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009:旅行会社の立ち上げ

二人でレストランで食事をしながら話をしていたとき、彼は自分の夢を語り出しました。その夢とはバリに学校を作る事。

経済的な理由で勉強できない子ども達がたくさんいるので、その子ども達のために将来学校を作りたい

彼がそう話すのを聞いた私は、嬉しいようなちょっと驚いたような何とも言えない不思議な感じになりました。なぜなら、それはまさに私が考えていたビジョンそのものだったからです。

ビジョンが明確になってからバリを訪れたのはそれがで、そこでまさか自分と同じ思いを持った人に出会えるとは考えてもいませんでした。私はワクワクしながら彼に自分の夢を伝えました。

「自分もいつの日か、小さくてもいいからホテルをオープンしたい。そしてバリの人達に仕事を提供し、将来はそこからの収益で学校を作りたい

私の話を聞いた彼は一瞬驚き、すぐにとても嬉しそうな顔になりました。ホテルに宿泊した日本人と一緒に食事をしている時に、まさか自分と同じ夢を持っているとは思いもよらなかったのでしょう。

彼も相当嬉しかったようで、それからは二人の共通の夢を話題に大いに盛り上がり、お互いのビジョンについて時間が経つのも忘れて語り合いました。

これは偶然なのか?それとも必然なのか?

もしかしたら、バリへの旅行日程が半年遅れたのも、泊まりたかったヴィラが満室だったのも、全てはこの出会いのためだったのかもしれない。そう思いました。

予定通り夏に旅行に来ていたら、予定していたホテルにそのまま泊まっていたら、一緒に食事をしなかったら・・・。何か一つが欠けていてもこの出逢いはなかった。そう考えるとこれは、偶然のように見える運命の出会いかもしれない。自分の部屋に戻った私はそう思うと興奮してしまい、なかなか眠ることができませんでした。

数日後に再び彼と一緒に食事をし、さらに詳しくお互いの将来の夢を語り合いました。それは前回以上に楽しい時間でした。私は自分の夢をシェアできる相手に巡り会えたことがなによりも嬉しくて、その出逢いに心から感謝しました。

食事も終わり、そろそろホテルに帰ろうかという時、彼は予想外のひと言を口にしました。

一緒にビジネスをしよう!

ビジネスと言っても、この時に彼が提案してきたのはホテルではなく、旅行会社の立ち上げでした。当時、バリ島を訪れる観光客の国別の比率は日本人が最も多く、日本人をメインのターゲットにしたホテルや旅行会社がいくつもありました。日本からの観光客は年々増加の傾向で、確かにそれは大きなチャンス。さらに、インターネットの普及に伴いリアルな店舗を持たなくてもビジネスが始められるため、初期投資が少なく比較的手軽にスタートできるのも魅力的でした。

バリは日本よりも物価が安いため、会社の立ち上げは自己資金でなんとかなる範囲。それであれば万一失敗してもなんとかなるし、もしも上手くいけば、ホテルほどではなくてもバリの人達になにか貢献できるかも知れない。小さな一歩かもしれないが、何もしないよりも動き出した方が良いのではないか・・・。

考えた末に出した結論は「GO!」でした。帰国するまでの数日間、出来る限り時間を作って打合せを行い、日本に戻ってからは毎日何通も、時には何十通ものメールをやりとりをしながら準備を進めました。

社員二人の小さな旅行会社がスタート!

それから数ヶ月後、遂にインターネット専門の旅行会社がオープンしました。

従業員は二人だけ。小さな旅行会社のスタートです。日本語のウェブサイトの制作とメールでお客様からの問合せは私が対応し、彼が現地でホテルとの契約やツアーの手配などを行うことで作業を分担しました。日本とバリ。お互いそれぞれの国で、共通の大きな夢に向けて第一歩を踏み出しました。

私達が会社を作った目的は「バリへの貢献」で、利益を上げることが最大優先ではありません。とはいえ、当然ですがビジネスなので結果は出したい。後発かつ弱小会社である私達が成功するために「お客様の満足を第一に考える」をモットーにしました。

「自分が旅行者だったらどうして欲しいだろうか?」
「どんなサービスがあったら嬉しいだろうか?」

利用したお客様が「次も使おう」「誰かに紹介しよう」と思ってもらえるよう、常にお客様の視点で考えて行動しました。私が日本にいる時はネットや書籍で、バリにいる時はできる限り自分の足で現地の情報を仕入れ、新しいサービスを提供できないか考える。お客様からの質問や要望にはできるだけ応えられるように、という思いで取り組んだ結果、日を追うごとにお客様が増えて順調な滑り出しとなりました。

その結果、日本とバリとの毎日のメールもどんどん増えました。そしてバリに行った時はほとんど彼と一緒に過ごしていたため、相手に対する理解度も急激に高まり、お互いの距離も一気に縮まりました。彼に対する信頼も増した結果、「いつかホテルをオープンするときには、彼に協力してもらおう」という思いが次第に大きくなり、それは確信へと変わっていったのでした。

読んでいただいてありがとうございます。何かを感じてもらえたら嬉しいです。これまでの経験について本にしようと考えています。よろしければポチッと・・・。