012:土地探し - 予想外の結果も受け入れる
資金の目処が立ったことで、プロジェクトは大きく前進し、いよいよ動き出しました。
最初にやるべき事は土地を探すこと。ホテルにとって最も重要なもののひとつがロケーションで、それが成功できるかどうかを決めるといっても良いでしょう。そして、土地の広さや形が決まらないことには、設計をスタートすることもできません。
全ては、予算内でいかに良いロケーションの土地を探すことができるかにかかっています。当たり前のことですが、良い土地は高く、私達の予算は限られている。このような状況の中でどこまで希望に合った土地が見つけられるだろうか?そんな思いの中で土地探しがスタートしました。
事前に決めていたエリアの中にある候補地をいくつもピックアップし、広さ・形・ロケーション・価格などから予算的に合うところを絞り込んでいくのですが「ここはいい!」と思うところは価格が高いところばかりで、なかなか「これだ」と思えるところが見つかりませんでした。
良い土地が見つからないまま、時間だけが過ぎていきます。
そして探し始めてから数ヶ月。ようやく良さそうな候補地が見つかりました。そこはオーナーが個人的な事情ですぐにでも売りたいという土地で、ロケーションも良く、広さも充分で、使いやすそうな形をしています。非常に魅力的なのですが、唯一の問題は私たちの予算を若干オーバーしていることでした。
「できるだけ早く売りたいようだから、すぐに支払うことを条件に交渉してみよう」
きっと相手はすぐにお金が欲しいのだろうと考え、支払条件と交換で価格の交渉をすることにしたのです。その結果、こちらの思惑通り「すぐに送金するなら」という条件で価格交渉に応じてくれました。
「これで土地が決まった!」
仮契約をし、手付金の支払期限を決めたものの、指定された支払期限まであまり時間がありませんでした。日本ではすぐに送金の手配を進めたのですが、実はこれより少し前にバリ島で爆破テロがあり、当時はその影響もあって送金には手間がかかったのです。高額の送金をするためには銀行にいろいろな書類を用意して提出しなければならず、思ったよりも時間がかかってしまいました。
必要な書類が揃い、「よし、送金だ!」と思った矢先、土地のオーナーから信じられない連絡がありました。それは「土地は別の人に売ることにしたから、あなたたちには売れない」というものでした。やっと見つけた理想的な土地で、さらにこちらは既に仮とはいえ契約もしていたので、そんな話を「はいそうですか」と受け入れる訳にはいきません。
私たちは契約を楯に何度も交渉しましたが、先方も「既に決めたことだから」と一歩も譲らず、諦めざるを得ませんでした。それまで全て順調に進んでいたように思われたプロジェクトがはじめて大きく頓挫したできごとでした。そしてこの時、バリと日本との常識や習慣の違いをあたためて実感しました。
予想外の出来事も「良い結果に繋がっている」とプラスに考える
仮契約までした土地が買えなくなった時はショックを受けましたが、私はすぐに気持ちを切り替えて次のように考えました。
これはきっと、ここよりも良い土地が見つかるというメッセージに違いない
既に起こってしまった出来事はどうにもなりません。過去は変えられないからです。仮にマイナスな出来事に遭遇したとしても、「これはきっと、その先に良い結果が待っているというメッセージに違いない」と、常にプラスに受け止めることです。
「大丈夫。きっと、これよりも良い場所が見つかるはず」という思いとともに、再び土地探しをスタートしました。その結果、思ったよりも早く前回より良い条件の土地が見つかります。街へのアクセスも良く、周りも静かな環境で、滞在中はのんびり過ごし、遊びに行くにも便利な場所です。なによりも前回よりも価格が安く、私達の予算内に収まっていました。
「ここにしよう!」
三度目ならぬ二度目の正直。そして、今回は契約から支払まですべて順調に進みました。
なにからなにまで思い通り・・・ということはありません。どんなことでも、壁に当たることは必ずある。大切なことは、「予想外の結果になってしまった時、できるだけ早く気持ちを切り替えてポジティブに考えることだ」ということをあらめて感じたできごとでした。
こうしてまずは最初の第一歩、無事にヴィラの建設予定地が決定したのでした。
読んでいただいてありがとうございます。何かを感じてもらえたら嬉しいです。これまでの経験について本にしようと考えています。よろしければポチッと・・・。