スタッフを採用するときの面接は全て私が行いました。私は全員に「なんのためにここにホテルを作るのか?」というビジョンを話し、次に全員にある質問をしました。その質問はこれです。

「あなたの夢はなんですか?」

採用にあたっては、その人の経験やスキルも考慮しましたが、それと同じくらい、この質問に対する答えも重要視しました。

おかげさまでとても素晴らしい人達をオープニングスタッフに迎えることができ、全員で常に目的意識を持って取り組んだ結果、その後も右肩上がりにお客様も増えて稼働率も順調に推移。初年度は最終的にほぼ当初の計画通りの稼働率を達成することができたのでした。

次のステップに進む大きな決断

最初の一年は当初の目標以上の結果を達成することができた。安心してホッとすると同時に、手応えを感じた私たちはあるプロジェクトをスタートする決断をしました。

それは「第二のホテル」です。バリにホテルを作ろうと思った時から、「将来は何ヶ所かにホテルを建てよう」とは思っていましたが、その時はそんなに急ぐつもりはありませんでした。それにも関わらず、オープンから1年も経たずに次を作ろうと思ったのには理由があります。

バリ島は小さな島ですが、開発が進んでいる地域とそうでない地域では大きな差があります。ホテルやレストランはいくつかの地域に集中しているため、人気のある地域では土地の価格がどんどん上昇していました。

当時のバリ人気は年を追うごとに高まっていて、観光客も増加の傾向にありましたが、土地の価格はそれらを上回る速度で上昇していて、それは時間とともにもっともっと加速しそうな状況でした。

ホテルを作るのに向いている土地は限られています。時間が経てば経つほど土地の価格が上昇して入手が困難になってしまう。そこで、少なくとも土地だけでも早く押さえておこうと思ったのです。

必要な資金は前回と同じように出資者を募って集めることにしましたが、ひとつだけ前回との大きな違いがありました。それは、既に最初のホテルがオープンしていて、実際に稼働していたということです。

人は一度体験すると、より強くイメージできるようになる

最初のプロジェクトで出資者を募っていた時、ホテルはまだ存在して折らず、私の頭の中にしかありませんでした。その頭の中にあるイメージをできる限りの言葉とエネルギーを使って伝えた結果、必要な資金が集まり、ホテルが形になったのです。

形になく、実績も経験もないものに対して出資してもらうのは、非常にパワーがいることです。でも、今回は既にホテルが形になっていて一年間という短い期間でしたが良好な実績もありました。ホテルの写真や経営状況については実際の数字を見てもらうこともできる。それは新たな出資者を募る上で大きなプラス要素でした。

そして、もうひとつ大きく違った点は、私自身が「ホテルをオープンする」という体験をしていたこと。これこそが最大の違いだったと言えます

存在していないものをイメージして伝えることと、実際に存在し体験したことを伝えること。この二つには大きな違いがあります。私自身の体験を元に話すことができたことで、前回よりも圧倒的に短い期間で必要な資金が集まり、無事に次のヴィラのための土地を確保することができたのです。

夢だったホテルのオープンから約一年半。この時は全てが順調に進んでいました。それは予想していたよりも順調で、「きっと宇宙がサポートしてくれているに違いない」と感じるほどでした。そんなこともあり、まさか近い将来、奈落の底に転落するような「人生最大の大事件」が起きようとは夢にも思っていませんでした。

読んでいただいてありがとうございます。何かを感じてもらえたら嬉しいです。これまでの経験について本にしようと考えています。よろしければポチッと・・・。